優里『レオ』MVに『ヤングジャンプ』表紙。破格のデビューを飾った新人女優・片岡凜の友だちがいない理由
『ドライフラワー』の優里の1stアルバム収録曲『レオ』のMVが話題を呼んでいる。愛犬と過ごした日々を演じているのは、これがデビューだった新人女優の片岡凜。さらに発売中の『週刊ヤングジャンプ』では、初グラビアにして表紙&巻頭を飾っている。群馬のいち高校生として始めたTikTokからスカウトされたという彼女に話を聞いた。
本当は犬が苦手で触る練習をしました(笑)
犬の目線で、自分に名前を付けてくれた飼い主の少女への想いを歌った『レオ』。YouTubeで公開されたMVには「感動した」「何回も号泣」といったコメントが相次いでいる。
優里の歌と楽曲の力はもちろんだが、愛犬を亡くすまでの日々を演じた片岡凜に対しても「めちゃ可愛いすぎる」「MVで泣けるのは役者さんの演技あってのこと」といった称賛があった。ネットでも「片岡凜って」と話題にするサイトが相次いだ。
片岡にとっては初の演技。犬と散歩したり、部屋で戯れたり、一緒に寝たりと様々なシーンがあるが、「私、実は犬がすごく苦手で(笑)」という。
「近所の犬に追い掛け回されたことがあって、怖くて触れなかったんです。だから、撮影の数週間前から練習しました。マネージャーさんの飼っている大きな犬を触って慣れたり、ドッグランに行ったり。撮影当日も最初は怖かったんですけど、役の女の子にとっては家族のような犬なので。私も大切な家族だと思って、怖さは捨てて頑張りました」
危篤になった愛犬の元に駆けつけて号泣するシーンでは、「自然に涙が出ました」とも。初めて演技をして泣くのは、ハードルが高いようにも思うが……。
「私は普段は泣かないタイプです。でも、『こういうことが起きたらイヤだ』と想像したら、スッと感情が乗りやすいところがあって。あの場面も『もし大好きな人が……』と考えたら、涙がワーッと止まらなくなりました」
周囲に流されないことを意識してきました
群馬出身で高校を卒業したばかりの片岡凜。たたずんでいるだけの姿にもハッとさせられる美少女感。落ち着いて明瞭な話しぶりには聡明さを感じさせる。昨年12月に事務所に入るまでは普通の女子高生だったが、話を聞くと独特な感性ものぞく。
「中3で公立の学校からインターナショナルスクールに入りました。いとこがロサンゼルスに住んでいて、私も小さい頃から英語を勉強したかったんです。学校では部活には入らないで、基本ずっと勉強していました。成績は良くないんですけど(笑)、英語以外も最低限の点数は獲れるように頑張っていました」
そして、「友だちはいません」と話す。と言っても、シャイなわけでも孤立しているわけでもないらしい。
「周囲に流されないようにしようと、ずっと意識してきました。無理に周りに合わせることが好きでなくて、輪に入ろうとも思いません。いつも教室の隅で本を読んだり、外を眺めていました。寂しいとも感じないし、今は1人でいいと思っています。でも、人に対する思いやりは忘れないようにしています」
誰かの心に何かを届けたいと思って
芸能界には小さい頃から憧れがあった。
「父がいろいろな作品を観る人で、一緒に観ているうちに何かを表現することに魅力を感じるようになりました。言葉は発しなくても、一瞬の目線や息づかいで感動を伝えられるのが素敵だなと。私もそういうふうに、誰かの心に何かを届けたいと思っていたんです」
影響を受けた作品として挙げたのが、アメリカのテレビドラマシリーズ『ブレイキング・バッド』。高校の化学教師ががんを患う自身の医療費と家族の生活のために、裏社会で悪に染まっていくストーリーだ。
「主演の方(ブライアン・クランストン)の演技が生々しくて、ドラマというより、その人の人生を見ている気持ちになりました。麻薬を売り捌いて最後に家族に大きな迷惑を掛けてしまい、奥さんと縁を切るシーンがあって。泣きたい気持ちをグッとこらえて、言葉を発している姿がすごく胸に来ました。こんな演技ができることにも、感動がありました」
TikTokのフォロワー数は24万人
昨年4月から、女優への足掛かりに「自分という人間が存在していることを、いろいろな方に知ってもらいたくて」と、TikTokを始めた。学校帰りに制服で、地元ののどかな光景をバックに撮った動画を上げている。
「学校の近くに駅があって、その周りが田んぼで、夕日がすごくきれいに見えて。そこはお気に入りの場所です。電車も好きで、よく映し込んでいます」
動画自体は奇をてらわず、「テスト終わった」とクレープを手にしていたりと、さり気ない日常を切り取ったものだが、何せこの並外れた美少女ぶり。当初からフォロワー数はグングン伸びて、現在は24万人を超える。
そして、20社ほどの芸能プロダクションからスカウトの声も掛かった。その中で、広末涼子、戸田恵梨香、有村架純らが所属するフラームに入ることに。
「こんな私にいろいろな方が声を掛けてくださって、とても嬉しかったです。これで女優として、やりたかったことができるかなという気持ちもあります。芸能事務所にはあまり詳しくなくて、フラームのこともインスタに『頑張りたいことがあればサポートする存在になりたい』とDMをいただくまで、知りませんでした。調べたら有名な方がたくさんいらっしゃいましたけど、少数精鋭というか、1人1人を大切にされている印象を受けました」
台詞を読んでたら涙がブワーッと
そして、面接に出向いた片岡は、広末らを育てた事務所社長とDMで声を掛けた現マネージャーを初対面から驚かせた。
フラームは女優の育成とマネージメントを手掛ける事務所。面接で片岡は、ある脚本の1ページの台詞を渡され、試しに読んでみた。不遇な環境に置かれた女性が強い決意を独白する場面で、片岡はその場で初めて見た台詞を、泣きながら言ったという。
「読んでいる途中で心がだんだん震えてきて、涙がブワーッと出てきました」
何気なく言うが、演技経験がなく隣りに父親もいた状況で、練習してきたわけでもない台詞に即座に感情移入できるのは、天性の女優資質を持っているからだろう。デビュー作の『レオ』のMV撮影で自然に泣けたのもうなずける。
現場では、その号泣シーンはアングルを変えて何テイクか撮られたが、片岡は毎回涙を流した。酒井麻衣監督は新人離れした集中力を絶賛したそうだ。
「MVの撮影はストーリーの順番通りでなく、犬が死んでしまったシーンのあとに結婚式だったりしたので、気持ちを引きずらないように切り替えました。『ここはこうしよう』と、やることを一瞬ごとに明確に意識していました」
ずっと鏡を見て表情の練習をしました
発売中の『週刊ヤングジャンプ』では表紙&巻頭に抜擢されている。コスプレイヤー系などの水着グラビアやアイドルグループのメンバーが表紙となることがほとんどの昨今、女優系の新人の起用は異例。「YJ美少女の系譜 正当継承者」と謳われた。
「とても驚きました。コンビニなどで絶対目につく雑誌の表紙に、自分が載せていただけるなんて。YouTubeでいろいろなグラビアの方の撮影風景を拝見して、表情の作り方を勉強しました」
自身の撮影に、どんなことを参考にしたのだろう?
「馬場ふみかさんが素敵だなと思いました。切ない表情や明るい表情と、一瞬でコロコロ変えてらっしゃる雰囲気が印象的で。私も表情でいろいろ表現できるようになりたくて、家でずっと鏡を見て、自撮りもして研究しました」
初の本格的なグラビアに緊張や戸惑いは?
「あまりなかったです。最初に体育館でジャージで撮ったときは緊張していましたけど、カメラマンさんのお声掛けで解していただいて。海の撮影でも、寒さが吹き飛ぶくらい楽しませてもらえました」
1日も早く有名になりたいです
最近、高校卒業を機に群馬から上京。ひとり暮らしを始めている。
「東京はやっぱり群馬とはだいぶ違いますね。私の地元は田舎で、人もこれほど多くなくて、新宿のデパートのフードコーナーでは『こんな高い食べ物、見たことない!』と思ったり(笑)。父が好きなので、離れていると寂しいです。実家を出るときは、父にはトイレに入ったまま『じゃあな』と言われましたけど(笑)」
実家から持ってきた大事なものもある。
「生まれたときからずっと持っている、小さな掛け布団です(笑)。今は肩から掛けたら、お腹くらいまでしか行きませんけど、小さい頃はそれを引きずっていたらしくて、思い出があって。私にとっては宝物なんです」
そして、日ごろから女優としての意識も持つようになった。
「作品を観るときも『もし自分がこれを演じるなら』と考えます。日記も付けるようになって、日常のささいな感情も意識するようになりました。たとえば『今日は天気がいいな』と思ったときに自分はどんな顔をしているのか、客観的に目を向けています」
先輩の出演作からも学んでいる。
「有村さんが主演された『前科者』のドラマを拝見して、役に対する愛を強く感じました。どのシーンでも、演じているというより役として生きている印象がすごく強くて。私もそういう演技力を付けたいのと、声をもっときれいに出せるように勉強したいです」
高校卒業からのデビューは芸能界では早くはない。
「だから、1日も早く有名になりたいです。もうこの世界で進んでいくしかないので。映画に出させていただきたい気持ちは強くて、目立つ役で多くの方の目に留まれたら。語学もより勉強して、海外でも活躍できる女優になりたいと思っています」
野心が強いようにも感じるが「それはあります」と笑顔ながらキッパリ言った。
Profile
片岡凜(かたおか・りん)
2003年10月6日生まれ、群馬県出身
優里の1stアルバム『壱』収録の『レオ』のMVに出演。