「ヤングマン」逝く~西城秀樹さん死去の報道から考える血管の健康
二度の脳梗塞と闘いながら…
新御三家、若々しいイメージと多数のヒット曲で一世を風靡した西城秀樹さんが亡くなられた。
私は子どものころYMCAのポーズを真似した世代だ。西城さんはまさに憧れのお兄さんだった。心よりご冥福をお祈りする。
急性心不全ということしか明らかになっておらず、これ以上の詮索はしない。
急性心不全に関しては以下の記事をご覧頂きたい。急に心臓が止まったということで、急性心筋梗塞などが考えられる。
脳梗塞と急性心不全に関係はあるのか?
ここでは、おそらく多くの方々が気にされていると思われる、脳梗塞と急性心不全の関係を考察したい。
西城さんは48歳と56歳のときに脳梗塞を発症されている。脳梗塞とは、脳の血管が詰まり、血液が流れなくなることで脳細胞が死んでしまう病気だ。
脳梗塞には主に3種類ある。心原性脳塞栓症、アテローム血栓性脳梗塞、ラクナ梗塞だ。
心原性脳塞栓症は不整脈(心房細動)が原因で、心臓のなかに血の塊ができ、それが脳の血管まで流れていって血管をつまらせる。
アテローム血栓性脳梗塞は、脳の血管が動脈硬化で狭くなり、そこに血の塊ができて血管をつまらせる。
ラクナ梗塞は脳の小さな血管が高血圧などで傷つき詰まってしまう。
西城さんの場合、2003年の最初の脳梗塞はラクナ梗塞だったという(ヨミドクター有料記事より)。
その後健康に気を使った生活を送られてきたが、56歳のときに脳梗塞が再発した。そのときはMRIで血管が詰まっているのが分かり、半身麻痺の後遺症も出た。48歳のときのラクナ梗塞より大きな症状だ。アテローム血栓性脳梗塞と思われる。
なぜ健康に人一倍気を遣ってきた西城さんが二度の脳梗塞に襲われたのか。
気になる記事があった。「2001年11月にも、たばこの吸いすぎによる「二次性多血症」と過労による脱水症状のため10日間入院」したことがあったという(スポーツ報知記事)。
二次性多血症(二次性赤血球増多症)とは以下のようなものだ。
喫煙は脳梗塞の危険因子である。そして、急性心不全の原因となる虚血性心疾患、急性心筋梗塞の危険因子でもある。
あくまで一般論であるが、脳梗塞と急性心不全の原因である虚血性心疾患、急性心筋梗塞は動脈硬化という共通の原因があるのだ。
血管の健康が寿命を決める
脳梗塞や心筋梗塞は、血管が傷み、固くなり、狭くなる動脈硬化が原因となって引き起こされることが多い。
私達病理医は、脳梗塞や急性心筋梗塞で亡くなった患者さんを解剖させていただくことが多いが、こうした患者さんの血管は、あらゆるところで動脈硬化を起こし硬くなっている。一方長寿を全うされた患者さんの血管は、動脈硬化が少なくきれいなことが多い。
がんなどの別の要因がなければ、血管の健康が寿命を決める大きな要因なのだ。
動脈硬化は突然起こるのではなく、長い間の生活習慣などが影響し、静かに進行していく。症状が出たときには、相当動脈硬化が進んでいる。
動脈硬化に影響を与える「高血圧」「高脂血症」「喫煙」は三大危険因子と言われる。
動脈硬化が進んだ時点で禁煙などをしても、症状の進行を緩めることはできても血管を昔の状態に戻すことはできない。
だからこそ、この記事を読まれた皆さんは、今すぐ自分の生活習慣を見直して欲しい。
10代のお子さんと奥様を残されて旅立たれた西城さんの悔しさはいかばかりだろう。あらためてご冥福をお祈りすると同時にご家族に哀悼の意を表したい。