MWC報道の大いなる不満
2月22日からスペインのバルセロナでMWC(Mobile World Congress)が始まった。しかし、新聞やネットから出てくる情報は、つまらないスマホの話ばかり。これまで何度かMWCには参加したことから考えてみると、MWCのモバイルビジネスの正確な姿が伝わってこない。開催前は、今回の目玉は、第5世代のモバイル通信、すなわち5Gだと言われていたが、実際はどうだったのか。
日本のメディアの情報はスマホの記事しか載せていない。実際に参加してみると、本来の通信オペレータに加え、クルマメーカーあり、半導体メーカーあり、部品・材料メーカーあり、クラウドサービスベンダーあり、そして通信機器メーカーがある。通信機器メーカーの中でもエリクソンやノキアネットワークス、華為技術などが5Gをはじめ様々な通信技術を見せてきた。スマホの展示は人目をひくがメジャーではない。
それでもほとんどの日本のメディアはスマホやタブレット、ガラケー等の話ばかりを報道していた。主催者は、グーグルやfacebook、AppleなどのOTT(Over-the-top)の脅威に対するオペレータはどう対応していくべきか、といった内容を真剣に議論するとか、TD-LTEとFD-LTEの対応や、モバイルの企業内での使用によるBYOD(Bring your own device)の問題などの議論や、モバイルからクラウドへのセキュリティ問題も活発であった。
今年は日本に留まっているため、残念ながら世界の動きをじかに見ることはできない。それでも海外情報を見ていると、日本のメディアの報道とは全く違う内容が多い。IoTの標準規格を決めるためにMicrosoftとIntel、Cisco、Electrolux、GE、Qualcomm、Samsung、ARRIS、CableLabsがOCF(Open Connectivity Foundation)を設立したというニュースが載っている。
インターネットとつながるIoTがらみでは、NB(狭帯域)-IoTのパネルディスカッションがあったことを米国の通信メディアが報じている。低消費電力で低価格のIoTはデータレートが少ないながら、大量に使われる応用に向いたセンサデバイスとなる。LTEを使っても遅いデータレートで十分なセンサノードなどの用途ではNB-IoTが向く。
また、FacebookのCEOである、マーク・ザッカーバーグ氏がサムスンの記者発表の場に登場して、これからはVR(バーチャルリアリティ)がソーシャルのプラットフォームになる、と述べたことも報じられている。サムスンのVRヘッドセットを説明しただけではなく、Facebookも何らかのVRを使って、異次元のエクスペリエンスに進出してくるようだ。
面白い用途では、インテルがAT&TのLTE通信を使ってドローンのような無人飛行機(UAV)に利用しようという提案を行っている。LTEだと通信範囲が広いためドローンの用途が大きく広がる可能性がある。両者は共同で、UAV向けのLTEの仕様を決めテストするためにコラボするという。インテルのLTEモデム(かつてインフィニオンから買収した部門)とAT&TのLTEネットワークを擦り合わせて、UAVからビデオストリーミングを見せるというデモを行ったという。LTEネットワークにドローンをつないだ時の問題点を引き出し、安全面やセキュリティ上の問題、リアルタイム通信の可能性、有人飛行機からの干渉など将来のドローンをLTEネットワークで飛ばすための検討が始まったといえる。
以上、本日ちら見しただけでもスマホ以外のトピックスが山のようにある。しかし、日経新聞をはじめメディアは、どうでもよい日本企業のスマホを相変わらず紹介しているだけだ。このままでは世界からますます遅れ、遠ざかってしまう。せめてインテルやクアルコム、エリクソンなど有名どころのCEOの基調講演くらいは聴いて報道してほしい。日本のスマホを報じても日本の業界人にとって価値ある情報なのか、もっと真剣に考えてほしい。
(2016/02/23)