ホロコースト生存者ら Facebookに「ホロコースト否定論」の投稿削除要請キャンペーン展開
ユダヤ人のザッカーバーグCEOに直接訴えたいホロコースト生存者
第2次世界大戦時にナチスドイツによって約600万人のユダヤ人、ロマ、政治犯らが殺害された、いわゆるホロコースト。だが現在でも、欧米やイスラム諸国では反ユダヤ主義は根強く、ホロコーストは存在していなかった、ホロコーストはユダヤ人による捏造だと主張する「ホロコースト否定論」が存在する。そのようなホロコースト否定論者の主張は、現在でも多くのSNSやネットに書き込まれている。
戦後70年以上が経ち、ホロコーストの生存者らも高齢化が進んできているが、世界中のホロコースト生存者が2020年7月に、FacebookのザッカーバーグCEOに対して、ホロコースト否定論に関する投稿を削除するように呼びかけ、キャンペーンを始めた。「#NoDenyingIt」のハッシュタグをつけて、呼びかけている。ザッカーバーグ自身もユダヤ人で「ホロコースト否定論は非常に攻撃的であり、攻撃的で悪い発言と戦うのは、良い発言だ」と語っている。ニューヨークのユダヤ団体は「ホロコースト生存者らは直接、ザッカーバーグCEOに会って想いを伝えたい」と述べている。
ホロコースト生存者でアウシュビッツ絶滅収容所に収監されていたエヴァ・シュロス氏は「ドイツやオーストリアではホロコースト否定は犯罪です。どうしてホロコーストがなかったと言えるのでしょうか?600万人以上のユダヤ人はどこに行ったというのでしょうか?ナチスドイツ自身が撮影した写真や動画も何千もあり、そのような事実を知っているはずなのに。ホロコースト否定論は自分たちがやっていることを誇らしく思っているようです」と困惑した様子で語っている。エヴァ・シュロス氏はナチスドイツの迫害を逃れてウィーンからアムステルダムに逃避してきたときに、アンネ・フランクと友達になっている。彼女と母はアウシュビッツから生還できたが、父と兄弟は殺害された。アウシュビッツ絶滅収容所ではガス室、飢え、病気などで110万人以上が殺害されたホロコーストの象徴的な存在だ。「アウシュビッツでは、毎日ユダヤ人が殺害されており、死体が焼かれて煙突からは1日中煙が出ていました。私は当時15歳だったんです。とてつもなく恐ろしく寂しい日々でした。その時の気持ちがどんなものだったか、想像できますか?」とザッカーバーグ氏に伝えたいと語っている。
「若い人たちはSNSの情報を鵜呑みにしてしまう」
Facebookは「我々は攻撃的な内容やヘイトスピーチ、事実に基づかない投稿は削除するようにしている」と語っている。だがFacebookをはじめとするSNSでは毎日のように多くのホロコースト否定論やヘイトに関する投稿がされており、あっという間に世界中に拡散されていく。
先述のようにホロコースト生存者は高齢化が進み、ホロコーストを体験した人たちは年々減少している。「ホロコーストは当時、実際にあった」と証言できる生存者らがいなくなると、「ホロコーストはなかった」という"ホロコースト否定論"の投稿や情報が世界中に蔓延することによって「ホロコーストはなかった」という虚構がいつの間にか事実になってしまいかねない。いわゆる歴史修正主義だ。ドイツのユダヤ人でホロコースト生存者で87歳のシャルロット・クノブロッホ氏は「ソーシャルメディアのようなプラットフォームで拡散される偽の情報を若い人たちは信じてしまいます。特に若い人たちはSNSの情報を鵜呑みにしてしまうので、このようなキャンペーンを通じてFacebookのザッカーバーグCEOに直接訴えていくことがとても重要です」と語っている。
▼アウシュビッツ博物館もツイッターで「#NoDenyingIt」をつけてホロコースト否定をFacebookに削除するように訴えている。
▼ユダヤ団体による「#NoDenyingIt」でのホロコースト否定をFacebookに削除を要請する投稿。