オリンピック年に捧げるパリの展覧会「ファッションとスポーツ」が面白い。
2024年夏、オリンピックがフランスの首都パリに100年ぶりに戻ってきます。
この歴史的な瞬間を前に、パリ装飾芸術美術館では、ファッションとスポーツの関係性を探求する革新的な展覧会「MODE ET SPORT」が開催されています。
古代から現代に至るまで、ファッションとスポーツがどのように互いに影響を与え合い、時には融合してきたのかを紹介するこの展覧会。パリならではの芸術的洗練と、オリンピック開催年ならではのダイナミズムが同時に感じられる一大イベントとなっています。
展覧会では、450点以上の衣装、アクセサリー、写真、スケッチ、雑誌、ポスター、絵画、彫刻、ビデオを通じて、スポーツウエアの進化とファッションへの影響を走馬灯のように概観することができます。
会場はスポーツの歴史を年代順に辿るように設計され、テーマ別のセクションで構成されています。古代のスポーツが裸体と結びついていたことから始まり、中世の騎士のトーナメント、近代スポーツの発展、そして女性の解放に至るまでの物語が次々に展開します。
水泳や自転車がもたらした社会的変化、戦間期のスポーツウエアの誕生、そして冬季スポーツやサーフィン、スケートボードといったスポーツがファッションに与えた影響など、豊富な例が紹介されています。
ファッション界の巨匠たちがスポーツ界に目を向け、その要素をハイファッションにどのように取り入れていったのかも見どころです。現代においてジョギングパンツやスニーカーが日常的なファッションアイテムとしてどのように定着したのか。そういった時代と文化の変遷もこの展覧会を通して感じ取ることができます。
ルネ・ラコステがテニスプレイヤーからファッションの世界へ進んだこと、エミリオ・プッチがオリンピック選手からファッションデザイナーへと転身したことなどが象徴する通り、スポーツとファッションが交差することで生まれた創造性は枚挙にいとまがありません。この二つの世界は個別に存在するのではなく深く結びついており、互いに影響を与え合いながら進化し、新しい時代を作ってきました。
筆者が実際に訪れてみて印象的だったのは、まずその演出です。展覧会のメインコーナーは、さながら競技場のトラックのようで、そこに有名ファッションデザイナーたちの作品がずらりと勢揃いしています。また、プールのシーンを天井に展開させるなど、遊び心に富んだ演出によって、来訪者を飽きさせない工夫がされています。
歴史資料や衣装だけでなく、ビデオ映像がところどころに据えられているのも小気味よいアクセント。ともすると静的になりがちな展覧会に躍動感をもたらしています。
また、機能性を最大限に追求することから生まれた革命的素材を観覧者が直に触れられるコーナーなどもあります。つまり、視覚以外の感覚器官を刺激し、人々があたかもその歴史に参加しているような気分にさせる工夫があちらこちらにちりばめられているのです。
この展覧会は、ファッション愛好家だけでなく、スポーツファン、歴史家、文化人類学者、そして単に美しいものを愛するすべての人々にとって魅力的なものです。パリを訪れる機会があれば、このユニークな展示を体験し、ファッションとスポーツが織りなす豊かな物語に触れてみてください。2024年という記念すべき年の鮮やかな記憶になることでしょう。
展覧会「MODE ET SPORT(ファッションとスポーツ)」
パリ装飾芸術美術館
2023年9月20日〜2024年4月7日
こちらの動画の前半でもこの展覧会の様子を紹介しています。ぜひご覧ください。