「最も高い評価の巨人に行く」当然の選択の丸が広島ファンに叩かれる異常さを指摘しないのはなぜか?
広島カープのHeart & Soulだった丸佳浩の巨人移籍が波紋を呼んでいる。ネット上には嘆きを超えてバッシングとも取れるファンの声が飛び交っている。彼は当然の権利を行使しただけなのだが、その状況の異常さを指摘するメディアがほとんど存在しないのはさらに残念だ。
こんな記事が掲載されていた。
内容はざっくり言うと、「熱狂的な広島ファンを敵に回した丸はこれから大変だぞ」ということだ。
このことは全く事実なのだが、取材対象である各球団とぬるま湯関係の既存スポーツ媒体によるものなら理解できる。まあ、そんなものだからだ。
注目すべきは、媒体が「IT media ビジネスONLINE」というれっきしとしたビジネスサイトであることだ。
経済・ビジネス媒体のオンラインサイトがスポーツ関係の記事を掲載することは一般的だ。しかし、そこはビジネス系。単に「勝った、負けた」ではなく、ビジネスとしての側面を取り上げたり、そこからビジネスマンとして学ぶべきポイントを抽出するケースが多い。しかし、この記事の内容はスポーツの結果とポルノ記事を同居させる紙媒体のそれとほとんど選ぶところがない。
なにも、IT mediaビジネスONLINEがけしからん、と言いたいのではない。
丸の巨人移籍に関しては、もっと伝えるべき事実があると思う。プロ野球選手はプロ入り時には球団選択の自由がなく、国内FA権を得るまで原則として8シーズンも過ごさねばならないこと。その間対等な年俸交渉も事実上不可能なこと。さらには、FAとなるに当たっては、「宣言」などという踏み絵的なプロセスを経ねばならないこと。丸はその状態で規定の年数を過ごし、素晴らしい成績を残し自らの価値を高め、「最も高く評価してくれる球団を選択する」というごく当たり前の行動を取っただけだということ。そして、何よりも当然のことをしただけの選手が旧所属球団のファンからバッシングを受けていることの異常さだ(嘆きなら理解できるが)。
これらがほとんど伝えられず、「さあ、丸は大変だぞ」ではチト悲しい。このことの問題提起をスポーツ紙に期待するのは無理だろうが、ビジネスサイトにとってはうってつけのネタだと思う。
ネット上で丸を叩きまくるのは、広島ファンの中では少数派だと思いたい。良識派というのは本来声高な主張はしないものだからだ。
しかし、メディアからも丸の行動を積極的に擁護する意見が出てこないのは残念だ。この国はそこまでムラ社会なのか。「退職代行サービス」が広まりつつあるのも理解できるような気がする。