米国の天然ガス価格が高騰も、暖房油価格は低迷している謎
北米で冬型の気圧配置が活発化する中、暖房用エネルギー需要が拡大している。11月上旬時点では「今年は暖冬で暖房用エネルギー相場は不発」との見方も強かったが、その後は北部地区を中心に降雪が観測される地域も増えていることで、漸く季節トレンドに沿った需要拡大傾向が観測され始めている。
NYMEX天然ガス先物相場は、11月5日時点では100万Btu=3.379ドルとなっていたが、12月3日には4ドルの節目を突破し、直近の12月13日時点では4.443ドルまで値位置を切り上げている。12月入りしてからの上昇率は、僅か10営業日で12.4%に達しており、週間ベースでは6週連続の値上がりとなっている。
シェール革命の影響で米国内の天然ガス供給量は高止まりしており、直近の12月4~11日の週だと前年同期から3.37%の増産となっている。米エネルギー情報局(EIA)は14年の同国天然ガス生産高見通しを日量714億3,000万立方フィート(前年比+1.4%)としているが、4年連続で過去最大規模の生産が想定されており、歴史的な大規模増産環境が維持されている。
実際に、米国内の天然ガス在庫は4月12日の週から31週連続で増加している。ただ、それでも冬の需要規模には対応することはできず、11月15日の週から4週連続で在庫の取り崩しが行われていることが、天然ガス価格を押し上げている。例年のパターンだと2~3月前後まで在庫の取り崩しが進むことになるため、仮にこのまま寒波が継続すると、2010年8月以来の5ドル台乗せの可能性も十分にある値位置に到達している。
■暖房油は、需要期なのに需給緩和圧力に晒される
一方、同じ暖房用エネルギーであるNYMEXヒーディングオイル先物相場は、12月入りしてから調整色を強めている。12月2日の1ガロン=308.69セントをピークに、12月13日安値は295.83セントに達している。12月入りしてからの下落率は2.4%となっており、同じ期間に二桁高となっている天然ガス相場とは対照的な値動きになっている。
石油精製品の末端需要は、12月6日までの4週間平均で日量380.3万バレルとなっており、前年同期の377.1万バレルを0.8%上回っている。その意味では、決して需要環境が悪い訳ではない。寒波の影響は、暖房用石油需要にも間違いなく恩恵をもたらしている。ただ、米製油所が石油製品の大規模な増産を進めていることで、需要期にもかかわらず過剰供給傾向に傾いていることが、石油系の暖房用エネルギー相場を圧迫している。
シェール革命の影響で米国の原油価格は国際的に見て割安な状態にあるため、米国内製油所の採算環境は強い競争力を得ている。このため、高い精製マージンの恩恵を得るために石油製品の増産傾向を強めており、現在の冬型の需要環境でさえも増産分を全て吸収できない状況になっている。
こうした石油製品の増産は、米国内の原油在庫の取り崩しを促すことに成功しており、WTI原油相場の反発を促している。ただ、需要期にもかかわらず需給緩和圧力に晒される中、天然ガス価格の高騰と逆行した暖房油価格の下落がもたらされている。