日本でも揺れるAI技術。イラスト系サービスが続々とAI生成作品の販売や支援募集を停止へ
日本国内でイラストレーター向けに作品の販売や支援募集を行っている複数のサービスが、画像生成AIによるイラストを使った作品の取り扱いを停止することを先週、続々と発表しました。
AIユーザーの「pixivで学習してる」発言から非公開運動に
一連の流れは、5月6日にとある画像生成AIユーザーが『Twitter』に投稿した「pixivからイラストを調達している」という発言と、それに対して「イラスト投稿サービス『pixiv』はAIを取り締まる気がない」とする批判が始まりです。
前者の投稿はAI学習への批判から、後者は内容に誤りがあったためすでにどちらもアカウントごと削除してしまっていますが(前者はID変更したという話もあります)、これらの投稿が拡散したことからイラストレーターのなかで「pixivに投稿しているイラストを非公開にしよう」という活動が広がりました。
こうしたイラストレーター側の問題提起や批判を受けて『pixiv』は5月9日、AI生成作品に関連するガイドラインの改定を予定していることを発表。
翌10日にはイラストレーターに金銭を支援できるファンコミュニティサービス『FANBOX』にて、AI生成作品の取り扱いを一時停止することも発表し、続けて12日には有償でイラスト執筆を依頼できる『pixivリクエスト』においてもAI生成作品の取り扱いを当面のあいだ禁止することを発表しました。
要するにAI生成作品はこれまで通り投稿はできるものの、そうした作品を使って金銭を得ることができない状況となりました。
DLsite、ファンティア、とらのあなもAI生成作品を締め出し
そしてこの流れは『pixiv』だけにとどまらず、『pixiv』が『FANBOX』での取り扱い停止を発表した同日、後を追うように同様の支援サービスを提供している『ファンティア』が取り扱い一時停止を発表。
翌11日には二次元総合ダウンロードショップ『DLsite』がAI生成作品を利用した漫画、CGイラスト、動画、素材集の販売の取り扱いを停止(ノベル、ゲームは継続)します。
そして12日には同人誌の通信販売サイト『とらのあな』が電子書籍におけるAI作品の登録受付を一時停止することを発表するなど、多くのイラスト系サービスがAI生成作品の取り扱いを一時停止する事態となりました。
AIイラスト投稿サービスが有償支援機能の提供予定を発表
これにより画像生成AIを利用して金銭を得ているユーザーの受け皿がなくなるかと思われましたが、一連の発表後に新興のAIイラスト投稿サービスが支援サービスの提供予定を発表。
5月10日に『AIピクターズ』が「決済処理がうまくできそうでしたらFANBOXのような機能も搭載させたい」、翌11日には『chichi-pui(ちちぷい)』が「有償支援機能を提供予定」とTwitterで発表しました。
ただし、いずれも「提供予定」であり、画像生成AIユーザーがすぐに乗り換えられるわけではありません。
また、AI生成作品で満足している読者がどれほどついてきてくれるのかといった問題もあり、「AIで簡単に稼ぐ」ことはかなり難しくなったと言えるでしょう。
画像生成AIはまだ過渡期
ここまで紹介してきたように、先週は画像生成AIの出口となる環境が一気に動きました。
簡単に言うと「AI生成のイラストではお金を稼げなくなった」だけであり、『pixiv』も投稿自体は引き続き受け入れを表明しているため画像生成AIユーザーの活動そのものは継続できます。
また、取り扱い停止を発表した各サービスも「一時停止」であり、今後、取り扱いを再開する可能性があります。
とは言え、今回でイラストレーターと画像生成AIユーザー間のトラブルとなりやすい「人の画風でメシを食う」問題が一時的には解決したと見られます。
今後、日本における画像生成AIの環境がどのように変化していくのか、引き続き注目していきたいと思います。
2023年5月15日21時35分修正
記事タイトルについて「反AIはミスリーディングではないか?」との指摘があり、たしかに単純化しすぎているためタイトルを修正しました。
また、“非公開運動のきっかけ”としては拡散したツイートのきっかけとなったAIユーザーの発言の方がそう言えるのではないか、という指摘もあったため、こちらも文章を加筆修正しました。
そのほか「きっかけとなった『とあるユーザーの発言は誤り』という指摘はデマだ」というご意見もありましたが、投稿にあった「pixivはスクレイピングを取り締まる気はない」といった主旨はpixivの投稿からも確認できるように誤りであるため、そちらは修正を行っていません。