全米オープン:勝利への原動力は、ファンとの一体感と家族への想い――大坂なおみが3回戦へ
全米OP2回戦 ○大坂なおみ 64 76(3) 段瑩瑩●
まるで相手をノックアウトしたボクサーのように、勝利の瞬間、大坂なおみは左手を高々と突き上げました。
第1セットを6-4で競り勝ち、第2セットは4-0と大きくリードを広げながらも、相手の追い上げを許し縺れ込んだタイブレーク。
「セットを取れると思って安心してしまった。すると相手は一か八かのリスキーなショットを打ってきたので、圧倒された」。追いつかれた場面を振り返りつつ、大坂はいたずらっぽい笑みを浮かべて続けました。
「ドラマチックな展開にしちゃったわ」。
その自らが呼び込んでしまった「ドラマ」を、大坂はどこかで楽しんでいるかのようでもありました。試合終盤、いつも以上にガッツポーズや「カモン!」の叫び声が飛びだしたのは、「すごく勝ちたかった。たくさんの人が応援してくれていたので、彼らをがっかりさせたくなかった」から。旧グランドスタンドの客席には、日本人にアメリカ人、そして中国人らが入り混じり、「がんばれ!」「C'mon!」「加油(チャーヨ)」の応援の声が入り乱れます。もちろん、全てが自分に向けられたものではない。それでも相手への声援も含め、大坂は「ファンと一体になれている。観客たちが、試合に入り込んでいる」と高揚感を覚えていました。
さらには大坂が“つながり”を覚えていたのは、フロリダにいる姉と母。
「もし今日勝てば、お姉さんとお母さんが来てくれる」。
そのことが、タイブレークを戦う上での最大のモチベーションになっていたことを、彼女は笑顔で明かしました。
「グランドスラムの雰囲気が大好き。ここでプレーするのは楽しい!」
そう感じるほどに力をくれる「ここ」ニューヨークは、大坂が幼い頃に住んだ町。そして全米オープンの会場は、父や姉と最初にテニスボールを打った“始まりの地”でもあります。
その、幼少期を過ごした街との連帯を感じる大坂が、3回戦で相対するのは、第8シードのマディソン・キーズ。「サービスが良く、ハードヒットする選手」と評するキーズとの対戦に向け、大坂は「ここまでの2試合、ハードヒッターと戦えて良かった。よい準備になった」と、勝負師の顔を見せます。
地元アメリカの人気選手であるキーズとの一戦は、過去2試合以上に大きなコートに組まれるのは間違いないでしょう。母と姉も見守る中、キャリア最大の「観客との一体感」に身を浸す戦いが、18歳のシンデレラガールを待っています。
※テニス専門誌『スマッシュ』のfacebookより転載。連日、大会レポートやテニスの最新情報を発信中