全豪Jr男子シングルスで優勝した坂本怜が「盛田正明テニス・ファンド」に入るためにとった意外な行動とは
ジュニアテニスプレーヤー・坂本怜(ITFジュニアランキング7位、大会時)が、オーストラリアンオープン・ジュニア男子シングルスで見事初優勝を飾った。「この大会で優勝できて、本当に嬉しい」と語った坂本は、17歳で自身初のグランドスラムジュニアタイトル獲得となった。
日本男子ジュニア選手によるグランドスラムジュニアでの優勝は、2019年ウインブルドンのジュニア男子シングルスで優勝した望月慎太郎以来、2人目となる。オーストラリアンオープン・ジュニアの部での優勝は初の快挙だ。
坂本は、錦織圭や大坂なおみが、ワールドプロテニスツアーやテニスの4大メジャーであるグランドスラムで活躍していた姿を見て、刺激を受けてきた。今回の全豪ジュニアでの優勝によって、二人に近づけるきっかけになるのではないかと考え、「大きい舞台で、こういう(厳しい)試合を勝った。自分の中で、“やる時はやる男”感がついた」と自信を深める。
名古屋出身の坂本が、テニスを始めたのは6歳頃、家から自転車で5分ぐらいのテニスクラブで楽しみながら始めた。当時は、テニスのほかに水泳などいろいろなスポーツもやっていたという。両親からテニスラケットをプレゼントされたのがきっかけだった。
「ラケットの声を聞いた」という坂本は、当時のことを次のように振り返る
ラケット:「こんにちは」
坂本:「名前は何て言うの?」
ラケット:「EZONE DRです(ヨネックステニスラケットの商品名)」
坂本:「俺は、怜というんだ」
ラケット:「知っているよ」
このように坂本の感性には感じられたという。
その後、「盛田正明テニス・ファンド」(以下、盛田ファンド)の存在を知っていた坂本は、2021年に盛田ファンドへ自ら手紙を書いた。書類選考を通過して、日本で開催された選考会での練習マッチを行い、それをクリアすると、渡米してIMGアカデミーで2週間過ごし、アメリカのジュニア大会にも出場した。
盛田ファンドは、元ソニー副社長で、元日本テニス協会会長だった盛田正明氏が、70歳でソニーグループ退職後、私財を投じて作った奨学金制度で、プロテニスプレーヤーを志すジュニアプレーヤーの海外テニス留学を経済的にサポートする。盛田ファンドの卒業生には、プロになって活躍している錦織圭、内山靖崇、西岡良仁、望月慎太郎らがいる。
選考会に合格した坂本は、プロになるという思いを秘めながら、2022年2月から、「盛田正明テニス・ファンド」の奨学金制度のサポートを受けて、アメリカ・フロリダにあるIMGアカデミーでの海外テニス留学を開始して、テニスの腕を磨いた。錦織と一緒に練習をする機会もあったという。
全豪ジュニアでの優勝によって、坂本のITFジュニアランキングは7位から3位へ上昇した。また、男子国別対抗戦デビスカップの日本代表にも初めて選出された。
そして、優勝会見では、「プロになります」と語気を強めた。おそらく2024年に、プロとしての体制が整うタイミングで坂本のプロ転向宣言は行われるだろう。
人と違う個性的なコメントをする坂本。カメラを向けると、すぐに変顔をしたり、予想外のポーズをしたりする、従来の枠に収まりきらないようなユニークなキャラクターをしている。身長は、自己申告によれば195cmで日本人離れした恵まれた体格をしており、まだ身長が伸びるかもしれない。ただ、体がまだ細いので、プロに向けてフィジカル強化は必須だ。それに伴って、リーチを活かしたショットが力強さを増していくだろう。
いろいろな意味でスケールの大きさを感じさせる坂本だが、ユニークな言動や高身長だけでなく、プロテニスプレーヤーとして本当の意味でスケールの大きいところを、近い将来にテニスのプレーで見せてくれることを楽しみにしたい。