【フランス】早ければ12月末に無料でワクチン接種開始
マスク、検査、ときて、新型コロナウイルス感染対策の主眼は、いまワクチンへと移ってきました。
フランスでは、12月3日木曜の夕方、カステックス首相とヴェラン連帯・保健大臣らの記者会見があり、ワクチン接種の道筋が示されました。
早ければ12月末からワクチン接種可能に
「ファイザー」と「バイオンテック」が共同開発、そして「モデルナ」が開発した新型コロナウイルス用ワクチンは、ヨーロッパで実用段階に入りつつありますが、フランスでは高等保健機構(HAS)のゴーサインが出れば、早くて12月末、もしくは1月上旬から接種が始まる予定です。
第一段階の1月は、要介護高齢者施設(EHPAD)などの入居者と、そこで働く職員(重症化のリスクが高い人)で、合計およそ100万人が対象。
第二段階の2月は、年齢、既往症などの面から重症化リスクの高い人と医療従事者が対象で、その数は合計およそ1,400万人。
第三段階は春以降。上記以外の人々に拡大予定。
この方針をみると、感染によって重症化しやすい人たちを最優先するということが明らかです。『ル・モンド』の記事によれば、フランスでの感染死者数の44%が要介護高齢者施設の入居者であるというデータが出ています。
ワクチンは無料
会見では、政府はすでに2億回の接種が可能なワクチンを確保していると発表しました。ワクチンは数週間開けて2回の接種が必要なので、これは1億人分にあたります。フランスの人口はおよそ6,780万人ですから、全国民に十分行き渡る量を確保できていることになります。
しかもワクチンは無料。つまり、国民保険で全額賄われるということで、2021年度の予算として15億ユーロが計上されています。
そのうえで、ワクチン接種は義務ではなく、あくまでも要請。政府としてはできるだけ多くの国民に接種してほしい考えですが、ワクチンに対して懐疑的である人が少なくないこともたしか。
Ipsosという機関が世界経済フォーラムと協働で行った10月の調査(世界15カ国、18,000人以上が対象)によると、「ワクチンがあれば接種する」に同意した平均値は73%だったのに対して、フランスは54%で、15カ国のなかでもっとも低い数字でした。ちなみに数字が高かったのはインド、中国で、いずれも85%以上。日本は69%でした。
装備は数ヶ月前から手配済み
現在報道されているワクチンは、マイナス80度で保管することが必要で、解凍後は5日以内に使用しなくてはならないという課題がありますが、冷凍保存のシステム、輸送システムなどについてはすでに手配済みであることも、今回の会見で発表されました。
また、初期段階では「ファイザー」と「バイオンテック」が共同開発、「モデルナ」開発のワクチンが使われますが、数ヶ月にわたる接種キャンペーンの間には「アストラゼネカ」「サノフィ」など、複数のメーカーのものが出まわる予定。ワクチンの一部は国内でも製造されます。
ただし、ワクチンは接種した人を守る効力を期待できるものの、感染を断ち切れるかどうかは今のところ確実ではないということ。そのため、今後も感染予防措置は引き続き必須であることが強調され、とくにクリスマスシーズンに家族で集うとき、テーブルを囲むのは大人6人までが望ましいという具体的な数字も、首相の口から発せられました。
連帯・保健省が監督するアプリケーションTousAntiCovidで毎日更新されるデータによれば、この記事を書いている12月4日現在、1日の新規感染者数は12,696人。数日前には1万人を下回る日もありましたが、感染収束の日はまだまだ先のようです。
※12月6日、記事の一部を修正しています。その時点での1日の新規感染者数は、12,923人です。