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早くもスポーツ界に大混乱をもたらしたトランプ新政権

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
トランプ新大統領が署名した入国規制に関する大統領令は米国内外のスポーツ界に波及(写真:ロイター/アフロ)

今回の大統領令で直接的な影響を受けたのが、入国規制対象国出身の選手を抱えるNBAだった。

バックスのソン・メーカー選手とレイカーズのルオル・デン選手はともにスーダン出身。とりあえずメーカー選手はオーストラリア籍、デン選手も英国籍を有しているようで、メーカー選手は28日のラプターズ戦のためチームとともにカナダ遠征に参加していたが、問題なく米国に再入国できたという。だがNBAは今も懸念を抱えている状態で、現在は国務省に対し大統領令が2選手に及ぼす影響について確認を行っていると声明を発表している。

もちろん影響はNBAだけでに留まらない。米複数メディアの報道を総合すると、すでに米国内には将来的にNBAのドラフト指名を受ける可能性もあるようなスーダン人の若手有望選手たちが米国各地の高校、大学にビザを利用して留学しているようだ。彼らに対しても国外退去の可能性が否定できない状況になっている。

入国規制対象国ばかりか米国人アスリートにも影響が出ている。大統領令への対抗措置をとったイランが米国人の入国規制を行ったため、サッカーのイラン・リーグに在籍していた米国人選手たちがチームから離れドバイで立ち往生している状態だという。

またレスリングの2017年ワールドカップが2月16、17日の日程でイランで開催されることになっているが、参加予定の米国人選手が大会に参加できるか不透明になっている。

“スポーツに政治を持ち込んではいけない”

これはスポーツ界に身を置くアスリートの共通認識だ。グローバリゼーションが進む現在のスポーツ界に逆行する今回の大統領令に、アスリートからも批難の声が挙がり始めるのも致し方がないことだ。

USAトゥデイ紙によれば、米国在住でソマリア出身(英国籍取得)の金メダリストの中距離ランナー、モー・ファラー選手は「無知と先入観を起因にした政策」と真っ向から反論を表明。またサッカーの米国代表のマイケル・ブラッドリー選手は大統領に失望するツイートをし、WNBAのブリアナ・スチュワート選手は大統領の反対集会に参加したことをツイートしているという。

もちろん入国規制はスポーツ界ばかりか米国各地から反対意見が巻き起こっている。トランプ大統領の今後の対応次第で、スポーツ界にもトランプ大統領に敵対するアスリートが増えていくことになるだろう。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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