『就職氷河期』とは質感が違う、新型コロナショックによる『ネオ就職氷河期』で変えたい3つの意識
職場を解雇される人も急増していて、新型コロナウイルスが雇用情勢に深刻な影響を与えている。新卒採用市場ではリーマンショックや東日本大震災後に大混乱となった時を思い出す人事も多いはずだ。中には2000年前後の「就職氷河期」の再来という表現をするケースも多くなってきた。
ただ、「就職氷河期」と新型コロナウイルスの影響で変化する新卒採用を同じ土俵で語るのは違和感がある。以前の「就職氷河期」はバブル崩壊を起点として経済が壊れ、それまでのバブル大量採用が企業にとって大変な重荷にとなり、まだまだ終身雇用の文化があり中途採用も今のようなに活性化していなかった。そこで新卒採用を縮小して、派遣や契約社員という非正規雇用比率を引き上げて雇用体質を変えたことによって新卒採用の門が狭くなったのだ。
つまり新型コロナウイルスの影響で経済そのものに大きなインパクトがあり、しばらく先行きが不透明だからこそ会社の存続を軸に新卒採用を抑制するという背景から考えれば「就職氷河期」とは質感が違うのだ。
『ネオ就職氷河期』の到来
では新型コロナウイルスの影響による新卒採用市場の変化とは一体どのようなことなのか。新卒採用最前線のプロフェッショナルに話を聞いてみた。
「ここ数年からの傾向でもありますが、新型コロナウイルスの影響でさらに厳選採用にシフトすることは間違いないです」(人気企業ランキング常連であるIT企業の人事担当者)
「大学時代の華やかな経験ではなく、我々が欲しい能力と変化に適応できる柔軟性を評価する視点が変わっていくと思う」(通信業界最大手の採用責任者)
「優秀の定義が変わる瞬間だと思っている。学生時代に何をして来たのかではなく新時代に適応できるポテンシャルを持っているのか?周囲の目を気にせずに主体的に思考して動ける素地があるか。まさに欧米型の採用に感覚は近くなるのでは」(大手外資系コンサルティング会社の採用担当ディレクター)
他にも人事以外で経営層に話を聞いてみても同じように、新型コロナウイルスが新卒採用に与える影響は「採用基準」という話ばかりだ。つまり企業はバブル崩壊後の「就職氷河期」のように採用枠そのものを縮小するという変化ではなく、新時代において「どのような学生を採用すべきか」という採用基準の変化に注目している。
ディスコ社が6月に発表している「2021年卒採用活動の感触等に関する緊急企業調査」では、新型コロナウイルスの影響で採用数を「下方修正する」は17.6%で「当初の計画通り」が7割を占めている。また「次年度の採用枠は2021年並みの見込み」が最も多く5割を超えている。
つまり、採用をするしない、採用枠を縮小するか否かは新型コロナウイルスの影響がなくても毎年企業はその判断を慎重にしているので問題はそこではなく、企業が学生を見る視点が変わっているという事実であり、売り手市場から買い手市場にシフトして厳選採用になるということだ。即戦力は難しいとしてもこれまで以上に早くに独り立ちできる、可能な限り早く会社に貢献できる、これまでにない価値を社内外に提供できる人材を採用したいという変化とも言える。
故に、学生が心配をしている『就職氷河期』とは質感が異なり、採用枠は一定あるが厳選モードという意味で『ネオ就職氷河期』が到来したという見方になるだろう。
『ネオ就職氷河期』で学生が意識すべき3つのコト
3月から世の中が一変する中で学生の学ぶ環境はキャンパスから自宅へ変わり、学生生活も激変した。そして企業も同じように働き方など多岐にわたる変化を遂げている。その代表に新卒採用があり『厳選採用モード』へシフトしたのだ。そこで学生に求められる意識改革を3つに整理してみると
1、 はたらく未来に問いを立てる
自己分析型就活は完全に時代にミスマッチであり、先行き不透明なこれからを如何に自分なりに読み込むか。常に市場にある情報を組み立てて未来予測をしながら、今必要なコトは?求められる能力は?という意識に変えていく必要がある。
2、 キャリアを生き続けるためにできるコトを探求
残念ならが日本の文化でもあった「終身雇用」の時代は終わり、「安定」は組織から個人にシフトした。これからリストラや企業都合(買収、事業譲渡など)で職を失うことは珍しくなくなる中、リストラされない、他の組織からオファーされる程の能力または市場価値を保持することが「安定」に変わるのだ。キャリアが止まる時代だからこそ、キャリアを止めない、生き続ける為にどうすべきかを自問することが必要なのだ。
3、 正しい情報を幅広く集める
SNSやマーケティング技術の発達で「デジタルネイティブ」な学生達は、自分達が日々見ている情報は「自分が欲しい情報」に限られていることに気付いて欲しい。今必要な情報は、自分の興味だけではなく社会、ビジネス経済、政治、世界情勢などの一般常識だ。その情報を組み合わせることで未来志向が生まれ、ライフ・キャリアデザインにも影響する。故に、必要な情報を常に入手できるアンテナが必要なのだ。
『ネオ就職氷河期』だから変えたい就職活動
本来、就職活動は自分の意志で主体的に行動して、自分の働く未来に必要な環境として1社目を選択するのだが、どうしても就社つまり「どの企業に入るのか」という意識に変わってしまう。
日本の就職活動は独特で「自分らしく」という学生が集団行動をして、日々お互いの進捗確認をして安心したり焦ったりしている。そして心の中にある「安定、大手、ブランド」などの要素で自分の志向をコントロールしている。ある意味、それは日本の文化なのかもしれない。
その結果、3年離職率は変わらず入社後ギャップ76.6%という驚くべきデータがあるようにこれまでの就活では「ズレ」が生じるのだ。要因はシンプルで社会、企業が変化、そして進化しているのに就活だけが30年前から変われていないのだ。
今回の新型コロナウイルスの影響も加えるならば、これまでの日本の就活文化を一変できる機会として学生も企業も大学も捉えるべきなのではないか。
自己分析就活をしてもミスマッチが起こるのは当然で、時代の変化に伴い過去の自分は3年から5年後に急激に価値観や特性、性格も変わるため学生時代の自分とぶつかる。それが早期離職につながる。新時代では、自分なりに未来を予測して、そこで描く自分のライフ・キャリアデザインを軸に
「今必要な力は何か」
「その力が出に入る環境はどこか」
という流れで就活の方角を定めていくことがシンプルで分かりやすい。そしてミスマッチが軽減される。
『ネオ就職氷河期』は学生によっては本当に厳しい環境になるだろう。だた、誰も経験したことのない環境なのだから「正解はなく」自分の意志と一歩が正解になっていく。周囲に同調するのではなく、自分が得た情報で予測を立てて必要なアクションをして欲しい。
多くの社会人と接点を持ち、正しい情報をかき集めることから始めてみるのは如何でしょうか。
はたらくを楽しもう。
【参考】
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