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今夜『キングオブコント』決勝戦! 勝つのは諦めなかった不屈の芸人か超新星か

てれびのスキマライター。テレビっ子
『キングオブコント』を放送している赤坂・TBS(写真:アフロ)

いよいよ今夜『キングオブコント』(TBS)の決勝戦が『お笑いの日』のフィナーレとして開催される。

橋本:激渋やなと思いました。

中村:ちゃんと審査しているんだなと。ガチやなと思いました。

(「マイナビニュース」23年10月16日)

今年初進出を果たした隣人の2人をはじめとして多くの芸人たちが、実力重視で「ガチ」だと評する今回の決勝進出者。

ゼンモンキー、隣人、ファイヤーサンダー、カゲヤマ、サルゴリラ、ラブレターズ、蛙亭、ジグザグジギー、や団、ニッポンの社長と、テレビ的には決して知名度が高い訳ではない芸人も多いが、現在のライブシーン等で高い評価を受けている芸人ばかりだ。

2020年頃以降、急激に世代交代していた感があった『キングオブコント』だが、初進出が半数の5組いる一方で、30代後半から40代の中堅・ベテランも多いのも今年の特徴だ。

決勝大会を前に、そんな決勝進出者たちを改めて整理しておきたい。

連続出場

・ニッポンの社長(吉本・東京)

入れ替わりの激しい決勝進出者の中で、4年連続で決勝に進出したのがニッポンの社長。

今年、上京し全国ネットのバラエティ番組でもおなじみとなった。

決勝初出場の2020年に5位、翌年に4位と順調にランクアップし、昨年は優勝候補筆頭に挙げられていたが、まさかの最下位に沈んだ。

事前のインタビューを読むと、その雪辱を晴らすというよりは、ワクワク楽しみという感情が先に立っている様子がわかる。

優勝しなければというプレッシャーと気負いから解放された力の抜けた彼らが本来の力を発揮することができれば、優勝にもっとも近い一組といえるだろう。

・や団(SMA)

2年連続の決勝となるのが、や団。昨年は異常性と狂気性が際立ったコントで3位に輝いた。

SMAの初期メンバーで生え抜き的存在の彼らは、長らく「売れなきゃおかしい」と芸人仲間からリスペクトされてきた。同じSMAのバイきんぐのように初出場で優勝し一気にブレイクという形にはならなかったが、狙うは『M-1』で2年目で優勝した“錦鯉パターン”。

昨年3位になった際、錦鯉・渡辺が封筒から100万円を出し「今日1日で使うぞ」と焼肉やキャバクラなどを奢ってくれたという粋なエピソードを明かしている。

昨年で“自己紹介”は終わった。「優勝してキャバクラ奢り返します」という宣言を実現してほしい。

返り咲き

・蛙亭(吉本・東京)

2年ぶり2回目の決勝進出となったのは蛙亭。「怪女の微笑み、凡人の狂気」という秀逸なキャッチフレーズで登場した2021年の決勝では、トップバッターという出順の厳しさもあり6位で終わった。しかし、いきなり中野が緑の液を吐き出すというインパクトのあるツカミは、屈指の神回と評される2021年の大会の最高のツカミだった。

今大会の決勝メンバーの中でお茶の間での知名度は頭一つ抜けている売れっ子。2人からは並々ならぬ自信を感じる。

イワクラはもちろん、中野の才気も知れ渡った現在、女性がいるコンビ初の『キングオブコント』王者誕生の瞬間が見られる可能性が高いのではないか。

・ジグザグジギー(マセキ芸能社)

実に7年ぶりの決勝進出となるのはジグザグジギー。ライスが優勝した2016年以来の進出だ。

『キングオブコント』が始まった2008年にコンビを結成した彼らは第1回から挑戦し続け、2013年に初めて決勝進出し6位。2016年は7位だった。

以降、準々決勝敗退が続くが、それでも腐らず、諦めず不屈の闘志で挑戦し続けた。最近は「後輩たちのネタライブに毎月出させてほしい」と自ら申し出、若手に混じってコントを熟成させていったという。それが実って、念願の決勝再進出を果たしたのだ。その実力は誰もが知るところ。ベテランの逆襲に期待したい。

・ラブレターズ(ASH&D)

同じく7年ぶりの決勝進出となるラブレターズ。2011年(7位)、2014年(ファーストステージ敗退)、2016年(10位)に続き4度目の決勝進出となる。4度決勝を経験しているのは今大会ではニッポンの社長と並び最多。しかし、今回の決勝進出までの道のりは真逆ともいえる。「これだけがんばったら行かせてくれるんだ、まだ」と溜口がしみじみ語っているのが印象的だ。

今年、『ラヴィット!』のスピンオフ的な大会として開催された『耳心地いい-1グランプリ』(TBS)で準優勝した通り、リズムネタにも定評がある上、ストーリー重視のコントも得意で幅広い。学生コントが似合う童顔だが、もう2人とも38歳。年齢が追いついてきて、似合う役柄も広くなり、まさに円熟期に突入した。

これまで常にインパクトは残すもあと一歩でタイトルには届かなかったが、いよいよその時が来るのではないかという機運が高まっている。

初出場

・サルゴリラ(吉本・東京)

初出場ながら今大会もっともキャリアが長いのがサルゴリラ。幼馴染みの児玉と赤羽のコンビとなったのは2016年だが、前身である松橋周太呂(「家事えもん」としても活躍)を含むトリオ「ジューシーズ」は2006年に結成された。

東京NSC9期の同期には、ライス、ハリセンボン、しずる、パンサー菅、囲碁将棋ら錚々たるメンバーがいるが、その中でも早くから実力が高く評価されていたのがジューシーズ。

2010年からはパンサー、ジャングルポケットとともに『333 トリオさん』(テレビ朝日)という番組も持っていた。パンサー向井は自身のラジオ番組『#むかいの喋り方』(CBCラジオ、10月3日放送)で「昔からネタがめちゃくちゃ面白くて、3組の中で『キングオブコント』の決勝に一番近いのはジューシューズだなってなんとなく感じていて……」と感慨深げに振り返っていた。そのサルゴリラ・児玉と向井、そして又吉直樹は一時ルームシェアをしていたほど仲が良く、「サルゴリラ」というコンビ名も又吉が名付け親。現在は同期のライス、しずると組んだ演劇ユニット「メトロンズ」が高く評価されている。

『キングオブコント』にはジューシーズ時代からすべての年に挑戦を続けてきた。そして今年、ついに不屈の精神が実り決勝進出を果たしたのだ。実力は折り紙付き。それを『キングオブコント』決勝という最高の舞台で示してほしい。

・カゲヤマ(吉本・東京)

同じく第1回から挑戦を続け、初進出となったカゲヤマ。バカバカしく何も考えなくても笑えるネタで、昨年は『M-1』『キングオブコント』でともに準決勝進出を果たしていた。

益田は、YouTubeチャンネル「あむあむWORLD」でおこなっている企画「スリル」(※2つの箱のどちらかに自分の所持金を入れ挑戦者が当てる心理ゲーム。挑戦者は当てるとそのお金がもらえるが、外しても罰はなく、益田のみリスクのあるゲーム)が、YouTubeの枠を超えて人気に。大物芸人とも対戦を続け、『お笑いアカデミー賞2021』では、ついに松本人志とも対戦した。その勝負度胸で大会の台風の目になるのではないか。

・隣人(吉本・大阪)

今大会唯一となった吉本興業・大阪所属の隣人。が、元々大阪所属だった蛙亭とは同期で「兄弟みたい」と言う間柄。同じくニッポンの社長も大阪時代によくしてくれていた近しい先輩。隣人がまだ吉本の劇場に出られなかった頃から気にかけ自身のライブに呼んでくれていた。そのニッポンの社長を始め先輩たちがごっそり東京へ移籍し、大阪吉本を背負う意識も高まっているようだ。

NHK新人お笑い大賞、NHK上方漫才コンテストなど多くの賞レースで爪痕を残し、2021年のytv漫才新人賞でついに優勝を果たした。

もっとも親しい先輩で前回王者のビスケットブラザーズからもアドバイスを受け、ネタがガラッと変わりパワーアップしたという。その決勝を決めたコントの設定は、千原ジュニアを「その手があったか!」と唸らせたもの。

全国的な知名度は劣るがアップセットに期待したい。

ワタナベエンターテインメントの2組

・ファイヤーサンダー(ワタナベ)

隣人や蛙亭とNSC大阪34期で同期だったのがファイヤーサンダーだ。大阪ではコントがしにくいと感じた彼らは、とにかくコントがしたいと吉本を辞め上京。フリーの期間を経て、ワタナベエンターテインメントに所属した。そして2018年、ABCお笑いグランプリを吉本、松竹所属以外の芸人で初めて獲る快挙を果たした。

そこから『キングオブコント』しか目指していないというほど、それに向けて取り組んできたという。意外と時間がかってしまったがか、ついに決勝にたどり着いた。

ワタナベ芸人のロッチ、ぱーてぃーちゃんを迎えた10月11日放送の『あちこちオードリー』(テレビ東京)でも、近年のワタナベのコント師たちの充実ぶりがスゴいと話題になったが、その通り、今回初めて2組が決勝進出を果たした。

同じく決勝進出したゼンモンキーとは、Gパンパンダ、金の国とともに「NAVENGERS(ナベンジャーズ)」というユニットを結成し活動。さらに崎山は、ゼンモンキー・荻野とにゃんこスター・アンゴラ村長と毎晩のようにZOOMでネタ会議もして良きライバルとして切磋琢磨しているという。

ハナコ以来のワタナベ芸人の戴冠となるか。

・ゼンモンキー(ワタナベ)

そのハナコが優勝したときと似た勢いを感じるのがゼンモンキーだ。ネプチューン、我が家、ハナコ、四千頭身と続くワタナベのトリオ芸人の系譜にもいる。また、崎山は、ハナコ・岡部同様、早稲田大学のお笑いサークル「お笑い工房LUDO」出身で、いわば直系の後輩といえるだろう。

そんな彼らは2020年にトリオを結成し、翌年に芸歴1年目で「ワタナベお笑いNo.1決定戦」で優勝を果たした超新星。今年9月にも「ナルゲキ最強決定戦」で優勝を果たし、東京ライブシーンの最大手「K-PRO」ライブの新エースの座も勝ち取った。

今大会で唯一の20代。大会に新風を吹かせてくれるに違いない。

『キングオブコント』はTBSで今夜19時から生放送!

ライター。テレビっ子

現在『水道橋博士のメルマ旬報』『日刊サイゾー』『週刊SPA!』『日刊ゲンダイ』などにテレビに関するコラムを連載中。著書に戸部田誠名義で『タモリ学 タモリにとって「タモリ」とは何か?』(イースト・プレス)、『有吉弘行のツイッターのフォロワーはなぜ300万人もいるのか 絶望を笑いに変える芸人たちの生き方』、『コントに捧げた内村光良の怒り 続・絶望を笑いに変える芸人たちの生き方』(コア新書)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)など。共著で『大人のSMAP論』がある。

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