NY金9日:リスク投資環境の安定化で、大幅続落
COMEX金12月限 前日比19.00ドル安
始値 1,121.00ドル
高値 1,124.70ドル
安値 1,100.10ドル
終値 1,102.00ドル
投資家のリスク選好性回復、インドの金需要減少の思惑を受けて、大幅続落となった。
アジア・欧州タイムは1,120~1,125ドル水準で方向性を欠く展開になったが、ニューヨークタイム入りと前後してまとまった売りが入り、一気に20ドル幅の急落になった。何かサプライズ的な動きがあった訳ではないが、世界の株式市場が総じて落ち着きを取り戻す中、投資家の「安全資産」に対する需要減退の思惑が金相場の上値を圧迫した模様。1,120ドル割れ以降は5ドルの節目単位で買い玉のストップロスを巻き込む動きがみられ、下げ幅を拡大した。1,000ドルの節目を前に下げ止まり、その後は米株式相場がマイナス圏に沈んだことが警戒されて下げ幅を縮小したが、戻り圧力は限定されている。なお不安定な投資環境が続いているが、リスクオフ環境でも上昇力が限定される中、買い方の失望売りが膨らみ易くなっていることが再確認できる。
普段は余り注目されていない指標だが、7月の米求人件数が前月比+43万件の575万件となり、過去最高を記録したことも金価格にはネガティブ。あくまでも7月分の統計ということを考慮に入れる必要があるものの、米求人数は急増傾向を示しており、雇用に対する信認を一段と強化している。これを手掛かりに直ちに9月利上げを正当化するといった議論にはならないが、利上げ着手を決断しやすい状況になっていることは間違いない。
また、インドで金政策の変更が承認された影響を指摘することも可能である。これは従来から予告されていた政策変更であるが、インド国内の金流通を促進することで、金輸入量を抑制するための施策が発表されている。いわゆる金のマネタイズ戦略であり、2万トンとも推計される金在庫を、銀行のゴールドローンなどのスキームを活用することで市中に流通させ、金需要をカバーすることを目的とする。実際にこうした政策が効果を発揮するのかは不透明だが、これが成功すればインドの金需要が海外からの輸入に直結する構造に歯止めが掛かることになり、輸出入市場におけるインド市場の規模が縮小する可能性もある。
なお、マーケット全体が乱高下を繰り返す不安定な地合が続いているが、8月雇用統計が年内利上げ期待をつないでいること、リスクオフ環境でも金価格の本格上昇に失敗したこと、他商品市況の戻り圧力が一服していることなどを考慮すれば、1,100ドルの節目は完全に下抜く方向性でみておきたい。直近安値1,072.30ドル更新も、それほどハードルは高くない。