「プレミア12をMLBは無視」は将来のWBC廃止の伏線?
MLBは、この11月に日本と台湾で開催されるプレミア12に、メジャーリーガーを派遣しないことに決めたようだ。半月くらい前から噂にはあがっていたので驚きはないが、やはり残念だ。
ここで、誤解しないように気を付けねばならないのは、「アメリカのメンバーにメジャーリーガーは含まれない」のではなく、「MLBはメジャーリーガーの参加を認めない」ということだ。したがって、前回(2013年)のWBCで優勝したドミニカや準優勝で旋風を巻き起こしたプエルトリコも骨抜きの構成になってしまうだろう。もちろん、日本にも影響はある。イチローや青木宣親、田中将大、岩隈久志らも出場できない。彼ら抜きの侍ジャパンで、対戦相手も最高でもマイナーリーガーとなれば、プレミア12のイベントとしての商品力もガタ落ちだ。
WBCで、アメリカチームがスーパースター級抜きの構成で、戦いぶりにも真剣度が欠けていたことは、個人的にはそれほど気にかけていなかった。ある意味では1ケ国のパフォーマンスの問題でしかないからだ。その一方で、前述のドミニカやプエルトリコの威信を掛けた取り組みや、日本での盛り上がりを見るにつけ、WBCはそれなりに定着しつつある印象を受けていた。しかし、今回の「メジャーリーガーは参加させない」という決定は、アメリカという枠を越えた影響がある。
「しょせんプレミア12だからでしょ。WBCでは参加させるでしょ」という見方もある。確かに、プレミア12の主催はWBSC(IBAF)で、WBCはMLB機構と選手組合が共同出資したWBCIという運営会社の主催だ。しかし、野球とソフトボールの両方を管轄するWBSCの野球部門たるIBAFは、五輪種目から外されIOCからの補助金がなくなり窮地に陥った際に、MLBから救済を受けた団体だ。いわばMLBによる傀儡政権なのだ。その団体の根幹をなすイベントを、MLBがこうもあっさり見はなすのはやや意外だ。
プレミア12も、WBCを頂点とするMLBの息が掛かった世界野球大会のヒエアルキーを構成する大事なコンテンツだ。そして、それは前コミッショナーのバド・シーリグの肝いりだった。
昨年暮れに就任した現コミッショナーのロブ・マンフレッドは基本的にシーリグの右腕だった人物だが、前任の戦略をそのまま引き継がねばならない道理はない。WBCの廃止などということが検討されていなければ良いがと心配になる。万が一にでもそういうことになれば、WBCの存在を前提に成り立っている侍ジャパンビジネスも大きな方向転換を迫られるだろう。また、「MLBはプレミア12にメジャーリーガーの出場を認めず」というニュースがアメリカでは全くといって良い程報道されていないのも残念だ。
しかし、オリンピックへのメジャーリーガーの覇権を要望するIOCと袂を分かち、WBCという独自の大会を発足させたMLBが、そのWBC系のイベントを葬り去ろうとしているとは。MLBは、どこに行こうとしているのだろうか。