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麻疹(はしか)が再び増加傾向 麻疹流行を防ぐためにできることは?

忽那賢志感染症専門医
(写真:アフロ)

国内で麻疹患者が再び増加傾向

品川区の企業で麻疹患者が複数発生したことが報告されました。先月から今月にかけて横浜市静岡県で麻疹の患者が報告されるなど、国内での麻疹の流行が続いています。

三重県から始まった今年の麻疹の流行は、ここ数年で最大の規模となっています。今年はすでに700人を超える麻疹患者が報告されています。ここ最近は患者発生が減少傾向であったため、終息が期待されましたが残念ながらこの数週間は再び増加傾向に転じており警戒が必要です。現在、ラグビーワールドカップが開催されていますが、世界ランキング1位のニュージーランドでも麻疹の大流行が起こっており、持ち込みが懸念されています。

国立感染症研究所 感染症疫学センター発表資料
国立感染症研究所 感染症疫学センター発表資料

感染のリスクは「ワクチン接種不十分」

今回の麻疹の流行でも感染者の大半は「ワクチン接種歴不明」「接種歴なし」「1回のみ接種」ということでワクチン接種が不十分な方々が多くを占めています。2回接種している人も確かにいましたが少数派です。生涯に2回麻疹ワクチンを接種していれば、基本的には麻疹に十分な免疫を持つことができます。仮に罹ったとしても軽症(修飾麻疹)で済むことが多いですし、修飾麻疹は通常の麻疹に比べて周囲の人にうつりにくいと言われています。

国立感染症研究所 感染症疫学センター発表資料を元に筆者作成
国立感染症研究所 感染症疫学センター発表資料を元に筆者作成

ご自身の麻疹の免疫を確認しましょう

ご自身のワクチン接種歴を確認するためには、母子手帳を見るのが一番です。ご自身が子どものときの母子手帳です。母子手帳には、ワクチンの定期接種の記録を記載する欄があるんです。「自分の母子手帳なんて持ってないよ」と思われるかもしれませんが、今持っていなくても、実家には残っているかもしれませんので確認してみましょう。

このポスターを見てください。

母子手帳啓発ポスター 筆者作成
母子手帳啓発ポスター 筆者作成

愛くるしい子どもたちと、甲斐性のなさそうなポチャ芋系おじさん。そうです、忽那ファミリーですね。母子手帳で予防接種の記録を確認しましょうね、という啓発ポスターでして、ときどき検疫所とか病院とかに貼っていただいております。

母子手帳の「罹った」は信用できないかも

母子手帳にはときどき「○○歳のときに麻疹に罹りました」と書かれていることがあります。あるいはご自身が家族から「あんた小さいとき麻疹になってるわよ」と言われているかもしれません。しかし、この「罹った」という記録や記憶は不確かなことがあります。一昔前は現在と違って抗体検査や遺伝子検査といった検査に頼らない「臨床診断」、つまり症状や所見だけに基づいて診断されていることが多く、実は風疹なのに麻疹と診断されていることもあるかもしれません(逆もまたしかりです)。罹ったという記録がある方は確認のために抗体検査をすることをお勧めいたします。

もしご自身のワクチン接種状況が分からなかった場合、あるいはワクチン接種が不十分だった場合は合計2回となるようにワクチン接種をしましょう。昭和37(1962)年〜昭和54(1979)年生まれの男性の方は、現在風疹の流行に伴い助成が受けられるため麻疹風疹混合ワクチンを接種できるはずですので自治体にご確認ください。

「ワクチンは自分のためならず」という言葉があります。あります、というか正確に言うと今私が考えました。ワクチンは、もちろん自分のために打つものではありますが、それだけに留まらず、周りに暮らす人たちのためでもあるということです。前回も申し上げましたが、ワクチンは自分自身を守るためだけでなく、家族や周囲の人を守る「集団免疫」の効果もあります。自分のためだけでなく、自分の家族や大事な人を守るためにもご自身の麻疹の免疫について今一度確認しましょう。

集団免疫の効果 Wikipediaの画像を翻訳
集団免疫の効果 Wikipediaの画像を翻訳
感染症専門医

感染症専門医。国立国際医療研究センターを経て、2021年7月より大阪大学医学部 感染制御学 教授。大阪大学医学部附属病院 感染制御部 部長。感染症全般を専門とするが、特に新興感染症や新型コロナウイルス感染症に関連した臨床・研究に携わっている。YouTubeチャンネル「くつ王サイダー」配信中。 ※記事は個人としての発信であり、組織の意見を代表するものではありません。本ブログに関する問い合わせ先:kutsuna@hp-infect.med.osaka-u.ac.jp

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