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大相撲・元明瀬山の井筒親方が6月に断髪式を開催 今後は「人間性で応援してもらえる力士を育てたい」

飯塚さきスポーツライター/相撲ライター
6月2日に断髪式を行う元明瀬山の井筒親方(写真:筆者撮影)

大きな体と温和なキャラクターで多くのファンに愛された、大相撲元幕内力士・明瀬山の井筒親方。角界内でも多くの親方・力士・裏方からいまも慕われている。そんな井筒親方が、6月2日(土)に両国国技館で断髪式を行う。引退の経緯に加え、埼玉栄高校、日本大学出身の後輩たちが集うという断髪式の構想について伺った。

「目一杯やった」悔いのない16年の土俵人生

――親方は、相撲の名門・埼玉栄高校、日本大学を卒業後に入門し、約16年間大相撲の土俵でご活躍されました。あらためて、引退の経緯を教えてください。

「最後はあごの骨折で2021年5月場所の途中から休場しました。2場所半休み、幕下まで番付を落として九州場所で復帰。もう一回関取に上がる気で戻ってきました。ちょうどコロナ禍だったんですが、復帰最初の取組ですごく大きな拍手をもらって、うれしくて思わず泣きそうになりました…。毎日の拍手が一日一日の力の源になって、勝ち越し続き。昨年5月場所前の稽古も調子がよくて、もう少しで関取に戻れると思っていました。が、結果は2勝5敗。いくら調子がよくても、年齢のこともあって通じない部分がある。ここが限界かなと思い、師匠に相談して。でも次の名古屋は地元で、家族は絶対にもうチケットを買っていると思ったので、7月場所を最後に、勝ち越しても負け越しても最後までやりたいと師匠に伝えました。というのも、最後の番付が幕下16枚目だったんです。たとえ全勝優勝しても、関取には上がれません。神様がここで終われと言っているのかな、とも考えました。最後は思い切りのいい相撲を取って終わりたい。ケガをしたときはまだまだ上がる気でいましたし、全力でしたが、38歳でここまできたら、最後は目一杯やろう、と。最後の一番に勝てば生涯戦績が勝ち越しだったんですが、負けて472勝473敗になってしまったので、そこは正直勝ちたかったんですけどね。土俵人生に悔いはありません。逆にちょっとやりすぎたかな(笑)。相撲自体は6歳から32年、大相撲は16年。目一杯やりました」

――そうだったのですね。引退して木瀬部屋の部屋付き親方となり、現在はどんな指導をされていますか。

「力士として強くしたいのは当たり前ですが、周りの人から『木瀬部屋の力士の礼儀がよかった』『親切にしてもらった』と言われたらうれしいので、相撲で強いだけじゃなくて、人間性で応援してもらえるような力士を育てたいですね。強いからといって肩で風を切って歩くんじゃなくて、周りに気を配れること。師匠も常に『気配り目配りを大切に』と言い、人と一緒にいて不愉快にならない接し方を大事にされています。技術面はほかの親方衆にお任せして、木瀬親方が恥をかかないように、返事やあいさつといった基本の大切さを伝えていきたいですね。誰がどこで見ているかわかりませんから、常に謙虚にいてほしいなと思います」

断髪式は、「後輩たちの協力も仰ぐ」

――断髪式の準備はどのように進んでいますか。

「実は、木瀬部屋から引退して親方になったのは自分が初めてで、次が徳勝龍なので、まだ前例がないんです。師匠は『主役はお前だから、好きなようにやりなさい。わからないことがあったら相談しなさい』と言ってくださっているので、したいことを相談しています。興行の『引退相撲』とは違い、現役の関取が全員来てくれるものではありませんから、『出てほしい力士がいたら、俺がその部屋の親方のところへ頭下げに行ってやる』と、師匠も言ってくださったので、本当に感謝しています。自分は(埼玉)栄、日大と後輩がたくさんいるので、後輩たちに協力してもらいたいと思っています」

大阪場所の会場で断髪式のチケットを売る井筒親方(写真:筆者撮影)
大阪場所の会場で断髪式のチケットを売る井筒親方(写真:筆者撮影)

――親方の優しさが本当に素敵ですね。断髪後の髪型は決まっていますか。

「いえ、友達の美容師さんのセンスに任せます。自分も当日のお楽しみです」

――では、どんな内容になるでしょうか。

「催し物は、太鼓、宇良の髪結い実演、自分の土俵入りと最後の一番など。あと、規模はまだわからないですが、木瀬部屋と埼玉栄出身の幕下力士でトーナメントをします。武隈親方(元大関・豪栄道)の断髪式で同じことをしたんですが、実は自分がお願いしたんです。そうすれば自分も出していただけると思ったから。それを今回、自分の断髪式でもみんなにお願いする予定です。そのほか、自分のグッズもいろいろ作っているので楽しみにしていてください。最初はお客さんを入れて開催できると思っていなかったんですが、できることを知って急遽チケットを売り出しました。最後の髷姿なので、ぜひ多くの人に見に来ていただけたらうれしいです」

明瀬山引退井筒襲名披露断髪式の詳細はこちら(公式X)

スポーツライター/相撲ライター

1989(平成元)年生まれ、さいたま市出身。早稲田大学国際教養学部卒業。ベースボール・マガジン社に勤務後、2018年に独立。フリーのスポーツライター・相撲ライターとして『相撲』(同社)、『Number Web』(文藝春秋)などで執筆中。2019年ラグビーワールドカップでは、アメリカ代表チーム通訳として1カ月間帯同した。著書に『日本で力士になるということ 外国出身力士の魂』、構成・インタビューを担当した横綱・照ノ富士の著書『奈落の底から見上げた明日』。

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