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純粋なハリウッド映画かと思いきや原作は日本!?【日本から生まれたスケールの大きなアクション映画】

渡辺晴陽作家・脚本家/エンタメアドバイザー
記事の画像はイメージです

猛暑の日々が続いていますが、暑さを乗り切るには涼しさや冷たさだけでなく、「熱さ」もいいかもしれません。
というわけで、今回は派手で熱いアクション映画を紹介します。

ちなみに、今回紹介するのは、一見すると洋画らしいハードで壮大な世界観なので、実は原作が日本の作品だと聞くと驚きそうな映画たちです。

オール・ユー・ニード・イズ・キル

(英語タイトル:Edge Of Tomorrow)

2014年に公開されたダグ・リーマン監督の映画で、主演はトム・クルーズです。そして、原作は桜坂洋さんのライトノベル作品『All You Need Is Kill』で、小畑健さんによる漫画版も刊行されています。

本作は、地球を侵略するために送り込まれた「ギタイ」という敵との戦いを描いたSFアクション映画です。主人公のケイジ(演:トム・クルーズ)は軍人として戦うことなどできない軟弱なタイプでしたが、ある災難からギタイと戦う最前線に送り込まれてしまいます。さらに、ケイジは「死ぬと時間が巻き戻る」という現象に見舞われます。軟弱だったケイジは、死ぬたびに時間が巻き戻る「タイムループ」を何度も経験しながら、徐々に勇敢さや闘う技術を身につけていきます。

無限ループって怖い、けど…

原作と映画ではタイトルだけでなく、展開も変更されています。ですが、敵の設定や登場人物の役どころなどは比較的忠実に再現されており、原作を好きな方にも楽しめる作品だと思います。

ただし一つだけ、原作と印象が大きく違っていると感じた点もあります。
原作でゾッとするのは、「死ぬたびに時間が戻る」という無限ループによって主人公が追い詰められる場面でした。ところが映画版では、主人公を演じるトム・クルーズの雰囲気が何となく頼もしく見えてしまうせいもあり、悲壮さや絶望感はあまり出ていませんでした。
エンタメ映画として、深刻さや暗さを押さえつつ、戦闘の迫力や熱い展開を重視した部分もあるでしょう。
そのため、原作よりも楽な気分で見られ、後味も良い映画になっていました。

原作(および漫画版)と映画、どちらも別の良さがあるので、見比べてみるのも面白いでしょう。

戦場のループから抜け出せるのか?
戦場のループから抜け出せるのか?

カイト/KITE

2014年の映画です。主な出演者は、インディア・アイズリー、サミュエル・L・ジャクソン、カラン・マッコーリフです。原作は成人向けアニメの『A KITE』です。なお、映画はR15+指定となっています。

荒廃した都市を舞台に、両親を殺された少女サワ(演:インディア・アイズリー)が復讐のため暗殺者となるストーリーです。人身売買をする組織、「アンプ」という薬を打ちながら組織の人間を始末していくサワ。洋画に多そうな世界観ですが、日本のアダルトアニメが原作というのには、驚く人も多いことでしょう。ストーリーや設定などは原作と違っていますが、世界観や空気感は原作を強く意識したものになっています。

退廃的な雰囲気とアクションを楽しむ

本作の見どころは、原作から引き継がれた荒廃した近未来の雰囲気と、小柄な少女が繰り出す派手なアクション。とにかく映像的なカッコ良さや派手さが楽しい作品です。

本作を見るときには、細かいことは考えず、ダークな雰囲気の世界観に没入して楽しみましょう。
戦闘シーンは熱くなりますが、漂っている空気は白々と冷たく、そのギャップも今の時期には心地いいことでしょう。

使用している薬の効果は…
使用している薬の効果は…

宇宙人との戦いをシリアスに描いたSF作品や、犯罪組織や暗殺者の出てくる壮大なアクション映画は米国では多く作られていますが、そのほとんどが映画オリジナル作品か、米国内の作品を原作とした映画でしょう。
夏休みなど、時間があるときには、そんな米国産の映画たちと、日本原産の洋画とを見比べてみても楽しそうですね。

作家・脚本家/エンタメアドバイザー

国立理系大学院卒、元塾経営者、作家・脚本家・ライターとして活動中。エンタメ系ライターとしては、気に入ったエンタメ作品について気ままに発信している。理系の知識を生かしたストーリー分析や、考察コラムなども書いている。映画・アニメは新旧を問わず年間100本以上視聴し、漫画・小説も数多く読んでいる。好みはややニッチなものが多い。作家・脚本家としては、雑誌や書籍のミニストーリー、テレビのショートアニメや舞台脚本などを担当。2021年耳で読む本をつくろう「第1回 児童文学アワード」にて、審査員長特別賞受賞。

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