レビュー:謎めいたニューカマー名誉伝説、不安という葛藤を音楽の魔法でクリアしていく「ナビゲーター」
●日常や人生のドラマになぞらえ、ポップにコミカルかつ不安や迷いといった葛藤を、芳醇な音楽の魔法によってドライブ=クリアしていく
5ピースバンド、名誉伝説の登場は衝撃だった。爽快かつメロディアスなサウンドとともに、儚さと優しさを醸し出す人懐っこい歌声。人生の機微を深掘りする、日常生活に寄り添う歌詞世界によって繰り広げられていく朝ドラのような物語展開。
名誉伝説は、これまで1年をかけて7曲の配信シングルを完成度の高いミュージックビデオとともに大切に発表してきた。アンテナを張ったミュージックラバーに好評だったその存在は、最新曲「ナビゲーター」によって、お茶の間で発見される出番がやってきたのかもしれない。
ど真ん中のポップソングの完成なのだ。
本作「ナビゲーター」は、カーナビを、日常や人生のドラマになぞらえ、ポップにコミカルかつ不安や迷いといった葛藤を、芳醇な音楽の魔法によってドライブ=クリアしていく。お互いの目的地を“僕は君に設定”、“君は僕に設定”するという心の距離感をテーマに、ほんわかした歌声で“案内ルートは変更できるんだよ”など。一度聴いたらトリコとなる、唯一無二、中毒性高い名誉伝説ならではの宝物のような音楽体験となった。
●令和ポップスシーンに伝説を刻む新しい才能
名誉伝説が奏でるポップミュージックは懐かしくて新しい。現代の価値観へとアップデートされた、琴線を刺激する甘酸っぱい短編小説のような聴後感が感情をあたたかくしてくれる。
一言で表すのならば文学ポップ? いや、小難しいワケではなく、しかしながら通りいっぺんではないメタファーを駆使した考察しがいのあるストーリーテリング。それは、愛情と愛嬌を感じるポップネスの凄みだ。うん、やっぱりなんか今どきの朝ドラっぽいかもしれない。
名誉伝説とは、インディペンデントなニューカマーと思いきや、こたに(Vo)はソロとしても活躍するシンガーソングライター。ひだまりユトリ(Ba)、うたかず(Key)、大波メロディ(Dr)。そして、天才的センスで作詞作曲を手がけるけっさく(Gt)による5人組バンドであることも見逃せない。
令和ポップスシーンに伝説を刻む新しい才能、それが名誉伝説なのである。