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18歳の若きクリエイターのはたらく価値観、未来にかける野望とは?

佐藤裕はたらクリエイティブディレクター
18歳の若きクリエイターibuchang(写真:本人提供)

2019年10月に台湾でまだ18歳の若きクリエイターが個展を開いた。私がここ数年で出会った学生の中でも圧倒的な衝撃を覚えたのがその18歳の若きクリエイターの“ibuchang”だ。

日本人離れした感性が人の心を引き付ける

私が“ibuchang”の作品に出会ったのは夏前に友人から紹介されたビジネスマンの携帯に貼られていた1枚のシールだった。インパクトがあって親しみやすいキャラクターに一目ぼれ状態で誰の作品かと聞いて驚いた記憶がある。

18歳でグローバルの感性を持ち合わせ、且つすでにビジネスの世界に踏み込んでいるというから衝撃だった。

10月に台湾で開催されたibuchangの個展(写真:本人提供)
10月に台湾で開催されたibuchangの個展(写真:本人提供)

わずか半年で注目される?

“ibuchang”が注目されはじめてオファーが殺到するまでにはわずか半年しか時間が経過していない。

2019年5月 カジフェス(カジカジの誌面そのままポップアップしたマーケットイベント)にて「似顔絵屋さん」に挑戦

2019年7月 9090とのコラボ企画のTシャツが即完売

2019年8月 “ibuchang”初のポップアップ開催

2019年8月 映画elangelとのコラボTシャツ制作

2019年8月 SIWの公式キャラクター制作

2019年9月 Culpoolとのポップアップ

2019年10月 9090とのコラボ企画第二弾

2019年10月 台湾個展開催

2019年11月 HOTEL SHEにて作品展示/ローンチパーティ

2019年11月 カジフェス出展

2019年11月 東京のイベント出展(東京夜市)

ibuchangが作った11月23日に開催される東京夜市のフライヤー(写真:本人提供)
ibuchangが作った11月23日に開催される東京夜市のフライヤー(写真:本人提供)

何をやりたいかわからず進路に迷う日々

そもそも、どうやって若きクリエイターが“ibuchang”が誕生したのか?

普通の高校生だった“ibuchang”は親から「大学へは行きなさい」という意味を捉えきれず、そもそも自分は何がしたいのか分からないのに大学に行くべきかを悩んでいました。自分の進路についていよいよ向き合わなければいけない時期になっても迷いは続き苦しかった思い出があります。当然大学選択も出来ませんでした。

自分には何が出来るのか?

幼少期から絵が好きで趣味程度で描いてましたが仕事にするということを考たことはなかったです。自分の進路選択に悩んでいた時に「何がしたいのか?」を探し続けましたが見つかりませんでした。ただ、自分には「何が出来るのか?」と考えたことで転機が訪れました。

たまたま、大ファンだった「Hi-STANDARD」が活動再開した時のアルバムのジャケットのイラストを見て、自分もこんな絵が描きたい!と思えました。

そして、インスタで良く見ていたグラフィックデザイナーのVERDYさんが実はネットの世界とリアルな世界の融合でお金を稼げていることを知りました。

さらには、自分がバイトしていた居酒屋で大阪芸術大学の存在を聞いて、自分の未来の可能性をそこに感じました。

デザイナーになりたい!の一言で人生が動き出した

進路が決まってから遊びに行ったポップアップイベントで出会った大人に「デザイナーになりたい!」と言ってみたら似顔絵やTシャツコラボの機会を頂けて今に至ります。自分の未来と向き合って意識していたから偶然のきっかけで方向性が見えて、想いを口にしてチャンスを得れたように思います。

大阪弁天町にあるHOTEL SHE内で展示されているibuchangの作品の数々(写真:本人提供)
大阪弁天町にあるHOTEL SHE内で展示されているibuchangの作品の数々(写真:本人提供)

仕事をしている時はとにかく楽しい

半年で急激にオファーが増えて、とにかく忙しくなった“ibuchang”の今について聞いてみた。

今は、沢山のお仕事を頂けて純粋にうれしいです。そして楽しい。

仕事をすることで自分の出来ないことが吹き彫りになってきていて、そのリカバリープランもイメージ出来ています。

だから仕事に意欲出ています。

若い世代と大人世代の繋ぎになりたい

まだ18歳ながら多くのオファーが舞い込み、充実した日々を過ごす若きクリエイターは未来をどう捉えているのか?

すでにアルバイトを辞めて大学も通信に切り替えて勝負する土台を整えた“ibuchang”の挑戦とは?

今回台湾で個展を開かせてもらった際に、自分は全く英語が出来ないので海外でのコミュニケーションに不安を持っていました。現地ではやっぱり英語が使えないことで不便を感じることはありましたが、イラストは違ったのです。私の絵で言語を超えたコミュニケーションが出来ることに気づきました。

これは大きな発見で、将来クリエイターとして海外でもお仕事をしたいと思えました。今はネットの中で海外と繋がれるのでポップアップとのバランスを上手く作れば大きなビジネスチャンスになると思います。絵は言語を超えた大きな可能性を持っていると思います。

そして、若い世代と大人の世代の繋ぎになるようなことも挑戦したいです。若い世代が認知していない商品と私の絵がコラボすることで若い世代の認知度が高まったりすることもイメージ出来ます。

まだスタートしたばかりのクリエイターとしてのお仕事ですが可能性を広げていきたいと考えています。

HOTEL SHEとのコラボ企画のフライヤーをibuchang本人が作成(写真:本人提供)
HOTEL SHEとのコラボ企画のフライヤーをibuchang本人が作成(写真:本人提供)

キャリアデザインの変化

日本の就職活動は残念ながら古い文化を未だに引継ぎ、毎年そこに学生達は巻き込まれている。結果的にリアリティショックを80%近くも感じているという事実がある。

今回“ibuchang”を取材する中で、そんな日本の古い就職活動の文化を変えていく兆しのようなものを感じた。

それは、周囲に流されずに自分の未来は自分で考え抜いて決めていくこと。そして、やりたいことではなくて、何が出来るかを考えることで見える景色が変わること。

私の学生応援活動で伝えている内容をそのまま体現している“ibuchang”を見て、これからの若い方の文化変革の可能性が見えてきたように思う。

引き続き、若い世代のはたらく価値観、挑戦に注目していこうと思う。

はたらくを楽しもう。

【参考】

リアリティショック

●“ibuchang”と会える?イベント情報

2019年11月16日HOTEL SHEにてローンチパーティ

2019年11月17日カジフェス出展

2019年11月23日 東京のイベント出展(東京夜市)

はたらクリエイティブディレクター

はたらクリエイティブディレクター パーソルホールディングス|グループ新卒採用統括責任者、キャリア教育支援プロジェクトCAMP|キャプテン、ベネッセi-キャリア|特任研究員、パーソル総合研究所|客員研究員、関西学院大学|フェロー、名城大学|「Bridge」スーパーバイザー、SVOLTA|代表取締役社長、国際教育プログラムCAMPUS Asia Program|外部評価委員などを歴任。現在は成城大学|外部評価委員、iU情報経営イノベーション専門職大学|客員教授、デジタルハリウッド大学|客員教員などを務める。 ※2019年にはハーバード大学にて特別講義を実施。新刊「新しい就活」(河出書房新社)

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