【川崎市中原区】「おばちゃん、ありがとう!」感謝と労いと愛でいっぱいの町中華「天下一」の最終営業日
2022年11月15日は、42年間の長きにわたり、地域住民のお腹と心を満たしてくれた町中華「天下一」の最終営業日です。朝から小雨が降っていました。今日は10時から、既に人が5人並んでいます。昼時には何人並ぶのだろう・・・。覚悟を決めて行きました。行列は店の2軒先の工事中の建物前まで。1巡目が店内に入った後で、私は29番目でした。
12時20分頃、試験期間中の法政ニ高の学生たちが、ぞろぞろと行列の横を通り過ぎていきました。学生たちにも天下一は愛されていたんだなぁ、としみじみ思ったのは、男女問わず、天下一の話をしていたからです。
「今日で天下一閉店だよね」「今から並んでみる?」「でもすごい行列」
「今日で天下一最後。」「え?知らなかった。俺、一度も行ったことなかったのに。」「えー?!お前、ゼロ天下?!」
おそろいの部活リュックを背負った男子学生たちは、天下一の前を通るとき、「天下一、ありがとう!」「ありがとう!」と口々に感謝をのべていました。
約1時間半並び、お店の前へ。店頭や軒先にはたくさんの感謝のお花が飾られていました。並んでいる間にも、お店に若い男性や年配の女性など、数人が出入りしていました。おばちゃんへの最後の挨拶だったり、何か気持ちの品をプレゼントしにやってきたようでした。
入店。店内にも感謝のお花が飾られていました。
水を運んでくれたのは、おばちゃんのお連れ合い、元M247のシェフです。ご自身の店じまいのあとは、奥さんの店を手伝っていたのですね。写真撮影を依頼したところ、「いいけど、俺よりもババアを撮ってやってくれ。有名なババアだから」と、厨房のおばちゃんに声をかけてくれました。積年の夫婦愛が感じられるシェフの物言いが、お客さんの笑顔を誘いました。
メニューはレバニラと迷いましたが、初志貫徹で焼肉チャーハンを注文。ベビーカーを押した若いお母さんが、子どもと一緒によく食べるメニューだと勧めてくれました。店内でもトリテリに続く人気メニューでした。
冷えた体に、しょうがが効いた鶏ガラしょうゆ味のわかめスープが沁みます。チャーハンに添えてあるサラダは野菜がしゃきしゃき。自家製ドレッシングもよいお味。チャーハンはパラパラで、卵となると入りのどこか懐かしい味わい。焼肉は濃い目の甘辛味で、肉が柔らか。チャーハンと一緒に食べるとおいしさ倍増でした。大満足です。最後に食べられて良かった!
お客さんの誘導やホールの仕事をしながら、時にはサラダの盛り付けなど厨房に入り、「足りない材料はない?持ってくるよ」「外のお客さんは9人待ち」など随時おばちゃんに声をかけていたシェフ。的確なサポートとおばちゃんとのコンビネーションが素晴らしかったです。
食べ終わった常連のお客様たちが、お会計のあと、おばちゃんに「ごちそうさまでした」に続いて「ありがとう」「長い間お疲れ様でした」「お元気で」「しばらくゆっくりしてね」など、1人ひとりが声をかけていました。おばちゃんは入店時にも常連さんには「いらっしゃいませ」以外に、「今日も来てくれたんだ、ありがとう」「あぁ、忙しいのに来てくれたんだ。ありがとね」など声をかけていましたが、お会計時には「今何しているの?〇〇さんは元気?」「ご家族にもよろしくね」など、顔を見て最後の挨拶をしていました。
会計後、お店に貼ってあった手紙に感動して来店したことをおばちゃんに伝えると、ちょっと謙遜した後「本当に、感謝感謝です。42年間、病気もせず、健康でお店をやってこられました」とガッツポーズをしてくれました。その姿に、私は元気をもらいました。
おばちゃんは、明るく元気で、母のような気づかいと愛情をもって、お客様に接してこられたことが、常連さんとのやり取りで垣間見えました。感謝と労いと愛情いっぱいの温かい雰囲気にお店が満ちていて、最終日に天下一に来られて、本当に良かった、と思いました。
42年間、お疲れ様でした。いつまでもお元気で。焼肉チャーハン、おいしかったです。ごちそうさまでした。