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海外でトラブルに巻き込まれた日本人に、政府や大使館はどのような対応をすべきか

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 海外でも犯罪は発生し、それに巻き込まれる事は多々ある。その時政府は…(写真:アフロ)

海外との行き来が容易になり、業務などで定住する人も多くなると、当然何らかの形でトラブルに巻き込まれるケースも生じうる。日本人が海外で何らかの問題に巻き込まれた場合、政府や大使館はいかなる保護・支援をすべきと日本国民は考えているのだろうか。内閣府が発表した、外交に関する世論調査(※)の結果から確認していく。

海外で日本人が「交通事故、犯罪、病気、テロなどの事件や事故にあった」場合、該当者本人の自己責任とすべきか、それとも現地の大使館や日本国政府による積極的な保護・支援を行うべきなのか。多分にケースバイケース(状況に応じて最善策が判断される)に結論は収束されてしまう。昨今では国際情勢も複雑化すると共に、今件設問に該当する事案が相次ぎ発生し、また政治的な事案と絡めて注目され、複数の事案をすぐに想起できる人も少なくあるまい。

今調査では一般論、傾向・方針としてどのような姿勢を見せるべきか、個々回答者の主張の集約ではあるが、「自己責任優先、不可能な面は政府や大使館の支援が必要」とする意見がもっとも多く、直近では38.8%を占めた。

↑ 海外での日本人の保護や支援のあり方
↑ 海外での日本人の保護や支援のあり方

次いで多いのは「自己責任的な状況でも、政府・大使館が積極的に保護・支援をすべき」(「積極的に」であり、全面・最優先的にとの意味ではない)で25.4%、「どのような場合でも政府・大使館が保護や支援すべき」の22.2%が続く。合わせると半数近くの人が、積極的な政府・大使館のサポートを求めている。一方で「自己責任(政府・大使館の手助けは原則不可)」とする意見は10.6%と1割超え。

経年変化を見ると、2002年に大きく「どのような場合でも政府・大使館が保護や支援すべき」が跳ね上がり、「自己責任優先、不可能な面は政府や大使館の支援が必要」が落ち込む場面が見受けられる。これはタイミング的に2001年9月11日にアメリカで発生した「アメリカ同時多発テロ事件」とその後の混乱に寄るところが大きいと解釈できる。

ただし2002年の値の変動はイレギュラー的なもので、長期的には政府機関による積極保護介入派(赤系統色)がその介入度合いにおいてより強いものを求める動きが進み、今世紀に入ってからは漸増。他方、個々の責任を優先する(青系統色)動きはほぼ横ばいだが、消極的保護介入も合わせた自己責任優先派が漸減する流れを示していた。

ところが2015年分ではこの流れが大きく変わり、自己責任・判断が大きく増加、消極的保護介入を合わせた個々責任優先も増加し、個々の責任を優先する意見が増加している。他方、政府機関による積極保護介入派はいずれも回答値を減らしており、その前の調査となる2013年分からは傾向が変わってきた感はある。直近の2016年分では再び自己責任派が減り、介入サポート派が増加しているが、その戻し的動きは弱いものとなっている。

2016年の動向を詳細に

直近分の状況につき、個々の回答別、そして自己責任派と積極保護介入派とでそれぞれ該当する選択肢を合算する形で、男女・年齢階層別に実情を確認したのが次のグラフ(「その他」「分からない」は除いてあるため、数字は回答値の単純加算だが、グラフの面積は具体的回答者内の比率となる)。

↑ 海外での日本人の保護や支援のあり方(2016年、属性別)
↑ 海外での日本人の保護や支援のあり方(2016年、属性別)
↑ 海外での日本人の保護や支援のあり方(2016年、属性別)(回答二分計算)
↑ 海外での日本人の保護や支援のあり方(2016年、属性別)(回答二分計算)

全体的には自己責任派がわずかに優勢、男女別では男女でほぼ同率、年齢階層別では年上になるほど自己責任派が増加する傾向にある(ただし18歳から20代は自己責任派が多くなる)。

詳細区分では、強い自己責任を求める意見は男性、高齢層に多く、消極的保護介入を含めた自己責任派(弱い自己責任)との意見は属性別であまり変化が無い。他方、強度の弱い保護介入派は若年層が(18歳から20代除く)、強い保護介入派は高齢層と18歳から20代が高い値を示しており、30代以降における歳を経るに連れて生じる変化と、18歳から20代における特異性がよく出ている形となっている。強い自己責任派がやや少なめとはいえ、18歳から20代と、70歳以上の傾向が似ているのは興味深い話には違いない。

ここ数回における自己責任派回答の増加は、昨今の国際情勢、特にこの数年に渡り地中海・中東周辺で相次いで発生した事案に絡み、その実情や周囲の対応が少なからず影響しているものと考えられる。実際の判断はケースバイケースではあるが、判断材料となる実例で、一般市民の心境・意見は大きく変化すると見るべきなのだろう。

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※外交に関する世論調査

毎年実施・公開しているもので、直近分となる2016年分は2016年10月27日から11月6日にかけて、全国18歳以上の日本国籍を有する人の中から層化2段無作為抽出法によって選ばれた人に対し、調査員による個別面接聴取法によって行われた。有効回答数は1804人。男女比は848対956、世代構成比は10代28人・20代133人・30代206人・40代304人・50代281人・60代383人・70代以上469人。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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