コロナ禍で、軽くて安価な「リモート会議室」を開発 段ボールが劇的変化
尼崎市に拠点を構える会社が昨年12月から、工具不要で手軽に組み立てられるうえ、組み立て後も簡単に移設可能な「空間」を製品化して発売、宣伝もしていないのに引き合いが来ているという。
北欧生まれの段ボールを使いこなすカワグチマック
新型コロナウイルスの感染が拡大する中、職場内で集中できる空間を確保しようと企業が購入し始めているようだ。
製品名「ワークブースボックス」「ワークテーブル」を開発したのは段ボール製品製造販売のカワグチマック工業だ。社員115人、年商12億円の典型的な中小企業だが、同社の強みは北欧生まれの強化段ボール「リボード」を使いこなせることにある。
「リボード」は、スウェーデンの間伐材を原料に生産された強化段ボールで、それを何重にも重ねて圧縮し、板のように使える素材だ。重さはベニヤ板の5分の1程度であるうえ、紙なので切ったり曲げたりの加工が素早くできる。このリボードは主に展示会の陳列台や家具の材料として使われ始めている。モーターショーでは車の陳列台に使われることもあり、強度は十分にある。
「ワークブースボックス」もリボードを材料にして作られた。幅80センチ、奥行き120センチ、高さ150センチの公衆電話ボックスのような個室で、重さは24・5キロ。ボックス内で作業できるように机や椅子が付属品として付いている。
価格は大手の10分の1以下
価格はシンプルな廉価版の「ワークブースボックス・ホワイト」が6万円で、木目調の「ワークブースボックス・プレミアムウッド」が8万8000円。カワグチマックの川口徹社長はこう説明する。
「大手事務機器会社がすでにスチールやアルミ、木材、ガラスなどを使って同様の製品を発売してヒット商品になっていますが、価格が50~100万円程度。設置費用だけで20万円以上かかり、サブスクリプションでも月額5万円以上の利用料が必要なケースもある。うちのは最低限の機能しかつけずに、廉価版だと価格がその10分の1程度ですから商機があると判断しました」
「ワークテーブル」の方にも廉価版のホワイトと、木目調のプレミアムウッドがある。いずれにも吸音パネルが付いており、音の遮断効果があり、LEDバーライトも付いている。大きさは、幅81・8センチ、奥行き58・4センチ、高さ139・1センチ。テーブル上部と下部、背景用自立パーテーションの3点で構成される。3点セット価格は廉価版が6万2500円で、プレミアムウッドが9万4000円。ばら売りの場合はやや割高になる。
また、カワグチマックによると、短期記憶力試験で「ワークブースボックス」「ワークテーブル」を使ったところ、色記憶試験・数字記憶試験で平均より高い効果が出たため、集中力を高める効果もあるという。
JAXAのロケット模型で注目
川口社長は「『ワークボックス』『ワークテーブル』いずれもアルコールなどで消毒しても大丈夫。材料は間伐材なので環境にも配慮した製品。紙なので廃棄も簡単」と説明。グリーン(エコ)という時流に乗った製品でもある。
このほかにもリボードや段ボールなどを使い、ついたてやフェイスパーテーション、消毒スタンドも製造している。カワグチマックは1月27日~29日にかけて千葉・幕張メッセで開催予定の「看板・ディスプレイ展」に出展し、これから営業攻勢をかける計画だ。
同社はJAXA(宇宙航空研究開発機構)が打ち上げる予定の「H3ロケット」の模型をリボードで作ったことで注目された。紙素材なので、円錐形に加工しやすいことからロケットの模型に用いられたという。国内ではリボードの認知度は高くないため、こうしてリボードを使いこなせる会社は日本ではまだ少ないそうだ。
一連のコロナ対策グッズへの取り組みは、中小企業の「withコロナ」戦略とも言えるのではないか。新型コロナの影響で飲食店などには深刻な影響も出ているが、カワグチマックは生き残りのためにコロナ禍を嘆くだけではなく、ビジネスチャンスととらえている。こうしたしたたかな行動も重要だ。