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デルタ航空が成田空港からラストフライト。旧ノースウエスト航空からの一時代が終わる

鳥海高太朗航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師
デルタ航空、成田空港から定期便最後となったDL296便アトランタ行き(筆者撮影)

 2020年3月28日、この日をもってデルタ航空は成田空港からの発着便を全て終了し、3月29日からは全便が羽田空港発着便に変更される。日本においては、デルタ航空よりも合併前の旧ノースウエスト航空のイメージが大きいだろう。旧ノースウエスト航空は、1947年に羽田からミネアポリスへ就航し、1978年の成田空港開港と共に成田空港から運航を開始した。統合前のデルタ航空も1987年3月から成田~ポートランド~アトランタ線で日本に就航している。

 2008年にデルタ航空と旧ノースウエスト航空が合併に合意し、ノースウエスト航空便のデルタ航空便への移管が進み、2010年1月にノースウエスト航空としての最後の運航を終え、その後はデルタ航空便として運航を続けたが、約42年の成田空港での運航を終えることになった。最終日の成田空港での様子をレポートする。

旧ノースウエスト航空時代の成田に大量の機体が駐機

 旧ノースウエスト航空時代と新生デルタ航空において、アメリカ路線では成田からはロサンゼルス、サンフランシスコ、シアトル、ポートランド、ニューヨーク、デトロイト、ミネアポリス、ラスベガス、アトランタ、ホノルルなどに加えて、アジア路線でもバンコク、シンガポール、マニラ、北京、上海、広州、香港、台北、高雄、ソウル、釜山など、更にグアム、サイパン、パラオなどのミクロネシアへも就航していた。

 1980年代から2000年代までの約30年間は、成田空港にジャンボ機(ボーイング747型機)を中心に多くのノースウエスト航空機が駐機していた時代が懐かしい。

旧ノースウエスト航空機(2007年、成田空港にて筆者撮影)
旧ノースウエスト航空機(2007年、成田空港にて筆者撮影)
2007年当時のチェックイン場所を示す案内版(成田空港第1ターミナル北ウイングにて筆者撮影)
2007年当時のチェックイン場所を示す案内版(成田空港第1ターミナル北ウイングにて筆者撮影)

デルタ航空は日本~アメリカ間のビジネス需要取り込みへ

 2000年代前半までの成田空港においては、ANA(全日本空輸)の路線・便数が少なかったこともあり、JAL(日本航空)、ユナイテッド航空、そして旧ノースウエスト航空の3社が圧倒的なシェアを誇り、チェックインカウンターのスペースも広かったと記憶している。

 2000年代前半以降は、ANAのネットワークが拡大したほか、ANAはユナイテッド航空、JALはアメリカン航空と提携強化し、現在では共同事業(ジョイントベンチャー)を展開することで、日本~アメリカ間だけでなく、アメリカ~日本~アジアという3国間流動の取り込みを目指す戦略にシフトし、ANA・JAL共に日本に入国しない乗り継ぎのみの需要が大きく増えた。

 旧ノースウエスト航空を合併した新生デルタ航空は長年、ユナイテッド航空同様に自社ネットワークだけで3国間流動を取り込んできたが、ユナイテッド航空はANAとの共同事業開始によって、日本~アジア路線をANAのネットワークを活用することで自社便のアジア域内路線の運航をANAに任せたほか、アメリカン航空は、成田発着のアジア域内路線はなかったが、JALとの共同事業によって3国間流動の取り込みに新たに成功したなかで、日本国内に提携航空会社がないデルタ航空は、日本とアメリカ間のビジネス需要を取り込む戦略にシフトしたことで、成田発着のアジア路線から撤退し、更に羽田空港の発着枠が確保できたことから3月29日から羽田からの運航に全便切り替えた。

デルタ航空、成田空港発最終日のチェックインカウンター(第1ターミナル南ウイングにて3月28日筆者撮影。以下全て3月28日筆者撮影)
デルタ航空、成田空港発最終日のチェックインカウンター(第1ターミナル南ウイングにて3月28日筆者撮影。以下全て3月28日筆者撮影)

最終日はアトランタとシアトルの2便のみ

 本来であれば、デルタ航空最終日の成田空港からは、デトロイト、シアトル、ポートランド、アトランタ、ホノルル、マニラの6路線が運航される計画となっていたが、新型コロナウイルスの影響による多くの欠航便により、シアトル、アトランタへ2便のみの運航となった。

 まず到着便では、14時33分にアトランタからのDL295便、そして、アメリカからの最後の便となったシアトルからのDL167便が成田空港に14時46分に到着した。

アトランタから到着したDL295便(エアバスA350型機)
アトランタから到着したDL295便(エアバスA350型機)
アメリカから成田への最後の到着便となったシアトルからのDL167便(エアバスA330型機)
アメリカから成田への最後の到着便となったシアトルからのDL167便(エアバスA330型機)
手前がアトランタから到着したDL295便、奥がシアトルから到着したDL167便。最終日はこの2路線のみとなった
手前がアトランタから到着したDL295便、奥がシアトルから到着したDL167便。最終日はこの2路線のみとなった

 そして、いよいよデルタ航空の成田空港からの定期便最終便出発となり、まず17時過ぎにシアトルからのDL166便(エアバスA330型機)が出発したのち、最後にデルタ航空296便アトランタ行き(定刻17時50分発)が25番ゲートからの出発となった(エアバスA350型機)。

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成田空港の出発案内版。デルタ航空の出発便案内も最後となった
成田空港の出発案内版。デルタ航空の出発便案内も最後となった
まず17時過ぎにDL166便シアトル行きが成田空港を離陸
まず17時過ぎにDL166便シアトル行きが成田空港を離陸
DL296便アトランタ行きの出発直前にはスタッフが機体をバックに記念撮影している姿が見られた
DL296便アトランタ行きの出発直前にはスタッフが機体をバックに記念撮影している姿が見られた

 このような社会状況であることから、セレモニーなどのイベントは開催されず、静かなラストフライトとなったが、成田空港でデルタ航空に携わるスタッフがランプ(地上)に降り、最後の成田空港からの出発を見送った。今回、成田空港第1ターミナルの展望デッキから見える場所(25番ゲート)に駐機していたこともあり、空港を訪れていた航空ファンと共にアトランタへ向けて出発するデルタ航空便を見送り、17時52分頃にA滑走路から離陸した。

プッシュバックするDL296便アトランタ行き。多くのデルタ航空の運航に携わるスタッフが見送った
プッシュバックするDL296便アトランタ行き。多くのデルタ航空の運航に携わるスタッフが見送った
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アトランタへ向けて成田空港を離陸
アトランタへ向けて成田空港を離陸

コロナウイルスの影響で羽田移管も多くの便が一時運休

 3月29日からは、羽田空港から従来から運航しているロサンゼルス、ミネアポリス線に加えて、成田空港から移管するデトロイト、アトランタ、シアトル、ポートランド、ホノルルの7路線を運航する計画となっていたが、新型コロナウイルスによる影響により、ポートランド線が5月31日まで運休、ホノルル線がゴールデンウィーク前まで運休、ロサンゼルスとミネアポリス線が4月1日~30日まで運休する。

 シアトル線は毎日運航を継続し、デトロイト線は週6往復に減便、アトランタ線は週5往復に減便する(3月27日現在)。ただし、アメリカからの入国制限がより強化されることから、今後変更される可能性も十分に考えられる。

航空・旅行アナリスト 帝京大学非常勤講師

航空会社のマーケティング戦略を主研究に、LCC(格安航空会社)のビジネスモデルの研究や各航空会社の最新動向の取材を続け、経済誌やトレンド雑誌などでの執筆に加え、テレビ・ラジオなどでニュース解説を行う。2016年12月に飛行機ニュースサイト「ひこ旅」を立ち上げた。近著「コロナ後のエアライン」を2021年4月12日に発売。その他に「天草エアラインの奇跡」(集英社)、「エアラインの攻防」(宝島社)などの著書がある。

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