【2気筒エンジンの魅力】ブーム再燃、最近スポーツツインが楽しい!
2気筒、ツインエンジンでもいろいろなタイプがある
最近乗っていいなぁ、と思うモデルに2気筒、つまりツインエンジンが多いとふと気づいた。ツインとは2気筒エンジン搭載車のこと。一時期、絶対性能を追い求めたスポーツモデルはほとんどが4気筒モデルで占められていたが、最近ちょっと様相が変わってきているようだ。
先日試乗したホンダの最新モデル、CRF1000Lアフリカツインは先代のVツインをあらため並列2気筒となったが、土をかいて進む独特の鼓動感が気持良かったし、続いて「ツインリンクもてぎ」のレーシングコースで開催されたMFJ主催の250cc一気乗りでもツインエンジンを搭載するスポーツモデルの走りは光っていた。車体の軽さではシングルに一歩及ばないが、同じ排気量ならばそれを補って余りあるパワーが稼ぎ出せるのがツインのいいところだ。
スクランブラー現象を巻き起こし、昨年から大ヒットまい進中のドゥカティもすべてエンジンはLツインだし、今年に入って新型を続々リリースしているトライアンフのボンネビルシリーズも伝統的にバーチカルツインと呼ばれる並列2気筒である。
国産車でも多く用いられる並列2気筒と、輸入車に多い横置きVやモトグッツィが頑なに守り続ける縦置きV。そしてBMWに象徴される水平対向など同じ2気筒でもいろいろなタイプがある。かつてはカワサキのKRシリーズのように前後にシリンダーを並べたタンデムツインなる変わり者も存在したと思ったら、海外のハンドメイドモデルにはその上をいく直立対向などの珍しいレイアウトもあるらしい。
ストローク量や爆発間隔、バランサーなどでさらに変化する「フィーリング」
こうした基本的なシリンダーレイアウト以外にも、ボアとストロークの関係、爆発間隔を決めるクランク角度やバランサーの有り無しによってもだいぶフィーリングは異なってくる。
ツインらしさとひと口に言っても、たとえば、同じ並列2気筒でも360度クランクは等間隔爆発なのでスムーズさが特徴だし、270度などの位相クランクはVツインのような鼓動感が魅力。ピストンの運動バランスで言うと180度が優れるなど、それぞれ持ち味がある。
シリンダーの内径(ボア)より行程(ストローク)が長いタイプをロングストローク型と呼ぶが、高回転パワーを稼ぎ出すためにはショートストロークが有利なため、最近のスポーツツインはどんどんショート化する傾向があるが、一方で味わい深さや”ツインらしさ”を求めてあえてロングストローク設計とした新型ボンネビルの例もある。シンプルに見えて奥が深いのがツインエンジンなのだ。
人間の感性に合った「自然に付き合える」エンジン
ツインエンジンは4気筒に比べてシンプルな分、一般的に軽量コンパクトに作れるし、開発コストも少なくて済むため、中排気量以下では世界的に主流になっている。直4エンジンが十八番のホンダやカワサキなどの国産勢もかつて、80年代パワー競争に入る前の400ccクラス以下はツインばかりだったし、実際に軽量な車体とハンドリングに優れた名車が多かった。
最近元気なヤマハが昨年スマッシュヒットを飛ばした並列2気筒のMT-25やMT-07などは、その時代の乗り味を現代的にリメイクした感じさえする。もちろん、そこにはクロスプレーンコンセプト(MotoGPマシンの技術的フィードバックから生まれた設計思想)など最新のテクノロジーが注ぎ込まれ、数値的なポテンシャルの高さだけでなく、ライダーが操りやすい“意のまま感”にも磨きがかけられている。最近のツインはハイテクの産物でもあるのだ。
よく言われるが、ツインエンジンは中速トルクが豊かで出力特性はフラット。小気味よいパルス感とともに路面を蹴るトラクション性にも優れている。エンジンがコンパクトゆえ、そのマスが与えるハンドリングへの影響が少ない等々、優れた特性を持っている。
つまり、バイクを操る人間の感性に合っていて、自然に付き合えるのがツインという言い方もできるかも。直4のほとばしるパワーや上昇感も素敵だし、シングルのマニアックな乗り味にも痺れる。その中でも、普段着のまま心のモードを切り替えなくても気軽に乗れて、ちょっとお洒落感もあるツインは時代の空気にもマッチしているのかも。最近とみにツインが魅力的に思える今日この頃である。
※原文から著者自身が一部加筆修正しています。