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新型コロナを抑え込んだはずの中国で、感染の第2波が始まったのか?

宮崎紀秀ジャーナリスト
新たな感染者が武漢でも。第2波が始まった?(写真は武漢5月12日)(写真:ロイター/アフロ)

 中国は新型コロナウイルスの感染をほぼ抑え込んだとしていた。しかしここに来て感染拡大の第2波かと思える状況が生じている。海外からの流入ではなく、国内での新たな感染が再び確認され出したのだ。

1か月以上抑え込んだ武漢でも

 実際に、震源地の武漢では4月8日に都市封鎖が解除される4日前、4月4日から5月8日まで1か月以上新たな感染者が出ていなかった。4月26日には入院患者が全て退院し、それ以降は武漢市では「感染者がいない」という状態が続いていた。

 ところが、先週末から事情が変わる。

 5月9日には1人、10日には新たに5人の合わせて6人の感染が確認された。いずれも海外からの流入ではない。そのうち1人は危篤、1人は重体となっている。

武漢の全員をPCR検査へ

 これを受け、武漢市は、10日以内に全市民にPCR検査をすると決定した。ちなみに武漢の人口は900万人を超える。

 また新たに感染確認されたこの6人は、同じ居住区の住民だった。小区とよばれるその居住区の共産党委員会は、責任者を解任した。

 それだけでない。

東北地方では連日感染確認

 東北地方の吉林省で次々と新たな感染者が確認されている。同省吉林市に属する舒蘭市で7日に新たに1人の感染が確認された。それを皮切りに、続く9日には吉林市で新たに11人(住所はいずれも舒蘭市)が感染確認。吉林市内では、さらに10日に3人。12日に6人が感染確認された。

 吉林省以外でも、やはり東北地方の遼寧省、黒竜江省で10日、それぞれ1人ずつ新たに感染が確認された。

集団感染の再発

 一体、何が起きたのか。

 7日に吉林省の舒蘭市で感染が確認されたのは、同市に住む45歳の女性。6日に発熱のため病院を外来で訪れ、翌日にPCR検査で陽性となった。彼女の感染経路はわかっていない。

 だが、9日に感染確認された11人の感染ルートは明らかになっている。11人のうち7人の感染源はこの最初の45歳の女性だった。うち5人は女性の家族や親戚、2人は女性との濃厚接触者である。残る4人は、女性から感染したこの7人のいずれかと接触歴があった。

 後の感染者も同様で、先に感染した人の家族や濃厚接触者だった。集団感染が起きたのだ。

 舒蘭市は感染の高リスク地域、吉林市の一部は中リスク地域と分類された。

新たな都市封鎖か?

 こうした事態を受け、舒蘭市を離れる鉄道やバスの運行は停止された。一部再開していた学校も再び臨時休校となり、ネット授業に戻ってしまったという。

 吉林市でも、住人の管理が強化された。団地などの居住区から出入りする際には、住民は体温検査や登録などが義務付けられた。また同市を離れようとする人は、48時間以内に自費でPCR検査を受け陰性であることを報告し、自主隔離などを経なければならない。吉林駅を発つ列車は、今日13日午前6時から運行が停止された。

 中国は、国内での感染拡大の第2波へ警戒感を強めている。国家衛生健康委員会のスポークスマンは今日13日の記者会見でこう述べた。

「散発的な病例が引き起こす集団感染のリスクは無視できない。なんとしても外からの流入を防ぎ、内での再燃を防ぐ」

ジャーナリスト

日本テレビ入社後、報道局社会部、調査報道班を経て中国総局長。毒入り冷凍餃子事件、北京五輪などを取材。2010年フリーになり、その後も中国社会の問題や共産党体制の歪みなどをルポ。中国での取材歴は10年以上、映像作品をNNN系列「真相報道バンキシャ!」他で発表。寄稿は「東洋経済オンライン」「月刊Hanada」他。2023年より台湾をベースに。著書に「習近平vs.中国人」(新潮新書)他。調査報道NPO「インファクト」編集委員。

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