からくり看板の教訓:クラウドファンディングの前には意匠登録出願を検討してください
「”絶対に購入しないようお願いします” 未発売のからくり看板、写真を無断転載した偽広告が出回る 作者が注意喚起」というニュースがありました。ハンドルを回すと「open」「closed」の文字が入れ替わる“からくり看板”を、クラウドファンディングにより商品化して販売しようとしたところ、それに先立って粗悪な模倣品がAmazon等で出品されてしまい、制作者の方が注意を呼びかけているという話です。
この商品の元になったアイデア、ちょっと前に見ましたがなかなかクレバーな仕組みに感動した記憶があります。一方で、外観を見れば模倣は比較的容易そうなのでパクろうとする輩にとっては格好の獲物です。変な言い方ですが、パクられるということは商品として魅力的という証でもあります。
このような場合に保護してくれるのは知的財産権しかありません。このケースですと、意匠権による保護が最適と思います。日本の意匠制度には動的意匠という、形状の変化に特徴がある意匠を保護するための制度があります。動的意匠と部分意匠の合わせ技により、「open」⇔「closed」の切替の仕組み部分を意匠登録し、周囲部分のデザインによらない広範囲の意匠保護ができたのではないかと思います。日本で意匠登録できれば、仮に模倣品が海外で作られていた場合でも税関で差止めることができます。
ただし、意匠登録には新規性が必要です。創作者自体の行為により意匠が公表されてしまった場合は最初の公表から1年以内であればまだ登録可能なのですが、創作者の方のツイートによると、今回のケースは元の意匠の公表がかなり前なので難しいようです。
なお、意匠権はなくても、写真や動画の流用は著作権侵害なのでAmazonに報告すれば掲載を取り下げてはもらえるでしょう(写真と似ても似つかない粗悪品が届くという被害があるようなのでそれは防げます)。不正競争防止法2条1項3号(商品形態模倣行為)で権利行使できる可能性もあります。しかし、保護期間が3年であること、デッドコピー品でない類似品には権利行使できないなどの限界があります。やはり、強力なのは意匠権です。
この商品の創作者の方も以前に意匠登録出願は検討されていたが費用面で断念したとツイートされていたので、ここで責めるつもりはないのですが、今後、この種の「斬新なデザインだが一度見てしまえば摸倣は容易」な商品をクラウドファンディングに出品される方は是非意匠登録出願を検討してください。
先述のとおり、創作者が最初に公表してから1年以内に出願すれば登録可能なので、まずはクラウドファンディングに出品して、市場の反応が良好であることを確認してから出願することも可能です。どのような物品かにもよりますが、わざわざ意匠図面を作らなくても3D-CADの図面でそのまま出願することも可能です。