Yahoo!ニュース

なぜ?統計史上初、春に黄砂の観測なし 梅雨~夏の天候に影響も?

増田雅昭気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属
黄砂は、中国~モンゴルの砂漠地帯や黄土地帯で巻き上げられる。現在、積雪はない。

今年は、国内で黄砂が観測されていません。多い年だと5月までに40日ほど全国の気象台で観測されますが、今年は1月の2日間のみ。観測基準が統一された1967年以降、最も少なくなっています。

この例年と異なる大気の流れは、梅雨~夏の天候にも影響があるのでしょうか。

春に黄砂の観測がなかったのは初

今年の元日。韓国気象庁に対し、市民から不満の声があがりました。予報にはなかった黄砂が、初日の出がかすむほど飛んできたためです。その黄砂は海を渡り、日本でも長崎で観測されました。

珍しい正月からの黄砂飛来で、今年は黄砂が多くなるかと思いましたが、今年これまでの日本での観測は、元日と1月にあと一回あったのみ。ピークの3月・4月に黄砂がまったく観測されなかったのは、統計史上初めてのことです。

観測にカウントされない少量の飛来はあるでしょうが、今年は大規模な飛来がありません。

黄砂の飛来が少ない原因は?

黄砂の発生源である中国~モンゴルの砂漠地帯や黄土地帯に、雪が残っていたりすると、黄砂が巻き上げられないこともあります。ただ、中国の内陸やモンゴルでは今年も各地で黄砂が観測されている時がありますので、舞い上がってはいます。

観測を見るかぎり、そこから中国の沿岸や朝鮮半島、日本へ向かっての広がりが弱いようです。

黄砂を運ぶ上空の風の流れが、例年と違っています。

2014年元日の天気図。低気圧が、日本海北部から北海道へ発達しながら進んだ。
2014年元日の天気図。低気圧が、日本海北部から北海道へ発達しながら進んだ。

たとえば、今年の正月もそうでしたが、低気圧が日本海北部を発達しながら、北海道付近かその北に進むコースの時に、日本へ多くの黄砂が飛来することがあります。

ところが、今年は、この春の代表的なコースを通る低気圧が、ほとんど見られません。

梅雨~夏への影響は?

風の流れが例年と違うのは、気になるところです。大気に例年と違う“ゆがみ”があると、それは巡って、遠い場所、遠い時間にまで影響してきます。

今の段階では、具体的にどうなるか見えませんが、次の季節の梅雨~夏の天候に響いてくるのか、注意深く見ておく必要があります。

ちなみに、過去30年間で、春に黄砂の飛来が10日未満と少なかった年(2009年、2008年、1987年、1986年)は、梅雨明けが遅かったり、早く明けた地方も、相次ぐ豪雨や盛夏の日照不足など天候は不順でした。

黄砂の予測はなぜ過剰に出るのか?

気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属

TBSテレビ・ラジオ気象キャスター。大学在学中に気象予報士を取得し、民放キー局の報道番組に学生予報士として出演。気象キャスターに携わりながら、企業への予報やアドバイザーも長年担当し、甲子園での高校野球の大会本部気象担当を務めたこともある。災害から身を守る気象情報の使い方など講演も行うほか、Twitterで気象情報を毎日発信。著書に『TEN-DOKU クイズで読み解く天気図(ベレ出版)』がある。1977年滋賀県甲賀市生まれ。

増田雅昭の最近の記事