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菅野に千賀、上野由岐子だけじゃない!今年の「鴻江キャンプ」は若手逸材の宝だらけだった!

田尻耕太郎スポーツライター
鴻江合宿の様子。上野の投球をマウンド後方で見つめる若手たち(筆者撮影)

“日本のエース”が一緒にトレーニング

 菅野に千賀、上野由岐子。

 “日本のエース”が福岡県内で一緒にトレーニングを行った。18日まで実施されていた「鴻江スポーツアカデミー」の合宿に参加。最終日にはソフトバンク球団による千賀の自主トレ公開が設定されていたために数多の報道陣が集結。さらに上野への依頼も殺到したり、同日にインタビューが設定されたりしたことで福岡ローカル局以外にも東京キー局のディレクターらが来福した。さらに菅野の参加も聞きつけた巨人担当記者も駆けつけ、総勢70名に迫るメディア関係者が殺到。「自主トレでは異例。まるで日本シリーズやWBCの時のベンチ前みたいだ」などとの声も聞かれた。やはりこの三人が勢ぞろいするのはそれだけ特別なことなのだ。

 テレビや新聞、ネットニュースなどで豪華スリーショットを目にした方も多いと思う。

 ただ、この三人の存在感があまりに際立っていて、2020年の鴻江スポーツアカデミー合宿には史上最多の選手が参加していたという情報がすっかり置き去りになってしまった。じつは今年の同合宿は史上最多の参加者数を記録。さらに報道公開日には不在だった選手も多かった。

 今年の鴻江合宿参加選手、改めて以下の通りだ。

 榎田大樹(埼玉西武)

 松葉貴大(中日)

 菅野智之(巨人)初参加

 川原弘之(福岡ソフトバンク)

 石川柊太(福岡ソフトバンク)

 千賀滉大(福岡ソフトバンク)

 宮國椋丞(巨人)初参加

 杉山一樹(福岡ソフトバンク)初参加

 浜地真澄(阪神)初参加

 高田萌生(巨人)初参加

 長谷川宙輝(東京ヤクルト)初参加

 種市篤暉(千葉ロッテ)

 遠藤淳志(広島東洋)初参加

 清水達也(中日)初参加

 吉住晴斗(福岡ソフトバンク)初参加

 上野由岐子(ソフトボール・ビックカメラ高崎)

 山内早織(捕手・ソフトボール・ビックカメラ高崎)初参加

※プロ野球選手は年齢順

 プロ野球の投手だけで15名。3年連続参加となった榎田大樹やすっかり常連の松葉貴大といった実績組もいつも通り姿を見せたが、今年はとにかく若手が多かった。上記の表で、杉山一樹からの8名は22歳以下の投手たちだった。

22歳以下の有望投手が8名も

 この鴻江合宿の評判が一気に広まった。やはり種市篤暉の成長が大きかったのだろう。種市は昨季初参加。「千賀さんと一緒に練習したい」とチームの先輩の石川歩に頼み込んで千賀を紹介してもらったのをきっかけに同合宿を訪れ、鴻江スポーツアカデミー代表でアスリートコンサルタントの鴻江寿治氏の指導を受けると、投球フォームが一変した。プロ入りから2年間で未勝利だった右腕が、昨シーズン大ブレイクして8勝をマークした。

 ここには何かがある、と考えるのは当然の流れだ。

巨人の高田(筆者撮影)
巨人の高田(筆者撮影)

 巨人の高田萌生と阪神の浜地真澄は、それぞれチーム内の“元ソフトバンク”の先輩を頼りにツテをたどって、この合宿に参加した。自ら道を拓いてたどり着いた。去年の種市と同じだった。

 高田のボールはこの合宿に参加した若手の中で、一番目立っていた。年末ぎりぎりまでプエルトリコでのウインターリーグに参戦していたこともあり“出来上がっていた”のもあるだろうが、鴻江氏の提唱する「うで体」「あし体」理論の、「うで体」に当てはまる彼は、それに当てはまる投げ方を試すとボールの強さが一段階上がった。若手時代の松坂大輔が同タイプだったこともあり、振り被る際に頭の上で手を3回ほどクイックイッと動かすワインドアップ投法を試すとそれがハマった。昨季までの3年間でプロ未勝利の右腕だが、投げているボールを見る限りだと先発ローテに入る力は十分に兼ね備えている。米球界に移籍した山口俊の穴をある程度埋めるのではないかと期待できる。

 同じく「うで体」タイプの浜地も自身の体の特性を知り、それに沿った使い方を学んだ。若手の多くはスケジュールの都合上でフル参加が叶わなかったが、浜地は5日間しっかり練習を行うことができた。ラスト2日間は同じ「うで体」の菅野と一緒に練習できた。これは大きな財産となる。

 広島の遠藤淳志は昨季プロ2年目ながら一軍で34試合に登板して1勝1敗1セーブ6ホールドを記録した、まさに期待の星だ。この合宿で鴻江氏から「あし体」だと教えられると、ワインドアップは合わないと判断。下半身始動のセットポジション投球にして、同タイプの千賀を参考にしたフォームの習得に励んだ。

 中日の清水達也は、花咲徳栄高校時代に甲子園で優勝投手になった逸材だ。昨季はプロ初勝利を含む2勝をマーク。大きく反り返って投げる変則フォームは特徴的でもあり、課題でもあった。こちらも「あし体」の投げ方を懸命に習得。もともとボールの力がある投手だけに、今取り組む投げ方が固まれば制球難に苦しむことはなくなるだろう。

ヤクルトの長谷川(筆者撮影)
ヤクルトの長谷川(筆者撮影)

 ヤクルトの長谷川宙輝。昨年まではソフトバンクの育成選手だったが、支配下登録でのオファーがあり「かなり迷った」中で、移籍を決断した。こちらは左投げの「あし体」タイプだ。「3月に福岡でオープン戦がある。タマスタ筑後でも開催されるし、一軍の選手として福岡にやって来れるように頑張ります」と意気込みを語った。

 ソフトバンクの杉山と吉住晴斗については、別途書く機会を設けたいと思っている。

 また、今年の鴻江合宿には、途中、サッカー元日本代表監督の岡田武史氏(冒頭写真一番左)も鴻江理論を学びに来訪するなど、とにかく賑わった。

 今シーズン、この合宿で戦う方向性を見つけた彼らがまたブレイクしたら…。来年1月は今年以上の規模での自主トレになるのだろうか。

(※冒頭の写真 左から岡田武史氏、浜地、高田、杉山、投球している上野を挟んで清水、種市)

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。「Number web」でのコラム連載のほかデイリースポーツ新聞社特約記者も務める。2024年、46歳でホークス取材歴23年に。 また、毎年1月には数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。

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