動画サービスは「有料で広告なし」と「無料で広告あり」のどちらを望まれているのか
インターネット関連技術の進歩発展や高速回線化で大いに普及したサービスの一つが、動画配信とその視聴サービス。動画共有サービスもあれば、用意されているライブラリを自由に視聴できるものもある。それらのサービス利用に関して、利用側はどのようなビジネスモデルで運用されるものを望んでいるのだろうか。今回は総務省が2016年8月に公式ウェブ上で公開した、2016年版の「情報通信白書」の調査結果項目(2016年2月に日本、アメリカ合衆国、イギリス、ドイツ、韓国、中国に対してインターネット経由にて20代から60代までを対象として行われたもので、有効回答数は各国1000件。男女比、10歳区切りの年齢階層比はほぼ均等割り当て。インターネット経由の調査であることの回答値のひずみを考慮した上で各値を読む必要がある。また各国の全体値に関しては年齢階層別の人口比率を元にウェイトバックが成されている)から、その実情を確認していく。
YouTubeやNetflixのような動画を提供するサービスは、大きく2つのビジネスモデルで運用されている。一つは「何らかの形で広告を表示して視聴者に広告を閲覧させ、その広告費で売上をあげる」、もう一つは「視聴、あるいは定額制として料金を徴収し、原則は広告無しで閲覧できる」。中には視聴料を取っておきながら広告を掲載する場合もあり、他方基本利用は無料だが何らかのアドバンテージを得るためには課金が必要となる手法もあるが、大よそはこの2タイプの様式となる。
それでは利用側としては、どちらの様式を望んでいるのだろうか。普段動画を視聴する・しないに関わらず、調査対象母集団全体に尋ねた結果が次のグラフ。青系統は「料金支払いで広告なし」、赤系統は「料金無料で広告あり」となる。
今回調査対象となったすべての国で、「広告があっても無料の方が良い」との意見が多数を占める形となった。特に韓国では強い広告有り・無料派が5割を超え、広告無し・有料派は1割強でしかない。有料に対する抵抗感は日本も強く、広告無し・有料派は2割近く。他国では欧米は広告無し・有料派が大よそ3割強ほど存在しているのと比較すると、無料への傾注感はアジア方面で強いように見える。
代表的事例として日米の年齢階層別を見ていくことにする。まずは日本。
60代で強い広告無し・有料派がやや増加するが、大よそ歳を経るほど広告無し・有料派が減り、広告有り・無料派が増えていく。20代から30代では3割近くが有料でも広告無しの方が良いと回答しているのは意外といえば意外。白書内では数字の動きの事実のみを伝えているが、若年層では多量の動画サービスを利用する中で、大量の広告に嫌気が指している人の割合も多くなっているのかもしれない。
アメリカ合衆国でも歳を重ねるに連れて広告無し・有料派が減っていく傾向に変わりは無い。
30代で20代よりも広告無し・有料派が増えるのはイレギュラーな感もあるが、ともあれ30代までは半数以上が有料でも広告なしで動画を視聴したい人。40代以降は大きく減少し、60代では2割を切る辺りは日本とさほど変わりない。
他方アメリカ合衆国の有料派が多いのは「従来普及していたケーブルテレビの代替として、より安価な動画配信サービスを契約する動きがあり」との言及が別項目で確認できることから、ケーブルテレビの代替として動画を認識する部分があり、最初から(相応のコンテンツならば)対価支払いでの視聴が当たり前との考えを持つ人も多分にいるものと考えられる。
歳が上になるに連れて広告無し・有料を望まず広告有り・無料を望むようになるのは、動画視聴そのものの頻度がさほど高く無いのも一因としてあるのだろう。頻繁に動画視聴をしていれば、広告に視聴をさえぎられることの不便さ、腹立たしさを覚える機会も増えるからである。
一方で今件は一般論として、具体例を挙げずに有料か無料かのみを尋ねている。個々の国のインターネット事情や物価、支払いのし易さなども勘案する必要があるが、どの程度の額面なら有料でも構わないかとたずねれば、また異なる結果が出るかもしれない。
■関連記事: