11歳の少女が訴えるドローンによる虐殺―パキスタンから「もう一人のマララ」来日、対テロの実態を訴える
近年、紛争地で多用されるドローン(無人攻撃機)。自国の兵士が死傷するリスクがなく、戦争したい政治家達にとっては便利な存在だ。だが、ドローンによって殺される民間人は、単なる「誤爆」で片付けられない程、多いのだという。今月、パキスタンから11歳の少女とその弁護士らが来日。米軍のドローンによる民間人被害の実態について語った。
「ドローンに攻撃された時は、とても怖かった。あの時の恐怖を今でも忘れられません…」。そう語るのは、ナビラ・レフマンさん(11)。米軍が「過激派の巣窟」として、ドローン攻撃を頻繁に行っているパキスタン北西部の北ワジリスタン管区からの避難民だ。2012年10月、ナビラさん一家は畑で作業をしていた際に、米軍のドローンによる攻撃を受けた。この攻撃で、ナビラさんが右腕などに重傷を負った他、一緒にいた妹もケガをし、祖母はナビラさんの目の前で死亡した。ナビラさんは「ケガが治るまで、長い時間がかかり、私はその間、満足に勉強できませんでした。どうして米国は、罪のない人々を殺したり、傷つけたりするのでしょう?」と問う。
パキスタンでのドローン被害者を支援する弁護士で、ナビラさんと共に来日した、シャザード・アクバルさんは「ドローン攻撃で殺される民間人はとても多い」と語る。「CIAから流出した2010年から2011年のデータによると、ドローンの攻撃対象とされ殺された800人以上の内、少なくともその半数が民間人である一方、アルカイダ幹部として特定できたのは、たったの6人だけです。武装勢力一人を攻撃するのに対し、30人の民間人が犠牲になっているという報告もあります。
こうした問題は、米軍が正確な情報を持っていないにもかかわらずドローン攻撃を続け、米軍の現地スパイも、自分が利害が対立する人物を”テロリスト”として米軍に報告するために、罪のない人々が殺され続けているのです。しかし、米軍はそれを誤爆だとは認めず、謝罪も補償もしません。ドローンについての公聴会で発言するため、米国まで行ったナビラさんに対しても、同様でした。本当に許せないことです」(アクバル弁護士)。
パキスタン北部での対テロ戦争では約100万人が避難生活を余儀なくされており、ナビラさんもその一人だ。反政府武装勢力と、パキスタン軍や米軍との衝突は終わる気配がない。「武力で平和はやってきません、必要なのは教育です」と、訴えるナビラさん。現地で過激な思想を持つ武装勢力がその力を誇っているのも、現地の人々の教育環境の劣悪さが大きく関係している。対立を煽る宗教的指導者に言われるままに、人々は寄付をしてしまうのだ。「ドローンや、そのミサイルに使うお金があるならば、学校をつくって下さい。それこそ、私達が本当に必要としていることです」(ナビラさん)。
その積極的な言動から、パキスタンでは「もう一人のマララ」として、ノーベル賞を受賞したマララ・ユスフザイさんと並び注目される、ナビラさん。安倍政権が安保法制の下、米軍への支援活動を行おうとしている中、日本の人々もナビラさんの訴えに耳を傾けるべきだろう。
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