アンネ・フランクの義姉妹「トランプ元大統領は明らかにヒトラーを崇拝していた」発言でネットは賛否両論
「トランプ元大統領は完全な人種差別主義者でした」
第二次世界大戦の時に、ナチスドイツが約600万人のユダヤ人を殺害した、いわゆるホロコースト。アンネ・フランクはユダヤ人だったために、ナチスからの迫害を逃れてオランダのアムステルダムの隠れ家で約2年間、身を潜めて生活していたが、密告されて1945年にベルゲン・ベルゼン強制収容所で病気で死亡した。アンネが隠れ家生活で思いを綴った日記を戦後、ホロコーストから生き延びた父オットー・フランクが「アンネの日記」として出版し、現在でも世界中で多くの人に読まれている。アンネ・フランクはホロコーストを象徴するような人物で、欧米やイスラエルではホロコースト教育が行われることが多く、小学生の必読書にもなっている。
そのアンネ・フランクの義姉妹で91歳のエヴァ・シュロス氏が米国のメディアThe Daily Beastの取材に応じて「トランプ元米国大統領は明らかにヒトラーを崇拝していた」という発言をして、ネットでは炎上したり賛否両論など様々な意見が飛び交っている。
エヴァ・シュロス氏はウィーンで生まれ、アンネ・フランクと同じアパートメントに生活していたこともある。戦後にアンネ・フランクの父のオットー・フランク氏とエヴァ・シュロス氏の母が結婚した。戦後、エヴァ・シュロス氏はイギリスでアンネ・フランク・トラストという財団を立ち上げて、現在でもホロコースト時代のアウシュビッツ絶滅収容所での体験や記憶を語り継いでいる。
エヴァ・シュロス氏は取材で「トランプ元大統領自身は反ユダヤ主義の思想はなかったと理解しています。彼はその代わりにメキシコ人や他の多くの人に対して人種差別主義者でした。完全な人種差別主義者でした(原文:He was against the Mexicans, and many others. He was a racist. Full-stop, he was a racist.)トランプ元大統領はいくつかのバカげた発言もしていました。そこで私はトランプ元大統領とヒトラーを比較してみました。トランプ元大統領はヒトラー演説を研究していたと聞きました。そのため、トランプ大統領は明らかにヒトラーを崇拝して、ヒトラーの反ユダヤ主義のやり方を真似していたと思います(原文:he obviously admired Hitler and just copied him with his anti-Semitism.)。ムスリムに対してのヘイトスピーチなどもそうです。白人至上主義は我々の社会では間違ったことです。我々は全ての人間を平等に扱わないといけないと思います」と語っていた。
絶対化されやすいホロコースト生存者の証言やコメント
このような発言は物議を醸し、ネットは炎上することが多い。だが、今回のエヴァ・シュロス氏の発言に対しては「その通りだ」と賛同する意見もあるし、「トランプ元大統領とヒトラーは全く違う」と反対している人も多い印象だ。
特に今回はトランプ元大統領へのコメントということで、ユダヤ人の間でも賛否両論の意見が飛び交っている。アメリカのユダヤ人は一枚岩ではなく、様々なバックグラウンドや政治的思想を持った人が多い。だがトランプ元大統領が2017年12月にイスラエルの首都をテルアビブからエルサレムに正式に認めて大使館移転を打ち出したことから、多くのユダヤ人がトランプ元大統領に好意的で今でも支持している。
そしてホロコースト生存者はナチスドイツの迫害、絶滅収容所という地獄のような経験を生き延びてきた高齢者ということもあり、その証言やコメントは"絶対的"という雰囲気もある。特にエヴァ・シュロス氏はアンネ・フランクの義姉妹として欧米で多くの講演も行っている有名人だ。
欧米やイスラエルでは学校でホロコーストの正しい歴史を伝えるためにホロコースト教育を行っているところが多く、学生の頃からホロコースト生存者の証言などを聞いて感想文やコラムを書くことが多い。そのためホロコースト生存者の証言や意見を否定すると"ホロコースト否定論者"、"人種差別主義者"、"反ユダヤ主義者"と思われるのでタブーだという風潮は確かにあり、今回のエヴァ・シュロス氏の発言に対しても強く否定することもできないという人も多い印象だ。
▼エヴァ・シュロス氏