月曜ジャズ通信 2013年12月23日天皇誕生日特別創刊号
もくじ
♪今週のスタンダード~アルフィー
♪今週のヴォーカル~エラ・フィッツジェラルド
♪今週の自画自賛~トニー・ウィリアムス『ネイティヴ・ハート』
♪今週の気になる1枚~T5Jazz Records presents:Jazzy Christmas/Peaceful
♪執筆後記
♪今週のスタンダード~アルフィー
この曲は、1966年公開のイギリス映画「アルフィー」の主題曲として作られました。作詞のハル・デヴィッドと作曲のバート・バカラックは1960年代から70年代にかけて数多くの大ヒット映画音楽を手がけた名コンビです。オリジナルを歌ったのはシェール。彼女は2010年公開の映画「バーレスク」でも存在感を発揮した名女優でもありますね。
ソニー・ロリンズとオリバー・ネルソンは映画のサウンドトラックにも参加し、ロリンズはオリジナル曲「アルフィーのテーマ」を作って自己名義のアルバムに収録しているのですが、映画とは関係がありません。これもまた、ジャズの七不思議のひとつです。
♪Dionne Warwick- Alfie
いち早くこの曲をカヴァーしてヒットを飛ばしたディオンヌ・ワーウィックのヴァージョン。ワーウィックはバカラック&デヴィッドの作品を数多く取り上げ、エンタテインメント界での地位を築いたと言ってもいいかもしれません。ちなみにネットでは彼女の従姉妹に当たるホイットニー・ヒューストンが歌っている「アルフィー」もあるので、聴き比べてみるとおもしろいかもしれません。
♪Bill Evans Trio- Alfie[1970]
ビル・エヴァンスがフィンランドのヘルシンキを訪れた際の映像で、おそらくテレビ用に収録されたものでしょう。冒頭ではエヴァンスがインタビューに答え、続いて演奏に入ります。なかなか貴重な映像です。
♪Stan Getz- Alfie
スタン・ゲッツがカヴァーした1967年の音源だと思われます。リチャード・エヴァンス指揮のストリングスをバックに、ほとんどメロディだけでこの曲を情緒たっぷりに表現してしまうゲッツのテナーが満喫できます。
♪Sonny Rollins- Alfie's Theme
これがソニー・ロリンズの書いた「アルフィーのテーマ」です。ジャズの名曲としてその名を残していますが、おそらく映画の主題曲としてはボツになっちゃったんじゃないでしょうか。だって、歌詞を付けづらそうですものねぇ……。ヌーヴェル・ヴァーグ側の映画だったらこれでよかったのかもしれません。
♪今週のヴォーカル~エラ・フィッツジェラルド
誰が言ったか知らないが、「女性ジャズ・ヴォーカリストの御三家は?」と問われて答えたのが「エラ・サラ・カーメン」だったとか。語呂がいいだけでなく、うまくトップ・クラスの3人の名前を織り込んでいるなと感心したものです。もちろん、これが定説とは言いませんが、この3人を避けて女性ジャズ・ヴォーカルを語ることができないのも事実。
ということでまずはその筆頭、エラ・フィッツジェラルドを取り上げましょう。
彼女もビリー・ホリデイ同様に劣悪な環境で幼少時代を過ごしましたが、17歳のときにニューヨーク・ハーレムのアポロ・シアターのアマチュア・ナイツで注目を浴び、歌手としてデビューします。
♪Ella Fitzgerald : One note Samba (scat singing) 1969
いきなりボサノヴァの名曲で申し訳ありませんが、観ていただけばジャズ以外のなにものでもないパフォーマンスであることがご理解いただけるでしょう。
エラ・フィッツジェラルドを評するとき、どんなジャンルでも歌いこなせるキャパシティがあることが挙げられますが、これがまさにその実例となるでしょう。
それにしてもいっさいポルトガル語を使わず、それどころか英語さえ使わずにスキャットだけで歌が成立してしまうその才能に惚れぼれしてしまいます。
♪Ella Fitzgerald- These Foolish Things (Remind Me of You)
エラといえばアドリブ・スキャットにどうしても注目が集まってしまいがちですが、ストレートな歌唱で情感を表現できるバラードも見逃せません。ハリウッド・スタイルの白人女性ヴォーカルと一線を画するポイントを押さえるためにもチェックしておきたいところです。
♪今週の自画自賛~トニー・ウィリアムス『ネイティヴ・ハート』
天才ドラマーの名をほしいままにしたトニー・ウィリアムスが、自己のクインテットを率いて1989年に制作したスタジオ録音のアルバムです。
限定発売された最新の24bitリマスタリング盤のライナーノーツを富澤えいちが執筆しました。
トニー・ウィリアムスは1963年に、マイルス・デイヴィスの“黄金の”と呼ばれるようになったクインテットに参加。18歳という若さでした。そしてモダン・ジャズの一時代を築く一方で、フリー・ジャズにも傾倒。1970年代にロック色を強めたかと思えば、フォー・ビートの新たな潮流を生み出す牽引役としても活躍するなど、とても振り幅の大きいアーティストです。
そんなトニーがアコースティック・ジャズに真正面から立ち向かったオール・オリジナルの作品について、「ずぶ濡れで観たドラミングに心が躍った」「千載一遇のインタヴューを逃した悔いは大きい」「あえてドラムではなく“歌”を感じてみたい」という3部に分けて解説しました。
オリジナルの発売当初はセクシーなジャケットにドキドキしたものです(笑)。
♪tony williams city of lights
収録曲「ジューシー・フルーツ」のライヴ映像です。パワフルなのにしなやかで繊細という、矛盾した表現を両立させてしまっている神業的なドラミングをぜひ堪能してください。
♪今週の気になる1枚~T5Jazz Records presents:Jazzy Christmas/Peaceful
もう2つ寝ると、クリスマスですね~。
街に安直なジングルベルが氾濫すると、無性にジャズならではのアレンジが施されたクリスマス・ソングが聴きたくなって、毎年ジャズのクリスマス企画のアルバムをチェックしてしまいます。
今年は「これで決まりだ!」というアルバムに巡り合うことができました。それが『T5Jazz Records presents:Jazzy Christmas/Peaceful」です。
これは、「2013年新たなインディペンデント・レーベルとしてスタートしたT5Jazz Recordsが、素敵なオトナたちが素敵なクリスマスの夜を過ごすためのジャズ・アルバムとして企画」されたもの(引用:T5 JAZZ RECORDサイトhttp://www.t5jazz.com/p/t5j-1001.html)。
ソロ演奏とデュオ演奏で構成されたシンプルながら奥深いサウンドは、聖夜をジャズの魔法でさらに彩ってくれるんじゃないでしょうか。
♪T5Jazz Records presents: Jazzy Christmas / Peaceful PV
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♪執筆後記
冬至を過ぎて、寒さも本格的になってきました。
気温と“ジャズを聴く気分”の関係は定かではありませんが、ジャズには“ホット”や“クール”といった形容詞を付して語られたりするので、もしかすると深~いところでつながっているのかもしれません。
「月曜ジャズ通信」はのぼせたり冷えすぎたりしないようヌル~く続けていきたいと思いますので、よろしくお付き合いくださいね。
富澤えいちのジャズブログ⇒http://jazz.e10330.com/