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新人本塁打記録を塗り替えたアーロン・ジャッジがイチロー以来の新人賞&MVPダブル受賞をほぼ確実に?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
2001年イチロー選手以来の新人賞&MVP受賞が現実味を帯びてきたジャッジ選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 1987年にマーク・マグワイア選手が樹立した新人本塁打記録49本にあと1差で迎えた26日のロイヤルズ戦。この日のアーロン・ジャッジ選手は、まったくといっていいほどプレッシャーを感じさせなかった。

 3回にマグワイア選手に並ぶ49号2ラン本塁打を右翼席に運ぶと、7回には打った瞬間本塁打とわかる矢のような打球を左翼席中断にたたき込み、事も無げに記録を塗り替えてしまった。歴史的瞬間にヤンキー・スタジアムのファンたちは、ベースを回るジャッジ選手に総立ちで声援を送った。ベンチに引き上げても鳴り止まないカーテンコール。再びグラウンドに登場したジャッジ選手は右腕を高々と挙げ感謝を表した。

 シーズン前半戦は本塁打を量産し、一躍全国から注目を集める存在になった。しかし後半戦に入ると一気に失速。一時は三振の連続試合数でMLB記録を塗り替えるなど、不振を極めた時期もあった。しかし9月に入ると破壊力ある打撃は完全復活。ここまで月間打率は3割を超え、13本塁打、26打点と前半戦を上回るペースで打ちまくっている。

 新人選手としてMLB史上で初めて50本塁打の大台に乗せ、新人賞受賞を確実にしたジャッジ選手。次に注目されているのが2001年イチロー選手以来となる史上3人目の新人賞&MVPのダブル受賞だ。そこで過去5年間MVP受賞選手の打撃成績と比較しながら、その可能性について検証してみたいと思う。

 検証する項目は「打率」「本塁打」「打点」の打撃3部門に加え、ここ最近選手の活躍度を示す指標として使用される「OPS」(長打率+出塁率)と「WAR」(「Wins Above Replacement」といい、代替選手と比較しその選手がどれだけチームの勝利に貢献しているかを示す。数値が高いほど貢献度が高くなる)の5つの項目で比較してみた。ちなみに括弧内はリーグ内の順位だ。

●2016年シーズン

 クリス・ブライアント選手:.292(19位)/39(3位)/102(6位)/.939(4位)/7.7(1位)

 マイク・トラウト選手:.315(5位)/29(26位)/100(14位)/.991(2位)/10.5(1位)

●2015年シーズン

 ブライス・ハーパー選手:.330(2位)/42(1位)/99(5位)/1.109(1位)/9.9(1位)

 ジョッシュ・ドナルドソン選手:.297(10位)/41(3位)/123(1位)/.939(3位)/8.8(2位)

●2014年シーズン

 マイク・トラウト選手:.287(14位)/36(3位)/111(1位)/.939(3位)/7.9(1位)

 *ナ・リーグはクレイトン・カーショー投手が受賞したので省略

●2013年シーズン

 アンドリュー・マカチェン選手:.317(7位)/21(23位)/84(11位)/.911(6位)/8.1(2位)

 ミギュエル・カブレラ選手:.348(1位)/44(2位)/137(2位)/1.078(1位)/7.3(4位)

●2012年シーズン

 バスター・ポージー選手:.336(1位)/24(22位)/103(6位)/.957(4位)/7.3(1位)

 ミギュエル・カブレラ選手:.330(1位)/44(1位)/139(1位)/.998(1位)/7.2(4位)

 如何だろう。単純に個人成績だけでなくチーム成績も加味されるものだが、ただ個人成績ではっきり確認できるのが、2年連続三冠王をあと一歩で逃したカブレラ選手以外、打撃3部門の成績が突出していなくても全選手がWARでリーグ2位以内に入っているということだ。

 そこでジャッジ選手の成績をチェックしてみると、25日終了時点で.283(22位)/50(1位)/108(2位)/1.038(2位)/7.6(2位)となっている。WARは2位に入り、それ以外の部門でも過去の受賞者以上に申し分ない成績を残している。しかもヤンキースも2年ぶりにプレーオフ進出を決めているのだ。

 かつて自分も全米野球記者協会の投票権を得たことがあるが、特定のチームをカバーしながら全チームの選手のプレーをつぶさにチェックすることはできないので、どうしても候補選手のデータを見比べながら選ぶしかなかった。それは他の記者たちもほぼ同様だと考えていい。もし自分が今シーズンのMVPの投票権を得ていたのなら、文句なしでジャッジ選手を1番に列記するはずだ。

 果たして結果は如何に…。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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