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競争社会は善か悪か、世界各国の考え方の違いをさぐる(2017~2020年分)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 競争は善か悪か。実際にはケースバイケースではあるのだが。(写真:アフロ)

完全に平等な社会は理想郷だが、同時に地獄であるとも解釈できる。どのような成果を生み出してもそれが評価されることがなければ、やる気を見い出すすべが無くなってしまう。一方で過度な競争社会はさまざまな弊害を人々にもたらすとの意見も少なくない。欲望に駆られて悪の道に走ったり、機会を得られない人との間の格差が理不尽なまでに大きく開きかねないからだ。それでは競争社会に対する人々の思いは、国によって違いがあるのだろうか。今回は世界規模で国単位の価値観を定点観測している「World Values Survey(世界価値観調査)」(※)の結果から、競争社会に対する価値観の違いを見ていくことにする。

次に示すのは競争社会という概念に対し、働く気力を起こす有益な仕組みであるか、それともさまざまな罪悪を導く悪しき仕組みであるかを、10段階評価で答えてもらい、その平均値を国ごとに算出したもの。数字が大きいほど有害、小さいほど有益であるとの意見が強くなる。

↑ 競争社会は働く気力を起こす有益な仕組みか、それとも有害か(1(有益)~10(有害)の選択肢での平均値)(2017~2020年)
↑ 競争社会は働く気力を起こす有益な仕組みか、それとも有害か(1(有益)~10(有害)の選択肢での平均値)(2017~2020年)

中央となる値は5.50なので、それより低ければ競争社会を肯定、それより高ければ否定と判断することができる。今回の対象国ではイラク以外のすべての国が5.50を下回っており、競争社会はおおよそ肯定されていることになる。唯一イラクのみが競争社会を否定しているが、これは宗教観によるものか、それとも国家体制によるものか。

競争社会を肯定する国がほとんどではあるが、その度合いは国によってさまざま。あまり積極的でないのはタイやオランダ、韓国、トルコなど。おおよそ旧共産圏で値が高い≒競争社会を否定気味な雰囲気はあるものの、中国では逆に、むしろ非常に低い、つまり競争社会を肯定する側に位置している。

エジプトの際立った肯定感も目に留まる。詳細を確認すると実に41.3%が「1」、つまり「競争社会は絶対によい」と答えている。他の調査項目でも似たような動きを示しており、エジプトは特に個人主義、競争による利益の確保に対する飽くなき欲求が強い印象がある。

日本はといえば4.57といくぶん弱めな競争の肯定派。ほぼ同じ値を示す他の国を見比べると、同意感を覚える人も多いのではないだろうか。

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※World Values Survey(世界価値観調査)

世界100か国以上が参加して実施している国際的プロジェクト「世界価値観調査」によるもの。各国・地域毎に全国の18歳以上85歳以下の男女1000サンプル程度(実際には1000~2000人程度)の回収を基本とした個人対象の意識調査。調査そのものはおおよそ5年おきに実施されているが、調査期間によって一時的に対象外となる国も少なくない。また現時点では集計が完全には終わっておらず、値が掲載されていない国もある。直近の調査結果は2017年から2020年にかけて行われたものだが、記事執筆時点で項目によって調査結果が掲載されていない国が複数確認できる(最終的な報告書は2021年秋に発表予定)。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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