集中豪雨の正体 「にんじん状雲」とは
集中豪雨の正体といったら驚くだろうか?この先が尖った雲は「にんじん状雲」と呼ばれ、激しい雨や竜巻をもたらす危険な雲だ。これからの季節、日本列島で頻繁に発生し、ときに豪雨災害を引き起こす。
「にんじん状雲」と呼ばれて
ひまわり8号から見える雲は多彩です。東西に流れるような雲、細長い雲、渦を巻く雲など、それぞれの成り立ちを考えるのは楽しい。天気予報の番組では限られた時間のため、天気予報に関係する雲を取り上げることがほとんどです。しかし、関係がなくても、つい目が惹きつけられてしまう雲があります。
例えば、この雲です。
先が尖った、三角形のような雲で「テーパリングクラウド」またはその形状から「にんじん状雲」と呼ばれます。にんじん雲といわれると、かわいらしく聞こえますが、実はとても危険な雲です。
雲の先端のゴツゴツとした質感がわかるでしょうか(表紙の写真)。この質感は非常に発達した雲が太陽の光に照らされ、白く輝いている部分や影からできています。このような雲は背が非常に高く、高さは15キロ程度、飛行機の窓から見たら、そそり立つ壁のようでしょう。この雲の下では猛烈な雨が降り、ときには竜巻が発生する、荒く激しい気象現象が起こっています。
それにしても、なぜ三角形なのでしょう?
それは雲が発生、発達する過程に答えがあります。穂先のように見える部分で雲が発生し、上空の風に流され西から東へ移動します。雲は発達しながら風に流されるため、だんだんと幅が広がり、それが何度も繰り返されて、このような巨大な三角形の雲に成長するのです。
紹介している雲の大きさは東西約700キロ、海上にあるため、それほど大きくは見えないけれど、もしも日本列島で発生したら、本州の半分が隠れるくらいの大きさです。
集中豪雨の正体
東西約700キロといっても、雲ひとつ分の大きさではありません。
ひとつの積乱雲の大きさは5キロから10キロ。これが複数集まって、積乱雲群を作り、さらに積乱雲群が集まって、巨大な三角形の雲を形作っています。
積乱雲の寿命は1時間ほどで、夏の夕立があっという間に終わってしまうのは雲の寿命が短いから。しかし、ひとつの積乱雲の寿命が1時間でも、複数が集まり、次から次へと発生しては消えてを繰り返すようになると、数時間にわたり激しい雨が降り続くようになります。これが集中豪雨の正体です。
集中豪雨の予測で一番重要なのは積乱雲が繰り返し発生する環境にあるのか、見極めることです。
【参考資料】
小倉義光,2013:テーパリングクラウドという名称について,天気,60,649.
加藤輝之,2015:第6章 線状降水帯発生要因としての鉛直シアーと上空の湿度について,平成26年度予報技術研修テキスト,気象庁予報部,114-132.
木下仁,2013:2013年3月先島諸島付近で長時間維持されたテーパリングクラウド,天気,60,392.