世界の平均「非」健康年数の実態をさぐる
・平均寿命が一番長い国は日本で84.17年(※)。次いでスイスの83.26年(2016年)。
・平均健康寿命と平均寿命を用いることで平均非健康年数が算出できる。日本の平均非健康年数は9.35年。平均寿命の上位国では大よそ9年強。
日本は平均寿命が長い国として知られている。一方、寿命の概念には生存していれば計上される寿命の他に、健康的な状態でいる年齢を意味する健康寿命(Healthy life expectancy (HALE))も存在する。WHO(世界保健機関)では平均寿命、平均健康寿命双方のデータが公開されているが、その2つを用いることで、独自の概念となる「非健康年数」も算出が可能となる。その実情を確認する。
WHOの定義では「平均健康余命」とは「病気やけがなどで完全な健康状態に満たない年数を考慮した、『完全な健康状態』で生活することが期待できる平均年数」であり、ゼロ歳の時の値が「平均健康寿命」となる。他方、単純な「平均余命」は非健康な状態でも生存していれば計上される年数で、ゼロ歳の時にあと何年生きられるかの推計が「平均寿命」となる。
WHOによる、国別の平均寿命の上位国は次の通り。
大よそ長寿命の話では常連の国がずらりと並んでいる。WHOの掌握できる範囲では、上位20か国はすべて80年以上の平均寿命ということになる(右端の2か国は比較参考値)。
そしてWHOのデータベースからは2016年分の平均健康寿命も取得は可能。そこでこの2つの値を用いることで、概算ではあるが平均的な非健康年数、つまり「病気やけがなどで完全な健康状態に満たない状態で生活している年数」を算出できる。基本的にこの非健康な状態は高齢において生じる老化で生じた状況を想定しているため、大よそ「高齢者が病気や老化で通院、入院している、あるいは介護を受けている状態」、つまり健康面での社会保障を受給している状態の年数を示すことになる。
この平均非健康年数に関して、平均寿命の上位国などの値を算出したのが次のグラフ。
平均寿命の上位国の差異は3年足らずであったことから、平均非健康年数も大きな違いが無く、10年足らずで一致している(シンガポールだけはやや低め)。日本は9.35年。これは高齢者が非健康な状態になってから平均として9年強は生存し続けていることを意味する。
同じような計算を、2016年時点で60歳の人に対して行ったのが次のグラフ。
こちらもゼロ歳時の平均非健康年数同様に、平均余命の上位国諸国でさほど違いは無く、5年強でほぼ一致しており、国によって大きな差異が生じていることは無い(やはりシンガポールはやや短めとなっている)。寿命関連の話で、「日本は非健康な状態で生きている年数が長いので、寿命が長く見える」との指摘もあるが、それは的外れなものであることが分かる。
一方で、健康余命の定義にある「完全な健康状態」に関しては、いくつかの方法が存在するが、国によって採用されているものが異なり、さらに同じ方法でも国により細かい判断基準が異なっているのが実情。今件試算もあくまでも参考値以上の意義は無いのも否定はできない。
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※84.17年
健康寿命だけで無く寿命そのものの表現の単位には「年」「歳」の双方が使われるが、今記事では厚生労働省の寿命関連の報告書で多用されている「年」を用いる。
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