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ウクライナ空軍、キーウ上空で気球6個の大部分を撃墜:ロシア軍による電波妨害と偵察ドローンの在庫不足か

佐藤仁学術研究員・著述家
(写真:ロイター/アフロ)

最近ではもっぱらアメリカと中国との間での気球による偵察と破壊が大きく報じられている。そんななかウクライナの首都キーウ上空で2023年2月15日に6個のロシア軍の気球が目撃され、ウクライナ空軍は大部分を撃墜したと発表した。

ウクライナ空軍スポークスマンのユーリ・イーナット氏は「これらの気球はレーダー反射器といくつかの偵察部品を搭載していたと思われます。我々空軍が探知して迎撃しました」とコメントしていた。これらの気球では偵察だけでなく、レーダー反射器でウクライナ軍の防空レーダーの電波妨害も行っていたとみられる。

「偵察ドローンの在庫維持のために気球を使用か」

ウクライナ軍はテレグラムで「これらの気球はウクライナの防空網を探知して攪乱させることが目的だった可能性があります」と投稿していた。また「ロシア軍は監視・偵察ドローンが少なくなってきたので、監視・偵察ドローンの在庫を維持するために、新たな偵察ツールとして気球を使用している可能性があります」とユーリ・イーナット氏は語っていた。

ロシア軍では監視・偵察ドローンとしてロシア製の「Orlan-10」を主に使用している。また小型の民生品ドローンも多く使用している。だがウクライナ軍によって「Orlan-10」は頻繁に機能停止させられたり、破壊されたりしている。

ウクライナ兵やウクライナ軍は破壊した「Orlan-10」の写真や動画をSNSでよく公開している。そのような写真や動画を見かけなくなると、欧米の戦争に関するシンクタンクや研究所は「Orlan-10」が枯渇したのではないかという見方を示している。だが、現在でも「Orlan-10」はウクライナ上空を飛来しており、よく破壊されている。それでもウクライナ軍では欧米からの地対空ミサイルの支援を受けて、徹底的にロシア軍の監視・偵察ドローンを破壊している。そのためいずれ生産が追い付かなくなり、ロシア軍の監視・偵察ドローンの在庫が枯渇するのは時間の問題と思われる。

気球であれば偵察することを目的に飛来させるだけでなくレーダー反射器を搭載してウクライナ軍の防空網も混乱させることができる。

ウクライナ上空はロシア軍の監視・偵察ドローンや攻撃ドローンが多く飛来している。戦場では空を飛んでいるものは全てのものが怪しいと思い、探知したらすぐに機能停止させるか、破壊した方がよい。

▼ロシア軍の気球と見られる物体

▼ウクライナ空軍スポークスマンのユーリ・イーナット氏

▼ウクライナ上空での気球と見られる正体不明の物体

学術研究員・著述家

グローバルガバナンスにおけるデジタルやメディアの果たす役割に関して研究。科学技術の発展とメディアの多様化によって世界は大きく進化してきました。それらが国際秩序をどう変化させたのか、また人間の行動と文化現象はどのように変容してきたのかを解明していきたいです。国際政治学(科学技術と戦争/平和・国家と人間の安全保障)歴史情報学(ホロコーストの記憶と表象のデジタル化)。修士(国際政治学)修士(社会デザイン学)。近著「情報通信アウトルック:ICTの浸透が変える未来」(NTT出版・共著)「情報通信アウトルック:ビッグデータが社会を変える」(同)「徹底研究!GAFA」(洋泉社・共著)など多数。

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