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夫の在宅勤務で有職女性の家事・育児の負担は軽くなったのだろうか(2020年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 急速に進む在宅勤務。彼らはこれまで以上に家事や育児にも時間を費やすのか。(写真:アフロ)

新型コロナウイルスの流行に伴い、職場での感染拡散を防ぐ目的で、在宅勤務が急速に推し進められるようになった。多くの有職男性が自宅で勤務する昨今、彼らは家事や育児にこれまで以上の時間を割くようになったのだろうか。今回はソニー生命保険が2020年10月に発表した「女性の活躍に関する調査2020」(※)より、兼業主婦の立場からその実情を確認する。

次に示すのは、新型コロナウイルスの流行が本格化して少なからぬ企業が新たに在宅勤務を就業者に求めるようになった2020年4月以降において、配偶者が在宅勤務を行った既婚有職女性(つまり兼業主婦)に対し、自分の家事・育児負担が軽くなったか否かを尋ねた結果。これは配偶者の在宅勤務で自宅にいる時間が長くなったことで、仕事をしている時間以外にこれまで以上の家事や育児を手掛け、その分有職女性側の負担が軽くなったか否かを意味する。

↑ 今年の4月以降、家事・育児負担は軽くなったか(既婚有職女性、今年の4月以降に配偶者が在宅勤務を行った人限定)(2020年)
↑ 今年の4月以降、家事・育児負担は軽くなったか(既婚有職女性、今年の4月以降に配偶者が在宅勤務を行った人限定)(2020年)

在宅勤務前と後で仕事に携わる時間が同じなら、少なくとも通勤時間分はそのまま在宅時間として増えるのだから、その時間の何割かを新たな家事・育児に割り当ててもいいのではとの思いが有職女性側にはあるはず(子供がいなくても育児はともかく家事は必要)。しかしながら現実には、夫側の負担増によって有職女性側の負担が減ったと認識できているのはわずか15.1%しかいなかった。84.9%は夫の在宅勤務で自宅にいる時間が増えても、家事・育児を新たに手掛けることはしていないと見ている。

兼業主婦世帯で夫側の家事・育児の時間が短いのは、残業や通勤時間が長いため、自宅にいられる時間が短いからだとの説がある。単純な時間の長短の観点ではまったくの正論で「残業が無ければ、通勤時間が短ければ、もっと家事や育児を手伝えるのに」と主張する夫もいただろう。しかし現実としては、有職男性(夫)において在宅勤務により自宅にいる時間が延びても、家事や育児をより多く手掛ける人はごく少数でしかなかったということになる。

それでは対象を夫に限定せずに、純粋な在宅勤務について、有職女性はどのような考えを抱いているのだろうか。職場への出勤との働きやすさの違いと女性の活躍が進むか否かについて、年齢階層別に尋ねた結果が次のグラフ。

↑ 在宅勤務と有職女性の関係(有職女性限定、年齢階層別)(2020年)
↑ 在宅勤務と有職女性の関係(有職女性限定、年齢階層別)(2020年)

実際には職種や就業環境によって大きな違いが生じるため、あくまでも平均的な傾向としてとらえる必要があるのだが、在宅勤務は出勤より働きやすいとする人は44.9%、在宅勤務が進むと女性の活躍は進むと思うとの人は55.4%に達している。具体的な理由は今調査からだけでは分からないが、出社にとらわれない働き方が女性の活躍推進を後押しすると感じている有職女性はかなりいるようだ。また、年齢階層別で傾向だった動きは見出しにくい。

新型コロナウイルスの流行で生じた急速なまでの在宅勤務の動きだが、流行が落ち着く、感染リスクが以前通りに日常生活が過ごせるようなレベルにまで低下した後においても、継続する可能性は十分にある。その時には女性の活躍は今まで以上に進むことになる、かもしれない。

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※女性の活躍に関する調査2020

2020年9月28日から30日にかけて20歳から69歳の女性に対し、インターネット経由で行われたもので、有効回答数は1000人。20代から10歳区切りで均等割り当て。調査協力会社はネットエイジア。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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