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「守備のポストシーズン」を象徴するMLB NLCS第1戦での「コリジョン」プレー

豊浦彰太郎Baseball Writer
「ポージー・ルール」が適用されたNLCS第1戦での問題プレー(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

2017年MLBポストシーズンも後半戦に入ろうとしている。日本時間18日には、NLCS第3戦にドジャースのダルビッシュ有が先発する。日本のファンにとっては、ダルビッシュと前田健太のドジャース勢、そしてヤンキースの田中将大の日本人投手の活躍がここまでの大きなニュースだろう。しかし、個人的には好守、拙守の両方で「守備」が明暗を分け注目を浴びていることが印象的だ。

ALDS第3戦で田中の好投をアシストしたアーロン・ジャッジの塀際での好捕や、NLDS最終戦でのカブスのハビアー・バエズがナショナルズのトレイ・ターナーを本塁で刺した好プレー、ALCS第2戦でヤンキースのサヨナラ負けを招いた本塁でのゲーリー・サンチェスの落球などがすぐに思い浮かぶ。

しかし、そんな「守備のポストシーズン」を象徴するのが、NLCS第1戦での本塁のクロスプレーだろう。本塁突入を狙うドジャースのチャーリー・カルバーソンに対するカブスの捕手ウィルソン・コントレラスのブロックが走塁妨害に当たるとして、生還が認められたのだ。2011年にバスター・ポージー(ジャイアンツ)が本塁での衝突で選手生命すら危ぶまれるほどの大けがを負ったことから生まれたいわゆる「ポージー・ルール」の適用だ。ただし、テレビで観戦された多くの方が感じられただろうが、「この程度でもダメか」というほどの微妙なブロックだった。ぼくもNHKで観ていたのだが、解説の斉藤隆氏は「これでも走塁妨害が適用されるようであれば、本塁でのクロスプレーにプロならではの技術が介在する余地はなくなってしまう。全てはタイミングのみで決してしまうことになりはしないか」と嘆いていた。

斉藤氏の意見はいかにも現場出身者ならではの専門性が感じられ感銘を受けたのだが、木を見て森を見ない視界の狭さも同時に感じた。

もちろん、本塁でのクロスプレーは走者と捕手の技術と体力と勇気のぶつかり合いで最高にエキサイティングだ。これはとても大事なことだ。しかし、同時にいやそれ以上に大事なのが、選手が致命的な負傷を追わないことだ。MLBならではの迫力あふれるプレーと安全管理、この両方を極めて高い次元で両立することはほぼ不可能で、多くの議論の末MLBと選手組合は、(ある意味では当然のことだが)選手の安全をより重要として支持したのだ。斉藤氏の考えやこのプレーに怒り狂ったカブスのジョー・マッドン監督の心理も分からぬではないが、ぼくたちはカルバーソンとコントレラスがこのプレーで負傷することなく、元気に第3戦を迎えることができることに、ポージー・ルールの成果を見出すべきなのだろう。

Baseball Writer

福岡県出身で、少年時代は太平洋クラブ~クラウンライターのファン。1971年のオリオールズ来日以来のMLBマニアで、本業の合間を縫って北米48球場を訪れた。北京、台北、台中、シドニーでもメジャーを観戦。近年は渡米時に球場跡地や野球博物館巡りにも精を出す。『SLUGGER』『J SPORTS』『まぐまぐ』のポータルサイト『mine』でも執筆中で、03-08年はスカパー!で、16年からはDAZNでMLB中継の解説を担当。著書に『ビジネスマンの視点で見たMLBとNPB』(彩流社)

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