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Def Tech 初のオンラインライヴ開催 変わらずに変わり続ける強さが“希望”の歌になる

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/2vox

「THE FIRST TAKE」で披露した「My Way」が大きな反響

今年結成20周年、デビュー15周年を迎えたDef Techが11月28日、初のオンラインライヴ『Def Tech Streaming Live “Surf Me To The Ocean” 〜20th Anniversary Special〜』を行なった。その前に2人は、一発撮りで音楽と向き合うYouTubeの人気チャンネル「THE FIRST TAKE」で、大ヒットナンバー「My Way」(2005年)の2020年バージョンを披露し、話題を集めた。この映像は11月20日に公開され、現在(12月5日現在)までに再生数は560万回を超え、そのパフォーマンスに国内外多くの人達から「感動した」というコメントが寄せられている。

マイクを前に緊張を隠せないMicroとShen。そして「僕達はこの曲から全てが始まりました。何回歌っても変わらないけど今も僕達にとってフレッシュ」とMicroがコメント。絶頂期の2007年に解散しながらも、2010年には再結成し、活動を続けている二人の宝物であるこの曲を歌い始めた。抜群の相性の、清涼感のある声が重なると深い歌詞が素直に、説得力を持って伝わってくる。クールで優しくも強い独特のグルーヴが生まれる。当時、この曲の歌詞にどれだけの多くの人が励まされただろう。そして今また多くの人に力を与える曲になっている。

10thアルバム『Powers of Ten』(11月18日発売)
10thアルバム『Powers of Ten』(11月18日発売)
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11月28日、『Def Tech Streaming Live “Surf Me To The Ocean” 〜20th Anniversary Special〜』の舞台は、二人のアイデンティティでもある海と、隣接するビーチハウスだ。オープニングナンバーは、11月18日に発売された、チルアウトな空気が気持ちいい10枚目のアルバム『Powers of Ten』の1曲目を飾る「Surf Me To The Ocean」。鳥の鳴き声が聞こえてくるビーチハウス“ヴィレッジ”の中を、溢れる陽の光に包まれながら闊歩する二人が、<都会に疲れたら海で自然と触れることで、ポジティブなエネルギーをチャージしようと>とエレクトロなビートに乗せたメッセージ。思うように生活ができない今、この歌が心に響くという人が多いはずだ。続く「Face 2 Face」はネット依存社会への危機感を募らせる歌で、途中Microがスマホが投げ捨てるようなシーンもあり、ネットが全てじゃないと気づいて欲しいというメッセージが込められているようだった。

大きな虹に祝福されたビーチサイドライヴ

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3曲目からは仲間=バンドが待っている砂浜に移動。波打ち際をステージにして、ウクレレとギターが心地いい「High on Life」を披露。長めのアウトロが気持ちよく、全員で心から音楽を楽しんでいる。代表曲のひとつ「Catch The Wave」では、アコギが爪弾く切ないメロディのイントロが聴こえてくると、二人は胸に手を当て穏やかなリズムに身を委ねる。波の音も絡み、ドローンカメラが捉えた広い空と美しい海が<辛く苦しい時があるから笑顔になれるんだ>という歌詞が重なり、胸が熱くなる。続く「Golden Age」でも、悩みがあっても、明るい未来が絶対に待っていると、常に聴き手を温かな空気で包みながら鼓舞し続けるDef Techの音楽と言葉、そして海、自然が、世界中の人が不安に苛まれているこの状況の中で必要だ、ということを感じさせてくれる。

カメラは突然走り出す二人の背中を捉える。海へと続く小道を抜けると、雄大な虹が表れる。二人のアニバーサリーを祝福するように、そして多くの人に歌で勇気を与え続けてきたその軌跡への天からの感謝のように、大きな虹が架かっていた。

「みんなをもっと励ましたい、喜ばせたい」

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大きな窓から光が射し込むビーチハウスにステージを移し、「Rays of Light」を披露。まさに“木漏れ日”のように温もりのある曲を、柔らかな二人の声がまるで抱きしめるように歌う。そして「My Way」だ。15年前の曲だがさらに輝きを増している。それは二人の歌が深く“深化”しているからに他ならない。「思うように、ままならない年になってしまった。コロナ禍で、この中でできる最大限のことを考えて、みんなをもっと励ましたい、喜ばせたいという思いからこの配信ライヴをやることを決めました」と、Microが今回のライヴを企画した理由を説明した。「Irie Got~ありがとうの詩~」では<痛みを伴わない音楽は僕は好きじゃない>と二人が歌に込めた“真意”を、改めて気持ちを込めて歌っているように感じた。

ビーチハウスにも夜の帳が降りてきて、ライヴの雰囲気がガラッと変わる。この日のライヴは外はもちろんビーチハウス内も、光の気持ちよさが伝わってきた。そして夜を迎え、一日自然の中で音楽に包まれ、デトックスタイムになっていることを感じさせてくれる。「Journey」「The Best Time」、そして最新アルバム『Powers of Ten』に収録されている、この日演奏された楽曲の中でも、特に人懐っこいメロディが印象的な「Like I Do」を続けて披露した。

雨が降ってきた。そして波の音が聴こえてきて、キャンドルに囲まれた二人はイスに座って歌い始める。テーブルの上にもまるで暖炉のような炎が揺らめき、「このまま」の<ありのままでいんじゃない>という歌詞が温もりを帯びて伝わってくる。ギターソロが心地よく響き渡る「Consolidation Song」や、ラストの「おんがく♪MUSIC」と優しい肌触りの歌が続くが、“芯を食った”言葉が次々と心の中に真っすぐ入ってくる。<人の心を結ぶのが音楽 傷ついた心を癒すのも音楽/音楽があれば いちばん苦しいときこそ 楽しさに溢れた世界へ輝くから>と、この状況の中で歌う意味、音楽をやる意義を、聴き手へ、そして自分自身へ、さらに全アーティストに向けメッセージしているようだった。

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最後は一日を共にしたミュージシャンを紹介し、通常のライヴと同じように全員で肩を組み挨拶し、ステージから去っていった。太陽と海と波、風、虹と雨、そして光と闇と火、まるで人生とリンクするような風景、シチュエーションの中で、Def Techの歌がまさに彩りを与えてくれている、そう感じた配信ライヴだった。

Def Techはアルバム『Powers of Ten』に続き、WEB通販限定で、デビューから現在までを網羅した「Special Box Set」を発売する。さらに12月28日ビルボードライブ横浜、30日ビルボードライブ東京で有観客ライヴを予定している。

Def Techオフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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