謎めいた2ピースバンドYABI×YABIとは何者か!? 中毒性高い脱力感&鋭いクリエイティヴィティー
サブスク時代、Spotifyなどのプレイリストによって“ストリーミングサービスは体系化された聴ける音楽カタログ”となった。人類の歴史上、こんなにたくさんの音楽を自由に楽しめる時代はないだろう。
結果、旧来のジャンルに囚われない楽曲がフィーチャーされる時代がやってきた。ジャンルを飛び越えることで複数プレイリストへのリストインが可能となるからだ。海外でヒップホップっぽいロックバンドやオルタナロックっぽいラッパー、ジャズとポップスのフュージョン、ロックなのに○○○っぽい、アイドルなのに○○○っぽいなど、ギャップ感がフックとなりプレイリスト・マーケティングに有効なのだ。
世界最大のストリーミングサービスSpotifyを見ているとジャンルに囚われないプレイリストが増えている。たとえば『hyperpop』というデジタライズされたアッパー感強い曲をキュレーションしたプレイリストでは国やジャンルを飛び越え、様々な作品が並んでいる。海外作成のプレイリストながらきゃりーぱみゅぱみゅ、4s4ki、Nyaronsなど国内アーティストがリストインされやすい傾向もある。今後もこの傾向は続いていくことだろう。
そんななか、日本で注目すべき表現者がいる。“チャンポンミュージック”を打ち出すYABI×YABIだ。Jugong(Gt.Vo)とNagong(Ba.Vo)による2ピースバンド。既存のJ-POP像をぶち壊す、様々な要素がごちゃ混ぜにされたキャッチーかつ実験的な音楽空間。メンバーがジュゴン? 人魚!?(いや、足があった! ロブスター!?ないでたちの写真までも……)という設定など、情報が渋滞している感はあるが、電子ポップを軸とした中毒性あるフレーズの応酬とブレインウォッシュしてくれる独特の言語センスの自由度の高さに心奪われた。
前述したプレイリスト『hyperpop』で人気の、シカゴ発、異形のポップ・ラップ・デュオ100gecsなど、世界同時多発的にごった煮感&実験センスに富んだ表現者に注目が集まっている昨今。業界の仕組みやメディアが成熟しすぎて形骸化したJ-POPシーンを、YABI×YABIはかき回してくれる存在となるかもしれない。
ディスコグラフィーを振り返ろう。YABI×YABIのデビュー配信は、耳に心地よいリズムと思わず口ずさみたくなるフレーズがクセになるアッパーチューン、2021年10月20日リリース「パリロンドン」からだった。無国籍かつ多国籍な!? 遊び心でいっぱいなクリエイティヴがインパクト強い敢えてチープなミュージックビデオ。中盤以降からビートは加速してギター&ベース・プレイが絵的に強調されるなどフリーダムな展開だ。
第2弾「Tong Ching Kahn」(2021年11月17日リリース)では、おもちゃ箱をひっくり返したようなサウンドかつ、まるで童謡やお伽話のようにストーリーテリングされた展開から、急遽まさかのキングクリムゾンばりのおどろおどろしいプログレッシブ・ロックをかます恐れを知らない音楽センスの爆裂さ。そんなヴィジュアルを、ストップモーションな人形劇で表現する凝ったミュージックビデオも必見だ。
さらに、第3弾「トマトマシュマロメロン」(2021年12月22日リリース)では、“羊を何匹数えても眠れない時の詩が少し大人になって帰ってきた”をテーマに、童謡や民謡を再構築する音楽家集団キヲク座の五味俊也をサポートドラマーに迎えてセッション。ミュージックビデオもこだわりながら、シュールかつインパクトある映像美にをみせている。耳に残る歌詞フレーズはもちろん、演奏力でも聴かせてくれる洒落たポップワールドの摩訶不思議さが新機軸だ。
2022年、クリエイティヴィティー高い謎めいた存在感を解き放ちながらも、“チャンポンミュージック”をキーワードに脱力感でいっぱい、時折鋭いカウンターパンチを浴びせる中毒性高い新しい才能、YABI×YABIに注目をしたい。
YABI×YABI オフィシャルホームページ
https://www.a-sketch.com/artist/yabixyabi/
YABI×YABI オフィシャルツイッター
https://twitter.com/YABI_YABI_
YABI×YABI オフィシャルインスタグラム