Yahoo!ニュース

全豪OPレポート:18歳大坂なおみ、多くの注視を集めながらGS快勝デビュー

内田暁フリーランスライター
得意のフォアで、12本のウイナーを決めた大坂

○大坂なおみ 6-3,6-2 D・ベキッチ

グランドスラムデビュー戦の客席には、コーチの父親に加えて、エージェント会社のスタッフが4人、日本テニス協会のコーチ陣や関係者たちも顔を揃え、さらには日米の記者たちも詰め掛ける――それら外野の様子を見るだけでも、18歳の大坂なおみが、いかに多くの人びとの期待と注視を集めているかが伺えます。

試合最初のサービスが大きくラインを割ったのは、そのような熱気に起因する緊張感からだったでしょうか。しかしセカンドサービスを手堅く入れると、まずは相手のミスで大坂がポイント先行。その後もポイントを重ね、ラブゲームで幸先の良いスタートを切ります。

一方の対戦相手のベキッチは、やや粗さが目立つ立ち上がり。ベキッチのダブルフォールトにも助けられて大坂は、いきなりのブレークに成功しました。

このリードが、大坂の心を軽くしたでしょう。第3ゲームでは、フォールトになるも時速198キロに達する高速サービスに、客席から一斉に沸きおこる驚嘆の声。するとそんなファンのリアクションを面白く感じたか、大坂は噴き出しそうになりながらセカンドサービスを打ち、それがラインを逸れてダブルフォールトに。それでも「いつでもコート上で楽しみたい」というメンタリティの持ち主は、ミスを引きずることはありません。次のポイントでは強烈なフォアの逆クロスでウイナーを奪い、またまた客席から声援を引き出します。ファンをも味方につけた大坂が、6-3で第1セットを先取しました。

第2セットは、やや複雑な立ち上がりとなります。第1ゲームを7回のデュースの末にブレークし流れを得たかと思いきや、次のゲームでは、一か八かの強打を連発するベキッチに押されてブレークを許しました。

それでもどこか余力を感じさせるのは、淡々と落ち着いたプレーを見せる大坂の方。第3ゲームをラブゲームでキープすると、続くゲームでは、ベキッチの2連続ダブルフォールトに乗じてブレークします。これで、実質的な勝敗は決しました。以降は焦ることも攻め急ぐこともなく、時に守りを固めて相手のミスを誘い、リードを広げる18歳。最後はコーナーを狙いすましてウイナーを決め、グランドスラム初勝利を鮮やかに彩りました。

試合後の会見は、日本のみならずアメリカやイギリスの記者も顔を揃え、国際色豊かな雰囲気に彩られます。「日本語は勉強中だから、今回は英語だけでお願いね」とはにかむ18歳は、「こんなにたくさんの人が来るとは思わなかったわ」と、試合中の堂々たる姿から一転、少々戸惑いの色も見せました。

「会見と、1万人の観客の前でプレーするのだったら、どちらが緊張する?」と問われると、「意地悪な質問だわ。ノーコメント」と苦笑い。それでもすかさず「取材は嫌いじゃないのよ。ただ、時々文化の違いからか私のジョークが理解されないことがあるから……どの国の人が質問しているのか、まずはそれを見極めないと」と切り返して笑いを誘いました。

華やかに、そしてチャーミングにデビュー戦を勝利で飾ったシンデレラガールが、次に対戦するのは第18シードのスビトリーナ。大坂の頭には、どう戦うかのプランは既にあると言うものの、「ここで明かしたら、相手にばれちゃうじゃない。だから次の試合までは、戦術はトップシークレットよ」。

熱を帯びる外野の視線や声とは裏腹に、本人はどこまでも自然体で、次なるステージに歩みを進めます。

※テニス専門誌『スマッシュ』のfacebookから転載。連日、大会レポート等を掲載しています

フリーランスライター

編集プロダクション勤務を経て、2004年にフリーランスのライターに。ロサンゼルス在住時代に、テニスや総合格闘技、アメリカンフットボール等の取材を開始。2008年に帰国後はテニスを中心に取材し、テニス専門誌『スマッシュ』や、『スポーツナビ』『スポルティーバ』等のネット媒体に寄稿。その他、科学情報の取材/執筆も行う。近著に、錦織圭の幼少期から2015年全米OPまでの足跡をつづった『錦織圭 リターンゲーム:世界に挑む9387日の軌跡』(学研プラス)や、アスリートのパフォーマンスを神経科学(脳科学)の見地から分析する『勝てる脳、負ける脳 一流アスリートの脳内で起きていること』(集英社)がある。

内田暁の最近の記事