俳優の年齢を公開するのは「表現の自由」。カリフォルニアの裁判でIMDbが再び勝訴
インターネットで俳優の年齢を情報として公開するのは、差別の助長か、表現の自由か。前者を信じる米映画俳優組合(SAG-AFTRA)と、後者を主張するアマゾン傘下の映画情報サイトIMDbの法廷での対立は、今回もIMDbの勝利に終わった。
この裁判は、2017年に施行されたカリフォルニア州法をめぐるもの。AB1687と呼ばれる法案で、俳優がウェブサイトに自分の年齢を開示してほしくないと要求した場合、それに応じることを命ずるものである。この州法の成立を積極的にプッシュしたのは、SAG-AFTRA。有料のIMDbPro.comは、とりわけキャスティングディレクターや監督、プロデューサーが配役を決める上で閲覧することが多いため、年齢だけを見てオーディションに呼ばないということが起こりがちと、彼らは危機感をもったのだ。
SAG-AFTRAのプレジデントで、「ビバリーヒルズ高校白書」のアンドレアを演じたガブリエル・カーテリスは、この法案が通過しつつあった2016年、「The Hollywood Reporter」に、「今こそ、ハリウッドの年齢差別を撲滅するべき時」と主張する意見記事を書いた。その中で、彼女は、ネットが今のように使われていない時代だったからこそ、自分はアンドレア役を得られたと語っている。当時29歳だった彼女が16歳の役のオーディションを受けることができたのは、キャスティング担当者が彼女の実年齢を簡単に調べられなかったおかげというのだ。「この問題(年齢差別)は、とくに女性を直撃します。キャラクターになりきって、観客を信じさせることこそ演技であるのに」「キャリアの中で、年齢差別に直面した俳優は以前から多くいます。ですが、今、これらのサイトのせいで、それは自動的かつ大規模に行われるようになりました。年齢は、キャスティングをしようとしている人の目の前にさらされるのです。たとえ、それに影響されないようにしようと心がけたとしても、見るのは避けられません」と述べるカーテリスは、AB1687を、「個人情報を間違った形で使うことにストップをかけ、公正な雇用を促進するもの」と主張した。
だが、この州法が施行されると、IMDbは、憲法が保障する表現の自由を妨げるものだとし、無効にするよう求める裁判を起こす。そこでIMDbが勝ったのを受け、SAG-AFTRAは控訴。それが今回の裁判だったのだが、現地時間19日に出たその判決もまた、IMDbの主張する、表現の自由を認めるものだった。判決を受けて、カーテリスは、「私たちは非常にがっかりしています。しかし、SAG-AFTRAは、これからも、IMDbが個人情報を悪用することに抗議を続けます。これはひどいプライバシーの侵害で、雇用における差別を助長するものです」と声明を発表した。さらに上訴をするかどうかについては、まだ決めていないという。
「女優は40歳が賞味期限」とも言われた、ひどすぎるハリウッドの年齢差別
女優に対するハリウッドの年齢差別は、以前から強く指摘されてきたことだ。長い間、「女優は40歳になったら終わり」と言われ続け、実際、ごくひと握りの大女優を除けばそのとおりになっている。また、主演男優に比べて恋のお相手役の女優の年齢が極端に若いということも、当たり前に起きてきた。たとえば「6デイズ/7ナイツ」に出た時、ハリソン・フォードは56歳、アン・ヘッシュは29歳だ。「テッド」に出た時のマーク・ウォルバーグは41歳、ミラ・クニスは29歳だったし、「007 スペクター」出演時、ダニエル・クレイグは47歳、レア・セドゥは30歳である。2015年には、マギー・ギレンホールが、イギリスの「Guardian」に対し、「私は今、37歳ですが、55歳の俳優の恋人役には歳を取りすぎていると言われたんですよ。すごく驚きました。最初は悲しく感じ、次に怒りを覚え、最後には笑ってしまいました」と語っている。
今回、IMDb寄りの判決を出した裁判長は、年齢差別を阻止することは大事と強調しつつも、「違憲は違憲」であり、また、この法律はその目標を達成する上で大きな成果を達成できるものでもないと述べた。たしかに、「俳優から要求があればサイトから年齢を削除する」というこの法律だけでは、抜本的な解決にはならないだろう。しかし、小さいながらも、第一歩ではあったのである。そのせっかくの動きは、振り出しに戻ってしまった。今後、SAG-AFTRAはどう出るのか。新たな展開に期待したい。