羽田空港、保安検査場に50メートル近い長い行列で満席便続出。4連休初日は4月の緊急事態宣言以降最多に
国内線に人が戻ってきた。4連休初日となる9月19日(土)の朝、羽田空港の国内線チェックインカウンターには、国内旅行に出かける日本人旅行者の姿が多く見られた。19日(土)の朝7時過ぎのANA国内線が発着する羽田空港第2ターミナルの保安検査場入口前には50メートル近い行列ができていた。かなり衝撃的な光景であり、羽田空港には人が戻ってきていた。
ANAの連休初日の羽田空港発は97%の予約率
航空各社によると、この4連休、4月7日の緊急事態宣言以降では最多の予約数になっており、ANA(全日本空輸)では9月18日現在で19日だけで約8万7000人の予約が入っており、一部減便で便数自体は減らしている状況はあるが、羽田空港発では利用率が97%を超える見込みで(ANA国内線全体では74.8%の利用率)、多くの便で満席となっている。特に北海道や沖縄方面への便は19日は全便満席の状態で、20日(日)の午前中まで同様の状況になっている。4連休全体では約27万7000人の予約が入っており、利用率は69.2%となっている。
ANAの19日の予約数が8万7000人というのは、新型コロナウイルスの影響が出る前の2月28日に9万1596人を記録した後、3月1日以降では最多となり、3月20日~22日の3連休以上に予約が入っているとのことだ。参考までに緊急事態宣言中の5月は1日あたりの利用者は約8000人、お盆期間中(8月7日~16日)の1日あたりの利用者は約4万8000人、最多となった8月16日でも約6万2000人だったことから、9月の4連休初日はその1.4倍の予約(お盆最多の8月16日に比べて)が入っていることになる。
午前10時10分追記:ANAでは4連休中に4便の臨時便に加えて、353便の機体を当初予定していた機体よりも大型化したことで、合計2万3023席を増やした。ボーイング737型機の166席仕様で考えると139便の臨時便相当の座席数を増やしたことになる。
9月11日以降に予約が急増
ANAの井上慎一代表取締役専務執行役員も、混雑している状況について「嬉しいです。これだけのお客様がいるのは久しぶりです。弊社では今年度最高のお客様数で大変嬉しく思ってます。9月中旬以降、予約が徐々に右肩上がりになっており、9月11日にGo Toの東京除外解除の方針が示されたことで、9月の勢いがついている状況です」と分析した。
筆者も取材しているなかで、北海道や沖縄など飛行機を利用する長距離国内旅行におけるホテルの予約が急激に入り始めたのが9月10日以降だ。この日、東京都のモニタリング会議があり、東京都の小池百合子知事が23区内の飲食店に対して22時以降の自粛要請を15日をもって解除すると共に、県をまたいだ移動自粛要請も実質解除することを明らかにしたことで、10月1日に解除される「Go Toトラベル」の東京都発着除外に関係なく、4連休中のホテルや飛行機、新幹線の予約が急激に入るようになったそうだ。新型コロナウイルスの感染防止の観点から夏休み中に「STAY HOME」で旅行に出かけなかった人が、今年最後の4連休になるこのタイミングで旅行に出かけることを決めたケースも多いようだ。JAL(日本航空)の便が発着する羽田空港第1ターミナルも含めて家族連れが多く見られた。
北海道ではレンタカーも満車に。「3密」回避の旅行が人気
加えて、「3密」を回避するべく、北海道や沖縄などではレンタカーの予約が相次ぎ、筆者が数日前に取材した北海道・新千歳空港でもレンタカーが満車で新規の予約ができない事態にもなっていたほか、航空各社では臨時便や機体の大型化を先週末から今週前半にかけて急遽発表し、急な旅客増に対応する形を取っている。
最近の旅行予約の傾向としては、新規の新型コロナウイルスの感染者数の推移によって、減少傾向に転ずることによって直前になって予約が入る傾向になっていると共に、逆に感染者数が拡大すると一旦予約していても、すぐにキャンセルするという状況が顕著に見られている。一旦、6月下旬においては感染者数が減少したことによって7月・8月の予約が回復傾向に転じたことで、航空各社は7月が7割程度、8月は8割~9割程度の便を運航する計画で販売していたが、7月上旬から感染者数が大きく上昇したことによって大量キャンセルとなり、ガラガラの便が続出してしまった経緯もあり、当初は今回の9月の4連休も厳しいという声が航空会社・旅行会社・宿泊施設関係者から多く聞かれていたが、9月10日以降に急激に予約が増えた。
駐車場も久しぶりに満車表示に
羽田空港の各ターミナルに直結している駐車場にも、筆者が見る限り、4月以降で最も多くの車が駐車しており、久しぶりに満車の表示を確認することができ、第1ターミナルに隣接する「P1」「P2」、第2ターミナルに隣接する「P3」は朝7時30分の段階で全て満車で、収容台数の多い「P4」と国際線発着の第3ターミナルの「P5」には空車がある。
これでもまだ半分程度の回復
しかしながら、空港に人が増えたとはいえ、昨年9月の連休時と比べるとANAで前年比48.8%の予約数であり(運航割合も当初計画の約53%の便数)、まだ半分程度の回復となっている。急遽臨時便の設定、機体の大型化などで4連休は対応したが、10月も各航空会社では3割~5割程度の便を運休する計画であり、「Go Toトラベル」の東京除外解除後も厳しい状況には変わりないが、明らかに7月・8月と続いてきた近場に出かける「マイクロツーリズム」の傾向を維持したまま、北海道や沖縄などへ出かける旅行者が増えていることも明白である。一方、今後も感染者数の推移次第で大きく変わることになる。感染者数が増加すれば、7月・8月同様に旅行を直前で取りやめるケースも出ることになる。
秋の紅葉シーズンを取り込みたい
直前の予約も多いと共に、感染者数が増えればキャンセルが出ることも想定される。ANAの井上氏は今後の見通しのなかで「10月・11月に秋の紅葉シーズンがあることから、盛り上がってもらい、年末年始に繋げていきたい」と話した。
6月の県を跨いだ移動自粛が解除されて以降、感染者数の推移によって動きが大きく変わる国内旅行需要になっている。「withコロナ」時代は、直前の旅行予約、スケジュール変更が可能な柔軟な対応が主になってくることだろう。