日銀は本気で日本の国債市場の機能改善を図ろうとしているのか
日本銀行は、国債市場の機能改善のために買い入れオペなどで追加措置を講じる必要は、現時点ではないとみている。事情に詳しい複数の関係者が語った。関係者によれば、日銀は3月に実施した長期金利(10年物国債金利)の変動幅の明確化後、金利に大きな動きがないのは外部環境の変化が乏しいためと分析。足元の金利低下も米金利動向と整合的で、変動幅の明確化に伴う市場機能の改善効果を判断するのは時期尚早と考えている(15日付ブルームバーグ)。
日銀は3月19日の金融政策決定会合で、点検を行った結果として、金融政策の修正を行った。その修正では、金融仲介機能への影響に配慮しつつ、機動的に長短金利の引き下げを行うため、短期政策金利に連動する貸出促進付利制度を創設するとあった。
そして、イールドカーブ・コントロールについて、柔軟な運営を行うため、長期金利の変動幅は±0.25%程度であることを明確化した。同時に、必要な場合に強力に金利の上限を画すため、「連続指値オペ制度」を導入した。
この点検と政策修正の意図が良くわからなかった。3月の決定会合前に、雨宮副総裁は、イールドカーブ・コントロールの導入後、多くの指標が、国債市場の機能度が低下したことを示していると指摘し、長期金利の変動幅拡大を示唆した。
これに対して黒田総裁は長期金利の変動幅について「私自身は、変動の幅を大きく拡大することが必要とも適当とも思っていない」と述べていた。
少しでも国債市場の機能改善を行いたいのであれば、長期金利の変動幅は±0.30%程度として、少しでもレンジを拡げる必要はあった。しかし、変動幅は±0.25%程度に抑えられた、さらに、利下げ余地を拡げ、必要な場合に強力に金利の上限を画すため、「連続指値オペ制度」まで導入したのである。これは長期金利が跳ね上がるのを抑える強力な手段と捉えられた。
日銀としては、市場機能の回復を意識していたはずが、結果として出てきたものは、予想よりも狭いレンジの変動幅と連続指値オペであった。
長期金利コントロールの副作用を抑えるためには、少なくとも10年債利回りのマイナス化は避けたいというのが市場参加者と日銀の意向であろう。しかし、それとともに上昇も押さえ付けるとの意向ともみえる連続指値オペなど出されては動きようがなくなる。
日銀は点検と修正の結果として、長期金利のレンジを拡げるのではなく、むしろ狭いレンジに長期金利を押さえ付けたいようにすら思われる。結果として債券市場の機能は停滞するばかりともなりかねない。