インターネットで遭遇するトラブルの実状をさぐる(2019年公開版)
迷惑メール受信経験者は5割台
インターネットが普及するに連れ、その利用で遭遇するトラブルも増加の一途をたどっている。今回は総務省が2019年5月に発表した「通信利用動向調査」(※)の公開値を基に、インターネットの利用者におけるトラブルの現状を確認していくことにする。
次に示すのは、インターネットを利用している人における、その端末で経験したトラブルのたぐいを複数回答で尋ねた結果。回答時において過去1年との縛りは無いので(利用した端末そのものは過去1年間の縛りはある)、2018年中の1年間だけで無く、これまでに経験があるか無しかになる。
迷惑メール受信経験者は54.0%で5割強。最近はプロバイダやメール受信ソフト側のフィルタリング機能も充実し、低レベルのスパムメールは即時自動的にゴミ箱行き、あるいは着信すらされなくなっている。とはいえ網の目を潜り抜ける事例はいくらでもあり、フィルタをすり抜けるための技も高度化し、場合によっては一日何十件もその類のメールを目にすることになる。また単純な迷惑メールだけでなく、「勝手に有料サイトを利用されたことになっていて、勝手に請求書的メールが届いた」的な架空請求のメールも増えている。
「ウェブ閲覧履歴などに関連する広告表示やメールの送付」は少々分かりにくいかもしれない。広告技術の一つとして、ブラウザの履歴をもとに利用者の利用傾向を統計的に推測し、「より需要にマッチしたものを」との「好意」から、多様な広告展開が行われたり、さらにはメールで情報が送られてくる場合がある。メールは多分に利用側の選択で受け取り拒否はできるものの、ブラウザ上の表示広告に関しては難しい。中には関連する商品として、閲覧者には不愉快なものが表示されることもあり、迷惑メールと何ら変わりない体験となる。
一方本格的なトラブルともいえる「ウイルス感染」「フィッシング」「個人情報漏洩」は数%台。ゼロでは無く、確実に存在するあたり、これらの事案が実在し、自分の身の回り、自分自身に起きうることを再確認させられる。ただし「フィッシング」は調査票では「フィッシング」のみの表記で、補足説明として別票で「実在する企業からの正規のメールやウェブサイトなどに見せかけ、暗証番号やパスワードを入力させる詐欺的な行為を意味する」との説明があるか、そこまで目を通さずに回答をスルーしている可能性は否定できない。実受信率はもう少し高い可能性はある。
年齢でトラブル体験率は違いを見せる
この経験率を回答者の年齢階層別に見たのが次のグラフ。
具体的な選択肢として全体では最多回答率となる迷惑メール受信だが、意外にも高齢層の回答率は低い。メールそのものをチェックしていないのか、インターネットを利用し始めてからまだ日が浅く、経験するまでに至っていないのか、あるいはメールそのものを使っていないのかもしれない。アプリケーションのみの使用とのスタイルも十分ありえる。さらには迷惑メールとの認識をしていない可能性も否定できない。
興味深いのはウイルス感染の割合が高齢層でもあまり低い値とならない、それどころか70~74歳では年齢階層別で最大値を示していること。好奇心旺盛で「さまざまな」サイトにアクセスするが、リスクへの構えは十分で無い、積極的な初心者的事例が多い状況が想像できる。
端末そのものを無くしてしまったり、盗難にあったとの事例は若年層が多い。特に30代は7.4%、およそ14人に1人が経験している。行動範囲が広いため、出先で利用してそのままつい置きっぱなしにしてしまう、あるいはポケットなどから落ちてしまうなどのパターンだろうか。70~74歳が5.9%と高めなのは統計上のぶれの可能性が高い。
今件設問部分は実のところ、調査では単に経験談を尋ねているのであり、トラブルの類としての説明は無い。調査票では「機器を利用していて実際に経験したこと」との表記のみ。しかしながら何を意図してまとめられていることは明らか。その選択肢の中に「ウェブ閲覧履歴などに関連する広告表示やメールの送付」(グラフ上では「ウェブ閲覧履歴関連の広告表示など」と表記)が含まれていることは、設問者、そして利用者にとっては、ウェブ閲覧の履歴に連動する形で広告が表示されたり、さらにはメールが送付される事象が、迷惑だとの認識があることを意味する。
システムの提供側は「よかれと思って」「利便性の向上のため」のような理由を呈しているが、利用者側が必ずしもそのような受け止め方をしているとは限らない事実に、十分注意すべきではある。
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※通信利用動向調査
2018年分は2018年10~12月に、「世帯向けは都道府県および都市規模を層化基準とした層化二段無作為抽出法で選ばれた、20歳以上の世帯主がいる世帯・構成員に」「企業向けは公務を除く産業に属する常用雇用者規模100人以上の企業に」対して、郵送による調査票の配布および回収の形式によって行われている(企業向けは一部オンラインでも実施されている)。有効回答数はそれぞれ1万6255世帯(4万2744人)、2119企業。世帯調査における調査票のうち約8割は回収率向上のために調査事項を限定した簡易調査票が用いられている。各種値には国勢調査や全国企業の産業や規模の分布に従った、ウェイトバックが行われている。
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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。
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