首都圏では教科書+100〜200%の知識が必要! 通信教育で公立中高一貫校対策をするという選択
地方の公立中高一貫校でも教科書+20%の知識が必要
公立中高一貫校に特化した通信添削サービスを取材した。公立中高一貫校専門情報サイト「むぎっ子広場(http://www.mugihiro.com )」が提供している「むぎっ子通信添削」「むぎっ子通信添削Jr 」「むぎっ子作文添削」だ。
「むぎっ子広場」は現在5人のベテラン塾講師によって運営されている。その中には実は、各塾で実施されている適性検査対策模試の作成者や、ベストセラーになった塾向け公立中高一貫校対策テキストの執筆者が含まれている。そしてその講師本人が、責任をもって添削をしてくれることが最大の特徴だ。
「むぎっ子通信添削」は、小6を対象にした横書き(東京都の適性検査1のタイプ)の適性検査対策のための通信講座。5〜12月の8回添削を受けられる。「むぎっ子通信添削Jr 」は、「むぎっ子通信添削」を小 5用にしたもので、7月、9月、11月、1月、3月の5回の添削が受けられる。いずれもむぎっ子広場の「ひろやん先生」こと岡田宏さんが作問などを担当する。
「むぎっ子作文添削」は、小5・小6を対象にした縦書き(東京都の適性検査2のタイプ)の適性検査対策。小6のコースは「標準」「発展」「完成」のレベル別になっている。各コースとも通常2〜3カ月間で4回の添削を受ける設定だ。「めがね先生」こと小山勇司さんがすべての作文を添削する。
小6対象の自宅で受けられる「むぎっ子模試」は年4回の実施。適性検査の出題形式に慣れることができる。模試については「カッシー先生」こと花新発隆一さんが取り仕切る。
しかしそれだけで十分なのか。「いっとく先生」こと畠山一徳さんに聞いた。
「その答えは、公立中高一貫校にどれくらい本気で行きたいのかによって変わります。できる範囲で対策をして、ダメなら地元の中学校に行けばいいやと思っているのならば、むぎっ子広場の通信添削で問題形式に慣れておくだけで受けてみるのもいいでしょう。地頭の良い子であれば合格を勝ち取ることができます。毎年そういう児童が一定数います。しかし合格を強く望み少しでも確率を高めたいというのなら、適性検査対策だけでは不十分です。私立中学受験と同様の4教科型の勉強をして、基礎知識と基礎学力を強化しておいたほうがいい。具体的には地方の公立中高一貫校でも『小学校の教科書+20%』の知識が必要です」
適性検査は予備知識がなくてもじっくり考えればわかる問題だといわれているが、実際には45分間という制限時間の中で解かなければならない。知識が多いほうが有利に決まっているというのだ。
畠山さんがいう「教科書+20%」の知識および基礎学力を身に付けるためにあるのが「公立中高一貫校対策 学力テスト」だ。文系30分理系30分の2種類のテストを自宅で受ける。小5は4月から翌2月までの6回、小6は4月から12月までの5回。
毎回の出題範囲が決められていて、テストで高得点を取ることを目指して自宅で学習すれば、「教科書+20%」の知識が身に付くようにできている。
首都圏の公立中高一貫校なら教科書+100〜200%の知識が必要
ちなみに、地方の公立中高一貫校の合格確率を高めるために必要なのが「教科書+20%」の知識だとした場合、私立中高一貫校合格を目指すために必要な知識はどれくらいだといえるのか。畠山さんの個人的な見解としてはこうだ。
「中堅校なら教科書+20%、上位校なら+100%、難関校なら+200%以上といったところでしょうか」
では、首都圏の公立中高一貫校はどうか。四谷大塚の偏差値表を参考にすると、東京都の公立中高一貫校は私立中高一貫校の上位校から難関校くらいに位置する。つまり本気で首都圏の公立中高一貫校対策をするならば、「教科書+100〜200%」の知識が必要になる。
「首都圏の1都3県の公立中高一貫校の適性検査は全国的に見ても難解です。ある程度私立中学受験用の勉強をしておかないと太刀打ちできません。問題文の会話が長いだけで、結局は私立中学入試に頻出の特殊算の考え方が問われている場合がありますから。一方、地方は難易度は低いものの、形式としてはより露骨に私立的な問題を出す傾向があります。たとえば沖縄の適性検査は、私立中学入試問題そのものです」
いずれにしても、従来の私立中学受験用の4教科型の勉強はしておいたほうが有利だということだ。
むぎっ子広場の各種添削講座の申し込みのチャンスは年1〜2回。しかし定員が限られているため、あっという間に定員が埋まってしまうという。そこで現在インターネットによる映像授業「むぎっ子web講座」の配信を試験的に始めている。2018年にはサイトをリニューアルし、web講座も拡充する方針だ。
「公立中高一貫校対策では『教えすぎ』は禁物です。その意味で映像授業はちょうどいい」
親が教えるというのは子供を壊す凶器になり得る
教えすぎはよくないということだが、塾や通信添削を利用せず、公立中高一貫校対策をするのはやはり無謀なのか。
「過去問集を1冊買ってきて親が教えるというのは子供を壊す凶器になります」
ドキッとする台詞が飛び出した。
「たいていの親御さんは、過去問集に付いている解答例を見て、それと違うだけで×を付けてしまうんですね。適性検査は正解が1つとは限りません。過去問集に付いている解答例だって例でしかない。ましてや解答だけ見ても、解説がなければまったく意味がありません。過去問集を買うのなら、解説付きのものを複数種類買って、それぞれの解説や解答例を読み比べたうえで採点をしなければいけません。それができる親御さんがどれくらいいるでしょうか」
単純な知識を問う問題なら、親が採点してもいい。しかし適性検査のような記述式問題を素人が採点するのはほぼ不可能に近い。ゆえに適性検査対策こそプロの力を借りるべきだというのだ。
現在、公立中高一貫校の見た目の倍率は下がっている。しかしそれは、そもそも本気度が低く合格可能性の低い子供たちが受検しなくなったためで、合否をめぐる受検者同士の攻防はむしろ厳しさを増しているはずだ。灘や開成の倍率が、3倍程度以上には上がらないのと同じ理屈だ。
その点を、むぎっ子広場の小山勇司さんが心配する。
「一部の塾が公立中高一貫校攻略法を掲げ、それが浸透してしまうと、当然競争が激化し、子供への負荷は大きくなります。私立中学受験の場合はそれでも各校の校風や教育理念に憧れて『何が何でも開成』とか『何が何でも灘』という人たちが一定数いるのですが、公立中高一貫校の場合はどうでしょう。あまりにも難関化して負荷が大きくなるのであればその反動で、『高校で受験すればいい』という人たちが増えてしまうのではないでしょうか。そこにある種の損得勘定が働く気がします。少なくとも東京都においては次々と学校が新設されて勝手にマーケットが拡大していく局面は終わりました。一部塾による寡占化、攻略法の確立が進むと逆に公立中高一貫校のマーケットが萎縮する可能性があります。ぜひ適性検査の質を上げて、受検テクニックで受かる次元を超越してほしい」
全国的にはどうか。
「全国的に見ても、公立中高一貫校の新設ラッシュは終わっています。すでにできている公立中高一貫校に対する評価が高ければもっと新設が続くはずだと思うのですが、現実にはそうなっていません。またたとえば、福井県と石川県には1校ずつしかありません。もともと公立高校入試がうまくいっていて、『全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)』でも上位の県ですから、わざわざ公立中高一貫校を受検するインセンティブが働きにくいのでしょう。単に学力を競い合うだけではなくて、学校ごとの特徴を出すようにしないと、公立中高一貫校の存在意義も、そのうちかすんでしまうかもしれません」
※『公立中高一貫校に合格させる塾は何を教えているのか』(おおたとしまさ著、青春新書インテリジェンス)より抜粋・改編して掲載しています。