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増田惠子 人生を凝縮したような一夜限りのセッション。「歌手になってよかったと思えた幸せな時間」とは?

田中久勝音楽&エンタメアナリスト
写真提供/BS-TBS

ピンク・レディーとしてデビューして48年、シンガー増田惠子、人生を歌う

音楽への愛しか存在しないスタジオ――そこに集うのはアーティストと、音楽シーンを代表するサウンドメーカーとミュージシャン、そして音楽愛溢れるスタッフ。アーティストが今歌いたい、届けたい曲を、人気アレンジャーが作り上げた一夜限りのアレンジで、一流のミュージシャンたちとセッション。それが大編成での生演奏にこだわり、上質な音楽が生まれる「場所」、ライヴ番組『Sound Inn S』(BS-TBS)だ。

10月19日(土)放送回には今年でデビュー48年を迎えたシンガー・増田惠子が登場。自身にとって特別な3曲をこの日限りのスペシャルアレンジで披露。増田が「歌手になってよかったと思えた時間だった」と語ったセッションとは?そして一曲一曲と増田のストーリーとは?

「中島みゆきさんの『慕情』の歌詞を、みなさんに届けたかった」

1曲目は中島みゆきの「慕情」を十川ともじのアレンジでカバー。増田はピンク・レディーとして1976年シングル「ペッパー警部」でデビューし。「S・O・S」「カルメン’77」「渚のシンドバッド」「ウォンテッド(指名手配)」「UFO」「サウスポー」など、数々の大ヒット曲を連発し一時代を築き81年3月に解散。そして増田は同年11月に中島みゆきが提供したシングル「すずめ」でソロデビューした。

「私にとってはソロデビュー曲がヒットしたことで、新たなファンの方たちも応援してくれました。『すずめ』という曲がなかったら、今の私はないと思います。だから(中島)みゆきさんは私にとって神様のような存在なんです」。昨年中島みゆきをリスペクトするアーティストが集結し開催された『「歌縁」-中島みゆきRESPECT LIVE 2023-』でも増田は「慕情」を披露している。

十川ともじ
十川ともじ

この日は中島みゆきのバックバンドで、この曲を数えきれないほど演奏した十川が、増田の声を何度も聴いて「最初はシンプルで、だんだんドラマティックになっていく」この日だけのアレンジを紡いだ。ピアノも中島みゆきのバックバンドで活躍している坂本昌之だ。男性一人女性一人のコーラス、厚いストリングスを配し、この曲の世界観と増田の世界観を融合させた。

「この『慕情』は私にとって、強い言葉を使うと戒めの歌詞なんです。時は本当に無情で命は永遠じゃないから、一日一日を大切に向き合っている人と愛おしむように生きなければだめですよ、という歌詞に感動しました。この歌詞をみなさんにきちんと伝えたいという思いが強くてこの曲を選びました。十川さんが、言葉が伝わるアレンジにしてくださって、優しく歌うことができました」と、そのアレンジに感激していた。

「『Del Sole』はピンク・レディーナンバーにも通じるようなワクワク感があると思います」

2曲目は増田が2022年に発売した「Del Sole」を冨田恵一のアレンジで披露した。「この曲はコロナ禍で気持ちが沈んでいる時に歌ったら、気持ちが上がって元気になって、まさに今の時代にピッタリだと思いました。タイトル通り太陽の恵みのように聴いた人が元気になる曲で、ピンク・レディーナンバーにも通じるようなワクワク感があると思います。一生この曲を歌って踊っていきたい」と語っていた。そんな曲を冨田は「タンゴっぽくもありラテンでもある不思議な曲で、踊りながら歌う曲なのでテンポは変えずにバックビートをプラスした」アレンジを作りあげ、増田も「血が騒ぐよう」とノリノリで歌い、踊っていた。

冨田恵一
冨田恵一

また、ピンク・レディーをリアルタイムで聴いていたという冨田が、ピンク・レディーにまつわる数々の伝説を、都市伝説なのか事実なのかを増田に直接聞く場面も見逃せない。

自身の半生を描いた「愛唱歌」

船山基紀
船山基紀

ラストは自身の半生を描いた「愛唱歌」(2014年)を船山基紀のアレンジで披露。「この曲は憧れの阿木燿子と宇崎竜童さんご夫妻にお願いをして書いていただきました。阿木さんが私の自叙伝を読んでくださって『この曲は惠ちゃんにとっての“マイウェイ”のような曲だから一生歌っていける曲よ、大切に歌ってね』って言っていただきました」と、特別な存在の曲であることを教えてくれた。増田と船山はこの日が初対面ではなく、50年前にあるコンテストに増田が出場している時に出会っていることがわかり、二人とも感激していた。

船山はホルンとストリングスが印象的などこまでも優しく、温もりのあるアレンジで、「やさしい想いで歌いたい」という増田の歌に寄り添うサウンドを作り上げた。増田は<すべて出会いなのね 歌も同じことね>という自身の人生を映し出した歌詞を、涙ぐみながら歌っていた。まさに増田の人生を凝縮したような30分、セッションになった。

「毎日自分の心を磨いて歌と純粋に向き合えるような、そんな人生を送りながら歌を続けたい」

全てのパフォーマンスを終えた増田は「ミュージシャンの方達とスタッフの皆さんの愛が溢れている空間で歌えて、本当に幸せな気持ちで歌うことができました」と語り、そして「毎日自分の心を磨いて歌と純粋に向き合えるような、そんな人生を送りながら歌を続けたい」と、シンガーとしての決意を改めて語っていた。

増田惠子のパフォーマンスが楽しめる『Sound Inn S』は、10月19 日(土)BS-TBS(18時30分~)で放送される。またTVerでは未公開部分を追加した特別バージョンが見逃し配信される【配信期間10/20(日)12:00~11/16(土)18:29】。

BS-TBS『Sound Inn S』オフィシャルサイト

音楽&エンタメアナリスト

オリコン入社後、音楽業界誌編集、雑誌『ORICON STYLE』(オリスタ)、WEBサイト『ORICON STYLE』編集長を歴任し、音楽&エンタテインメントシーンの最前線に立つこと20余年。音楽業界、エンタメ業界の豊富な人脈を駆使して情報収集し、アーティスト、タレントの魅力や、シーンのヒット分析記事も多数執筆。現在は音楽&エンタメエディター/ライターとして多方面で執筆中。

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